「質問応答記録書」はもっぱら税務署のためにある

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法律・税務・士業全般
 税務署の調査を受けて居ると、税務署の調査官が「質問応答記録書」を作成する場合がある。「質問応答記録書」とは、主に「事実関係」について、調査官が質問し、納税者が回答したことを文書化するものである。出来上がると、調査官が読み聞かせ、誤りがなければ納税者に署名押印を求める公文書である。警察の取り調べ調書のようなものである。

 調査官が不正の事実を掴んだ場合、依然は「一筆」という文書を納税者に書かせていた。不正の事実をあとで覆させないために作成したのである。それを、近年国税庁が様式や記載すべき内容をきっちり規格化し、裁判等の証拠として耐えられるように策定したものである。

 確定申告において、「隠ぺいまたは仮装」を行っていた場合は「重加算税」が賦課され、不正を行っていた場合は調査遡及年数(課税年数)を5年から7年にすることができる。その場合、それらの事実の証明は課税庁が行わなければならない。物証(裏帳簿や偽造書類など)があれば、「質問応答記録書」がなくても、認定は可能である。ところが、実際の調査においては、「隠ぺいまたは仮装」や「不正の事実」を掴んでも、物証がない場合の方が多い。その場合に「質問応答記録書」が重要な意味をもつ。

 ただし、この書類は税法等にまったく規定がない。従って、署名押印する義務もない。署名押印すれば、自分の不利になるだけである。
 ちなみに、マニュアルによれば、「納税者が質問応答書の署名押印を拒否した場合は、その理由を聴取し、末尾に記載する」となっている。署名押印しなければ、まったく役に立たない書類とはならないことに注意すべきである。署名を拒否する理由も、きっちりと真実を告げる必要がある。

 また、控を請求しても交付しないよう、国税庁のマニュアルには記載されている。納税者からの立証や証明には利用させないシステムになっている。質問応答記録書は何回作成してもかまわないので、国税としては都合のいいものだけを採用する。納税者が、その後の不服申し立てや訴訟で使用するためには「個人情報公開請求」で入手する必要がある。
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