デヴィ夫人の「不妊になる一番の原因は掻爬(そうは)」について考察してみた。

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コラム
関西テレビ(大阪市)は28日、関西地区などで24日に生放送したバラエティー番組「胸いっぱいサミット!」の中で、タレントのデヴィ夫人が「不妊の9割9分は中絶によるもの」など事実と異なる発言をしたとし「不妊に悩まれている方々をはじめ多くの人を深く傷つけた」と謝罪した。
                                  10/28 共同通信
 かなり衝撃的な発言で、私もさすがにこの発言には疑問を持たざるを得ませんでした。記事しか見ていないので、デヴィ夫人がどのようなやり取りでこの発言をしたのかは、番組の進行なども全くわからないので言葉のみで考えるしかないのですが、この発言はただ単に不妊治療中の患者さんを傷つけるという事だけではなく「世代間の不妊への考え方の違い」も露呈したように思えます。
 今回はデヴィ夫人の発言から、リプロダクティブヘルス(生殖に関する健康)の世代間意識の違いに関して考察してみようと思います。 

1.専門家は中絶手術(子宮内容物そうは術)と不妊の因果関係を否定

産婦人科医の宋先生がこうおっしゃっています。
「まず、(不妊の)一番の原因ではありません。昔は確かに、掻爬を何回もすると子宮の内膜同士が癒着してしまって、すぐに妊娠しづらくなることもありました。しかし最近ではそのようなことは滅多にありません」また、デヴィ夫人の「(掻爬では)先生によっては、子宮内に傷をつけてしまう。そうすると絶対に着床しない」という発言についても、事実ではないと否定する。「器具によって子宮に穴が開いてしまうことはなくはないです。しかし珍しい合併症で、絶対に着床しなくなるなどということはありません」「このような事実と違う発言は、中絶や流産の手術をした人を傷つけてしまいます」                                          10/27 BuzzFeed Japan
 全くその通りだと思います。現在は高性能の超音波装置もありますので、子宮を傷つけてしまうことは極まれになった、というのは事実です。しかし人間の胎盤形成は大変特殊で、それを取り除くという手術は「簡単」ではないことは一般の方々も知っておくべきだともいます。

2.人間の胎盤は子宮にかなり食い込んでいくタイプ

 子宮内容物そうは術が不妊やそのほかの合併症を引き起こしかねない施術であることも、宋医師が言及しているように間違いはありません。人間の胎盤は、子宮で子供を育てる胎生動物の中でも、かなり胎盤組織が子宮内部に食い込んでいく胎盤を形成します。
 子宮内容物そうは術の際には、きちんと胎盤組織を取り除くことが重要になります。ですので宋医師が言及しているように子宮を傷つけてしまうこともゼロではないわけです。
(ただそれと不妊原因を結びつけることは困難です。なぜなら、そうは前とそうは後の妊娠のしやすさなど比較できませんし、また子宮内膜はとても再生能力の高い組織で、そうはされても再生します。女性の場合、不妊の原因は2本の卵管が切除でもされていない限り、医学的に明確に断定することは困難なのです。)

3.親の世代は、現在の不妊治療の実際などほぼ知らないという現実

 デヴィ夫人の発言がそのまま受け取られてしまうと「中絶経験があるから不妊なんだ。」という理論がまかり通ってしまいます。
 ただ残念ながら、私たちの親の世代、とりわけ体外受精など知る由もない60代以上の世代にとっては、不妊の原因など「中絶」や「畑(子宮)が悪い」といった想像の域を超えない「迷信」のようなものを絶対的に信じている方もいるというのが実際だと思います。

 私の経験した患者さんの中には、外来に実母様と一緒にい来られる方がたまにいらっしゃいました。

「うちの子が不妊の原因なのですか?だとしたら何が原因なのでしょう?」
「私の子育ての何がいけなかったのでしょう?」
「体外受精をすれば50歳でも妊娠できるんですから、うちの娘はまだまだ大丈夫だと思うのです。」
私はこの子を授かったのだから、自分の娘が不妊だなんて信じられない。」

 そのような気持ちをあらわにされるお母様が多かったように思えます。患者さんの中にも「母に話しても理解してもらえない。」と話す方もおられ、世代間で全く「不妊への考え方」が異なり、進歩しすぎた医療にも、親世代の理解が進まないといった現実もあるように思えます。

4.世代間でのリプロダクティブヘルス(生殖に関する健康)への考え方の隔たりをなくしていこう!!

 デヴィ夫人の発言は、これから不妊治療の保険適用も進めていこうとしている政府にとっても、また子供が欲しいという夫婦を後押ししようとしている日本社会においても衝撃的な発言であったことは事実です。
 しかし世代間でリプロダクティブヘルスへの考え方が異なるというのは、読者の皆さんもお気づきではないでしょうか。奇しくもデヴィ夫人の発言で、公共の場で世代間の「不妊」への考え方の違いが露呈したように私には思えました。
 ご両親や義両親にも話せず辛い思いをされている方。職場の高齢の上司など、なかなか不妊治療の実際を理解してもらえず、職場で肩身の狭い想いをしている方もいるのではないでしょうか。
 これを機に、不妊の正しい知識を学び、患者さんがどれだけ精神的にも肉体的にも、社会的にも経済的にも辛い思いをしながら治療に臨んでいるかを理解し、生殖年齢の男女により良い環境を構築していくか、世代を超えて考えていこうではありませんか。いま、社会全体の理解が必要不可欠なのです。

5.最後に

 デヴィ夫人の公人としての立場から、TV番組でこのような発言をしたことは許容できません。意に反して泣く泣く社会的、経済的な理由で中絶という選択もされた方もいらっしゃいますし、赤ちゃんに重度の先天性の疾患が見つかり、中絶をせざるを得なかった方もいます。また不妊治療を受けている方に対し「中絶したから不妊なった」という誤解を社会に与えてしまった事は、重大な問題だともいます。早急に釈明の場をもって、謝罪してほしいというのが私の気持ちです。
           生殖医療カウンセラー★Yuri

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