映画コラム『激動の昭和史 沖縄決戦』(1)

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7月23日、朝、いつもの様にTwitterを開いてトレンドを調べる
トレンド上位に”慰霊の日”とあった。

7月でこの時期に慰霊といったら、一つしか無い。

沖縄戦終戦の日だ

そこで今日はこの一作を是非ご紹介したいと思います。
なお文字数が多いため、数日には分けますがラストシーンまで描きたいと思いますので、”ネタバレ有”ということでご了承頂ければと思います。

1971年7月17日に封切りされた、岡本喜八監督作品
「激動の昭和史 沖縄決戦」

まず作品制作時の状況や出演俳優について綴って行きたいと思います。
「日本のいちばん長い日」(岡本喜八監督)からはじまった
「東宝8・15シリーズ」第5弾として描かれた作品。
戦後、沖縄戦を真正面から描いた初の作品として様々な著名人にも影響を与えた一作でもある(有名なのは”新世紀エヴァンゲリオン”の庵野秀明監督)


出演俳優も東宝俳優を、ふんだんに贅沢に採用している本作品。
沖縄総司令官役の牛島中将役に、”喜八組”常連の小林桂樹、周りを固める日本軍参謀達に丹波哲郎、仲代達矢、井川比佐志、中谷一郎、高橋悦史、樋浦勉、
戦艦大和の乗務員で寺田農
軍医役に岸田森、加山雄三、看護婦役に大空真弓、ひめゆり学徒隊の一人に酒井和歌子
日本軍役に地井武男、池辺良、そして、国民学校の教諭役の天本英世
沖縄市民役に、田中邦衛、大谷直子など
そしてナレーターは小林清志(ルパン三世の次元大介の声優)というもう昭和の映画が大好きな方なら胸焼けがしそうな程の豪華キャスティングだ
そしてご覧の通り、男性出演者がとても多い、むしろ凄く映画自体もとても男臭い。
8・15シリーズは個人的にとても硬派で様々な戦争を描きつつ、男性映画というイメージがとても強く感じられます。

スタッフを少しご紹介。
監督はもちろん岡本喜八(代表作【日本のいちばん長い日、大誘拐、肉弾、血と砂】)
特撮部分は中野昭慶(円谷プロで特撮を学び、連合艦隊、リメイク版ゴジラで有名)
脚本は新藤兼人(映画監督【原爆の子、さくら隊散る、裸の島】脚本参加【ハチ公物語】)
音楽は佐藤勝(楽曲提供【用心棒、赤ひげ、太陽の季節、幸せの黄色いハンカチ等】)
美術は村木与四郎(言わずもがな黒澤明のほぼ全作品の美術を仕切る職人中の職人)
というなぜここまで集まってしまったのか、もはや訳が分からない程のレベルにまでガチ上がってしまいましたね、嬉しい悲鳴。

撮影当時はまだ沖縄返還前だったので、スタッフ・出演者はパスポートを片手に沖縄へロケへ赴いたようである。





(1)

東南アジアの日本軍の度重なる敗戦状況からはじまり、サイパン玉砕をひとつの機に大本営は沖縄へ、本土決戦前の言わば「航空母艦」化しようとするところから始まる。
軍・官・民一体で沖縄を要塞化しようもするも上手くいかずやきもっき。
国を守る為ならば玉砕覚悟と発破をかけまくる、連日に及ぶ軍司令部の演説に
逆に不安を駆り立てられるドン引き気味の県民達、という微妙な関係性も描かれている。
矢継ぎ早に沖縄へ幾数の歩兵団や送り込まれ、沖縄を総括する牛島中将も着任。
そしてある意味、影の主人公でもある八原高級参謀も着任する。

ここでまず感じるのは、参謀達のもの静かな知的な円卓上の戦力会議という闘いと、沖縄へ送り込まれた民兵たちと県民達の汗染みた会話と熱っぽさという生き生きとした描写である。
これは最後まで描かれてゆく大切なコントラストであり、何よりも喜八監督も作品のテーマとしていた「人を描く」ということだったのではないかと思っている。

本編は早くも疎開が始まり、対馬丸の描写が入ると心が本当に砕けそうになる、ただただ辛い。
対馬丸は民間船の学童疎開として使用されたが、アメリカ軍の潜水艦から攻撃を受け沈没。1484名の犠牲者を出すという大惨事になった。しかもその事実は国民には伏せられた。

その後、軍も県民も総出で壕を掘ったり、土嚢を摘んだり、木を切ったり、土を運んだりと着々と敵への上陸をかく乱するための作業が進み、遂には飛行場まで作り出した。
当時は重機は何もないので全て人の手で勧められている、しかも短期間で突貫作業。
今で言うなら「マジ無理ゲーw」である。

せっかく作られた飛行場は戦闘機から一気に攻撃され、那覇市も火の海となった。
本格的な沖縄戦のはじまりである。
領空権を既に取っていたアメリカは台湾などへの空爆も開始するが、県民達には日本軍の朗報(後に誤報と分かる)が新聞やラジオで切り取られ伝えられたので、人々の表情はまだ穏やかだった。
だが大本営は焦っていた。遂にはベニア船の特攻兵機まで出そうとしていた。

ここで八原参謀の不気味さが少し際立ってくる気がする、沖縄戦に限らず牛島中将、長参謀長、情報をまとめ何かと動いていた八原参謀の何を考えているのか分からない淡々とした不気味な存在感である。言われた事をやる、どんな非道な言い分でも伝える、表情一つ変えもしない、という点である。

「軍司令部の散髪要員ヲ求ム」という張り紙で那覇で理髪店を営んでいた比嘉にここでスポットライトが当たる、演じるは田中邦衛、何とも言えない柔和な人柄がここでにじみ出る。妻子供を本土へ疎開させ、自分は軍司令部の散髪係として勤務する事になる。その表情は生き生きとしていてこちらまでどこか微笑んでしまう。だがもう船が出ない事を知り、比嘉は落胆する。

再び円卓会議、どうしても攻撃を仕掛けたい長と、守りつつ持久作戦を提案する八原
様々な話し合いが飛ぶ中で、本土から新たな師団が派遣されると聞き沖縄の事を考えていると喜ぶ牛島

だが師団は派遣されなかった。
「沖縄は見殺しにされるんですか?」
「沖縄は本土の為にある。本土の準備の為に兵力を裂く訳にはいかん」
その言葉こそが、この作品の本質的な部分であるとまず思います。

大阪にいた島田が沖縄へ派遣され、知事へ派遣された。
島田知事は早々に県民達の疎開を開始させはじめていた。

(2)へ続く


こんなこともやってます。もしコラムでご興味を持たれた方は是非一度ご相談を。お待ちしております。



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