はじめまして。
こちらの作品はヨルシカさんの『花に亡霊』という楽曲の歌詞を元に書かせて頂きました。
他にも乙女ゲーム(例えばヒプノシスマイクやあんさんぶるスターズ)などのカップリングのお話も書いたりしております。
もし、読んでみたい!書いて欲しいカップリングがある!という方がいらっしゃいましたらお声掛け頂ければ書かせて頂きます。
もちろんオリジナル作品も書いておりますので、このブログを使わせて頂き、何本か公開させて頂こうと思っておりますので、是非読んでみて下さい。
よろしくお願い致します!
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貴方はとても夏が大好きな人でした。
夏の匂いがするーーーーーーーーーー
毎年夏が来ると言っていた。
実際、私には”夏の匂い”なんて分からなかった。
でも今なら分かる気がする。
貴方が大好きだった夏の匂いをーーーーーーー
「ママー!!!!アイス食べたーい!!!」
『はいはい。じゃあいつもみたいに縁側に座って食べようね!』
「はーい!!」
『はい!1日1個ね!』
「えー!!もっと食べるー!!」
『お腹壊したら元も子もないでしょ?』
「うーん・・・わかった!!!我慢する!!!」
『偉い!それでこそ私の娘だ!』
「ねぇママー??パパはいつ帰ってくるのー??パパも一緒にアイス食べるー!!!」
『・・・パパとはもう食べれないんだよ?この前も言ったよ?』
「えー!!なんでぇ!!」
『いなくなっちゃったって言ったよね?もう会えないって言ったでしょ?』
「会いたいー!!!」
『・・・会えるなら私も会いたいよ。・・・じゃあパパの話してあげようか』
「うん!!!聞きたい!!!」
『私とパパが出会ったのは・・・』
『今日もあっついなぁ・・・』
私はこの時高校生で、夏休みだったので家の近くにある駄菓子屋でアイスを買って食べながら1人でダラダラしていた。
『落ち着く〜・・・・』
と独り言を言っていたら・・・
「夏って暑いけどいいよね。こうやってアイス食べながらダラーってしてる時最高だよね」
と突然自分よりも年上の男性が話しかけてきた。
『え・・?!あぁ!!!いや・・・これは・・・』
独り言を言いながらダラーっとしていた自分が恥ずかしくなった。
「はは。俺もごめんね、勝手に話しかけて。君が幸せそうにダラーっとしてるもんだから」
褒められてるのか?貶されてるのか?
『・・・すみません・・・』
「いえ全然!あ、変な人じゃないよ別に!俺は眞部風斗(まなべ ふうと)って言うんだ。君は高校生?くらいかな?俺は20歳の大学生。一応な」
『・・一応なんですね?あ、私は波切美結(なきり みゆ)って言います。17歳の高校生で今は夏休みです』
「そっかあ。夏休みか・・・・・・・夏って夏独特な匂いがするよな」
『?匂いですか?』
「うん。暑いしジメッとしてるけどどこか爽やかなカラッとした匂いみたいなさ」
『う〜ん・・・私には分からないかもです』
「まぁそうだよな。美結はまだ高校生だもんな!」
『風斗さんだってまだ20歳です!!』
「はは。確かにな!あ、じゃあ俺そろそろ行くわ!またね」
そう言って風斗さんは帰って行った。
私はなんとなく。
なんとなく風斗さんが気になって来るか来ないかも分からないけど毎日駄菓子屋へ行った。
だけどあれから1週間経っても会えなかった。
『おばぁ〜ちゃん??1週間くらい前に来てた男の人最近見た〜?』
私は駄菓子屋のおばあちゃんに少し聞いてみた。
「あ〜風斗くんかい?小さい頃からずーっと来てくれてた子でねぇ。でも昔から体が弱い子だったみたいで・・・今は病院生活をしているそうだよ?」
『え・・・ここら辺の人なの?』
「ああ、多分ね?風斗くんもいつもあんたみたいにアイス食べてボーッとしてたよ」
『・・・・どこの病院か分かる?』
「えーっと・・・池田病院だったかな・・・?」
『ありがとう!!!』
私は急いで病院に向かった。
『すみません。眞部風斗さんの病室はどちらでしょうか?』
「申し訳ございませんが、眞部さんとのご関係は?」
『あ!えーっと・・・・』
「・・・あれ?美結ちゃん・・・・だっけ・・?」
『!?あ!風斗さん!』
「ああ、看護師さんすみません。この子俺の知り合いなので通しても大丈夫ですよ」
「そうでしたか!でしたらそのままどうぞ」
『すみません。ありがとうございます!』
私は風斗さんと病室へ向かった。
「てかなんでこんなところにいるの?ご家族が入院してるの?」
『いえ。風斗さんに会いに・・・』
「俺に?」
『はい。・・・待ってたのに全然来ないから・・・』
「あー・・・ごめんね?あの駄菓子屋で毎日俺のこと待っててくれたの?可愛いな美結ちゃんは」
『・・・からかわないでください。駄菓子屋のおばあちゃんに聞いたら”生まれつき体が弱い”って・・・入院したって・・・聞いたから・・・』
「・・・そんな心配しなくても大丈夫だよ。大丈夫」
風斗さんは自分に暗示をかけているようにも見えた。
そんな風斗さんを見て私は何も言えなかった。
「ここ!俺の第二の家〜」
『縁起でもないことを言うもんじゃないですよ・・・病室ってちゃんと言ってください』
「はいはい〜俺怒られてばっかだな・・・」
風斗さんはブツブツ言いながらベットに戻った。
私はその隣に置いてあった椅子に腰掛けた。
風斗さんの病室は個室で風通りのいい部屋だった。
「俺さ〜この部屋すごく好きで。風がすごく気持ちいいんだよ・・・」
『・・・分かります』
「夏の風ってさ・・・外で感じるよりも部屋の中で感じた方が気持ちいんだよな・・・木の葉の音とかが綺麗に聞こえてさ・・・騒音がないから気持ちも穏やかな状態で感じられる」
『・・・風斗さんは何歳からここに入院してるんですか・・?』
「う〜ん・・・14歳くらいからかな〜?」
『・・・・なんの病気なんですか・・・?治るんですよね・・・?』
「・・・・どうだろう。いつ死んでもおかしくない病気だって言われてるからさ。だからいつ死んでもいいように悔いないように・・・生きさせてもらってるんだ。本当は病院から出るなって言われてるんだけどね」
『え・・・じゃあこの前駄菓子屋で会ったのは・・・?』
「たまたま俺もよく行ってた駄菓子屋行こうと思って。最近行ってなかったし・・・散歩がてらボーッとしに行こうと思ったんだよ。そしたら君がいてさ。俺と同じことしてんだもん。アイス食べながらダラーっと・・・。それがなんか嬉しくてさ。俺と同じことする子いるんだって。だからちょっと話しかけちゃった」
『ああ・・・そういうことだったんですね・・・』
「久々に病院から出て懐かしのお店に行ったら自分と同じことやってる子見たら面白いでしょ!・・・今日出てきてよかったなって思ったよ。まぁもう会えないと思ってたけど」
『・・・無責任です。私の1週間返してくださいよ』
「いやごめんって。だってそんな俺に会いたがってるとか思う素振りなかったじゃん!」
『・・・・なんか気になっちゃったんです・・・風斗さんが・・・・』
「・・・・・俺・・今・・・告られてる・・・?」
『・・・分かりません・・・』
「・・・・・こんな俺でいいなら付き合う?」
『・・・え??』
「少し話しただけで1週間後俺を忘れることなく会いに来てくれる女の子いたらそりゃあ惚れるわ」
『・・・ちょっ・・!!それを言われると・・・っ』
「どーすんの?付き合うの?付き合わないの?」
『・・・・・付き合う』
「うん!じゃあこれからもよろしくな!美結」
『・・・うん!毎日看病来る!』
「まぁ美結が夏休みってことならどっか遊びに行くか」
『え・・・でも風斗さんが・・・』
「俺はまだ大丈夫。今できた彼女を置いて即いなくなるようなことはしないよ」
『・・・・信じてる』
「ああ。信じてろ」
と私たちが付き合い始めてから5年が経った。
私が22歳になり、風斗が25歳に。
「なぁ美結。この5年間俺の体調が悪くなって迷惑かけたこともあったし、俺は長い未来は約束出来ないけど・・・結婚・・・してくれないか・・・?こんな俺だ・・・っ」
『何言ってんの??いつも言うよね”こんな俺でもよかったら”って。いいから一緒にいるし風斗を支えてる。これからもできるだけ長い時間、風斗を支える。支えたい。だからその言葉ずっと待ってたよ。喜んで結婚する!』
「美結・・・・っありがとう・・・」
そして私たちは出会って5年経った夏の季節に結婚をして、子供も生まれた。
風斗は相変わらず病院生活を送っている。
子供は実家で親に手伝ってもらいながら育てている。
月日はそれから3年が経った。
風斗は日に日に痩せていった。
ご飯もろくに食べれない状態にまでなっていた。
そんな風斗の元気の源はやはり”風夏(ふうか)”だった。
「パパぁ〜!!」
「お〜風夏〜今日も元気だなぁ〜」
「パパ〜」
『風斗のこと大好きなんだよね風夏』
「さすが俺の娘だ〜」
『大丈夫・・・?あんま喋らない方が・・・・』
「いや・・・いいんだ・・今喋っとかないと・・・・」
『・・・・そう』
「パパ〜パパ〜」
「風夏〜?パパはな〜夏が好きなんだ。この部屋に入ってくる涼しい優しい風。木々が風に揺れる音。そして・・・夏独特の匂い。夏は暑くて大変だけど夏の匂いを感じて生きて欲しいんだ。ひまわりとか咲いてたら最高かもな。俺は全然外に出ることができなかった。からこそ季節の匂いが感じられたのかもしれないな。多分風夏は美結に似てるから体力的には問題なく外で遊べると思う。だから元気に育ってくれ。それだけだ」
「うん!!」
「よし!!多分分かってないだろうけど・・・・」
『・・・そういうこと言うのやめてって言ってるじゃん』
「・・え・・・あ・・・いや・・・ごめん美結!泣かせるつもりは・・・っ」
『ねぇ・・・私には遺言にしか聞こえないの・・・そういうの・・・やめて・・・死ぬかもしれないって言われながら8年も生きてんじゃん・・・10年も15年も変わらないよ・・・・風斗・・・・』
「・・・・ごめんな。でも俺は長くないって言ったろ?それは自分が一番分かってるんだよ。美結には本当に大変なことだけ押し付けることになる・・・。悲しい想いもいっぱいさせてきたし、この先もさせることになる。だけど覚えておいて欲しい。俺はいつでもいつまでも美結と風夏を見守ってる。絶対。俺は死んでもお前たちを守り続ける。・・・・ごめんな。ちゃんと守ってやれなくて・・・」
『・・・・ううん・・・・ちゃんと守れなかった方は私の方だね・・・もっと風斗にしてあげれることあった・・・してあげたいこともいっぱいあった・・・けど出来なかった。・・・ごめんね。・・・絶対に私は忘れない。夏が来るたび風斗のこと思い出して・・・風夏に風斗の大好きな”夏”を知ってもらって好きになってもらうね。・・・・風斗。あの時私があの駄菓子屋でダラダラしながらアイス食べてなかったらこんな人生じゃなかったよ。でも後悔なんてしてない。むしろ風斗がフラッと散歩に来てくれて私と出会ってくれて本当に嬉しかったよ。感謝しかないよ。ありがとう』
「・・・・・・それはこっちのセリフだ。いつ死ぬか分からないって言われて”だったらいつ死んでもいいや”って投げやりになってた俺の人生に生きる意味を与えてくれた。美結。本当にありがとう。お前は最高の女だった!それは間違いない!・・・・あとは頼んだ。風夏をよろしく」
風斗は本当に自分の死ぬ日を分かっていたかのようにその日、静かにこの世を去ったーーーーー
それから2年が経った今。
『ほら。いい風吹いてる!ひまわりさんも気持ち良さそうだね』
「ほんとだ〜!!!パパだぁ〜!!」
『え・・・??』
「パパは〜お風が好きなんだよ〜」
『風夏・・・・・覚えてたの・・・?』
「夏になるとパパは帰ってくるんだよ〜だから〜パパも一緒にアイス食べるの〜!!」
『・・・・そういうことだったの・・・風夏・・・・』
風斗。
風夏はちゃんと覚えてたよ。
風斗が夏や風が好きだったこと・・・・ちゃんと覚えてた。
まだ夏の匂いがわかることはないけど・・・・
いずれ近いうちに理解するかもしれないね。
形に残るものが全てじゃない。
そう思うから。
風斗と私と風夏の思い出が消えないように。
色褪せないように。
風斗の分まで生きていくから・・・・
絶対見守っててね。
END