伊坂幸太郎「グラスホッパー」「マリアビートル」「AX」

記事
小説
わが家に一時期伊坂幸太郎の大ブームが来たことがあり、家族みんな争うようにして読んだ時期があったんだが、わりとすぐにブームが去って久しかった。
今回、オーディブルでためしに「グラスホッパー」を聴いてみたら、めちゃ面白くて、――すっかり忘れていたし――合間に他の本もはさみつつ、「AX」まで読んでしまった。

スマホとかない時代、ぎりぎり携帯は生活に浸透しているけれど、まだまだ「闇の世界」には秘密が多かったころの話。ライトな筆致にテンポのいい展開でサクサク読める、という以外にも素晴らしい点はたくさんある。

案外複雑にからみあうストーリーの構成はもちろんだけど、
なんといっても個性的なそれぞれのキャラクターが実にうまく主張するので、長丁場を読みきるにもまったく混乱はきたさない。
ずーっと以前に立てられたフラグを回収するそのときにも、読者は混乱することなく「ああっ、そういうことかぁ」と膝を打つことができるのは、ストーリーの構成はもちろんだけど、それぞれが際立った色づけのキャラを持っているからなんだなあ、とつくづく思いましたとさ。

読みながらつい「上手いっ」と叫ぶ(まったく僭越ながら)作家さんは、かの宮部みゆき大先生なんだけど、伊坂幸太郎先生の作品も「へえっ!」と叫んだ。「マリアビートル」の、「きかんしゃトーマス」のネタ、あれは凄かったわ…そうかー、そうきたかー、の連続。
あれだけの大舞台を狭い新幹線の中に限定した、というのも普通にスゴくて、発売当時にも読んだはずなのに、今ごろになって感心して読んでる、という自分にも笑った。

けれど、面白いですよ~、未読の方はぜひ。

サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す