なぜEERが重要なのでしょうか?

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トレーディングシステムに限らず、通常の株式投資においても、EERを高めること、あるいは大きなEERを有する投資対象を探すことは重要です。
しかし、いくらEERが高くても、期待効率が低ければ意味がないのではないかと思われるかもしれません。

期待効率は、1株・1日当たりの期待利益額です。この値が大きいほど、より少ない株数(資金)で、またより少ない日数で、利益を上げることができるわけです。
当然、それは大きいに越したことはありません。同じEERのシステムがあったら、躊躇なく期待効率が大きい方を選ぶでしょう。

しかし、例えば期待効率が4でEERが3のシステムAと、期待効率が3でEERが4のシステムBとで、どちらを選ぶかと聞かれれば、多くの人はシステムAを選んでしまうかもしれません。

今、簡単のため、システムAとBは、株式を購入した後ストップ条件に達しない限り保有し続ける、というシステムであるとします。システムのストップ条件は、AB共に回帰推定値から標準誤差の2倍分以上下落した場合とします。

当初資金が1,000万円で、株価が5,000円だとすれば、手数料を無視すれば2,000株を買うことができます。システムAは1日当たり8,000円、システムBは6,000円の利益が期待できることになります。

では逆に、1トレード当たりの許容損失額が100万円だとした場合には、どうなるでしょうか。期待効率をα、標準誤差をδとすると、δは次式で表されます。

δ=365α/EER

今、資産が回帰推定値と等しいとすると、そこから2δ分の株価下落でストップとなります。最大許容損失が100万円(当初資金の10%)だとして、株式を何株買えるかを考えます。
上式より、システムAの2δは973、システムBの2δは548であることが分かります。許容損失額を2δで割れば、最大購入可能株数が求まります。 

購入株数を100株単位とすれば、システムAでは1,000株、システムBでは1,800株となり、ストップを考慮した期待利益は、1日当たりでシステムAが4,000円、システムBが5,400円です。
すなわち、同一のリスクで考えた場合には、システムBの方が期待利益が大きいという結果になるわけです。

もし、リスクを無視して株式を買えるだけ買った場合、想定最大損失はシステムAが約195万円、システムBが約110万円となります。
総資産に対して2割の損失を許容できるのであれば、システムAを用いることも否定できませんが、最終的には各自のマネーマネジメントに委ねられることになるでしょう。

なお、以上の議論は、株価が回帰推定値から”一瞬に”2δ以上下落した場合を想定しています。もちろん、実際にはこのようなことは起こりえず、普通はある程度の時間を要することになります。その場合、システムAとBとの差はどうなるでしょうか。

今、株価が2δ以上下落するのに、n日掛かるとします。すると、n日間にストップ基準は、nαだけ上昇することになります。
すなわち、購入株数をs、許容損失をLとすると、次式が成り立ちます。

s=L/(2δ-nα)=L/{(730/EER-n)α}

例えば、n=60日とすると、上記の例ではシステムAで1,300株、システムBで2,700株となり、その差は更に拡大します。1日当たりの期待利益で言えば、システムAが5,200円、システムBが8,100円にもなるわけです。

以上が、EERを最も重要視する理由です。

なお、この例では、システムBの購入株式数が現金で目一杯買える2,000株を上回っています。これは、例えば信用取引を行なって、自己資金以上を買い建てていると考えることができます。
EERが高ければ、レバレッジを効かせることは、一概にハイリスクであるとは言えないことになるのです。

タグチメソッドでは、まずS/Nありきであると教えられます。S/Nを高めた上で、その条件を崩さない範囲で感度の最大化を図る、というわけです。
それは、S/Nさえ安定して大きければ、感度はいかようにも高める手段があることを示しているのです。

S/NをEER、感度を期待効率に置き換えれば、トレーディングシステムについても、全く同じことが言えます。まずは、EERありきです。期待効率は後からいくらでも高めることができるのです。
それは、信用取引を用いても良いし、また、十分低いリスクが見込めるのであれば、出来るだけ低金利での資金調達も考えることができるでしょう。

EERが高ければ、大きな資金を運用したとしても、損失は限定されます。システムが機能している内は(株価が回帰推定値より2δ以上下がらない内は)、システムを運用し続ければよいのです。
そして、システムが機能しなくなったら、直ちに停止します。この時の損失額は、予め設定した金額以下に限定され、資金量やレバレッジには本質的には依存しないのです。

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