・・・ドラゴンは、ぼくたちを見据えたまま一歩下がるように見えた。
いや、違う。後ろ足の膝を緩め、力を溜めたのだ。
ごつごつした岩肌のような皮膚から、ぎりりときしむ音が聞こえるかのようだ。
来るッ!
次の瞬間、大きく口を開けたかと思うと、極大の炎が迸るッ!
閃光!
うわあぁぁぁぁ~、
つい目をつぶったぼくたちは、
ぼくたちは、。。。
ぼく、あれ? あれれ?
ぼくは、揺すぶられていた。
「おいおい、ちょっと。いきなり、うたた寝なんてしないでくれよ」
と文句を言うけど、お育ちの良いせいなのか王子さまは、あくまでも優しい。
一瞬、王子さまの笑顔のアップに見とれてしまっていたぼくは、あわててよだれをぬぐって
「す、すみません」
と言って、あわてた。
「そ、そうだ。こ、コーヒーブレイクにしませんか?」
「いや、キリが悪いよ。せめて、ベスト3の手前で切ろうよ、さ、次、次!」
「は、はい、かしこまりました」
(ドラムロールを想像してね)ドゥルルルルル、ジャーン。
「そして、第6位は【社会活動】です。『杖のクィーン』のカードが逆位置で出ました」
「うわぁ、うちの母上にそっくりな絵だ。しかも逆位置じゃないか、あまり良い意味じゃないんだよね?」
「畏れ多くも宮廷人物カードですからね、悩んだのですが、6位に置きました。
『杖のクィーン』は、優しく大らかな、人気のある女王様ですよ」
「だけど、逆転してるから、がみがみ言ってきそうだよね、ひとの後ろから。
やっぱりタロットカードって正位置が良い意味、逆位置が悪い意味なんだものね?」
「そうとも限りません。絵柄の悪いカードなんかは、逆になっています」
「あ、そうか。なるほどね~」
「ですが、このカードは王子さまお察しのとおり、とても明るく大らかな方が逆転していますので、ま、まぁ親切な方というのが、意味が逆さまだと、{お節介焼き}みたいになります」
「ははは、うちのお師匠さんって感じですよね」
「ん?何か聞こえたかしらん?」
珠の向こうで咳払いがしたので、ぼくは
「あ、いえ、なんでも、ないデス」
と、口をもごもごさせた。
王子さまは、ため息をついた。
「う~ん、社会活動ってボランティア活動も入るよね?」
「さようでございます」
「ははぁ。
実は母上は、社会活動に大変熱心な方だからね、国民には人気があるけど。
僕は小さい頃から遊ぶ時間を削られてボランティア活動にかりだされているんだが、」
「はい、なるほど。そこで出会う人も、ハートの温かい人が多いかもしれませんが、」
「いや、確かにそうだけど。先日は、老人ホームの慰問ばかりだったかな。
確かに独身女性が多かったけど、ご高齢の未亡人が多かったかな」
年齢層高めのおばあちゃんたちにもきっと、王子さまは人気だけど、確かに王子さまの恋人候補は少ないのかもしれない。
王子さまが悲しそうに言った。
「なんか、父上や母上を彷彿とさせるカードじゃなくて、もうちょっとこう、何とかならないのかな。
まるで、大吉に近づいているような気が全然しないなぁ。
ぼくもコーヒーが飲みたくなったから、いっそざっくり連続で5位4位を言ってくれないか?」
「かしこまりました。じゃまぁ、同率4位ということで2つ言いましょうか、ちょうど僅差でしたので」
「頼む」
(ドラムロールを想像してね)ドゥルルルルル、ジャーン。
「そして、同率4位です。
一つ目、「仕事関係」です。大アルカナカードの『世界』が逆位置で出ました。
二つ目、「SNSや友人関係から」です。これも大アルカナカードの『恋人たち』のカードが逆位置で出ました。吉です!」
「ちょ、ちょっと!」
「は、はい?」
「大アルカナカードって?」
「ローマ数字のついたカードです。ドラマチックな絵柄とテーマを持っていて、トランプの元となった小アルカナより重要視されるカードです」
「宮廷人物カードより、扱いが上?」
「さようでございます」
「そんな重要なカードをここでざっくりと、まとめて解説?
ま、まぁ今ぼくが言ったのか、仕方ないな。
とりあえず、『恋人』とか『世界』とか良い絵なのがありがたいな。
両方とも逆さまだけどね、だからベスト3になれなかったのか、、、、」
「さすが王子さま、ご慧眼です」
王子さまは恨めしそうに『恋人』カードを眺めた。
「あのさ、もしかしてこれって素敵な人と出会ったとしても失恋してしまう、とかいう意味なのかい?」
「いえいえ、そこまで悪くないんですよ。本来とても良いカードですから。
このカードには、もともと{選択}というテーマがあるのですが、つまり{より良い選択が難しい}、{きちんと判断する前の軽率さ}みたいなものを表すんです。絵柄が、楽園を追われる直前のアダムとイブですからね」
「『世界』は?」
「これはね、大アルカナカードの最後のカードですからね、{完成}とか{ハッピーエンド}という意味がありますが、逆転しているので、{未完成}とか、{なかなか進展しない}というもどかしい意味が入っていますので、
それでもね、良い意味の大アルカナカードが出てきましたから。イイ感じになってきました。
対象がいない、とか失恋する、とかじゃありません。迷うからこそ、{選択}の問題が出てきますから。
恋も最初から、ほんわかハッピーなだけじゃなく、じれじれやら、恋煩いはつきものだと思ってくださいませ」
「そ、そうだねえ。
恋をして、そして迷う時が訪れる、ということなんだね、
本当は、すぐにでもハッピーエンドになるって保証されてるようなのが、いいんだけど」
「最初から上手くいってしまうと、本当にその人が正解かどうかわからないくらいになってしまいますので、多少の失敗、ミスも乗り越えていただいた方が良いと思いますよ」
「うん、わかった。
『♪人生、楽ありゃ苦もあるさ、』か」
「王子さま、さすがですね」
「老人ホームで覚えたんだ。社会活動の時にね。
仕事関係とか友人関係か、ということは、意外と身近なところなのかな」
「何か、心当たりとかございますか?」
王子さまは真剣に考えている。
「ん~~~~、ん~~~」
ぼくたちは、数秒息をつめて待った。
「、、、、やっぱり男の比率が多くてね、困ったな」
(お師匠さまが、珠の向こうでニマニマしてたら困るな、)
ぼくは慌てて言った。
「そ、それでは、その方々の妹さんとかお姉さんとかをご紹介していただけませんかね、」
「それだ!
うん、それはいいアイディアだ。両家の子女は修道院に入っていることが多いから、なかなか会えなさそうだけど」
「やはり、ここは舞踏会を併用しましょう(ごちそうも出るでしょうし)。
ぼく、お手伝いに行きますよ(ごちそうも出るでしょうし)。
いくらなんでも修道院の先生だって、舞踏会には参加をOKしてくれますよ」
「うん、そうだね、これは一つ、前向きに考えてみよう!」
「それでは、コーヒーブレイクしてから、ベスト3に行きましょう!」
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※ この小説は、あざとくもCM用の童話風の物語です。
※ もちろん、フィクション小説です。登場人物、設定全てにおいてでたらめです。
※ アマチュアなので手作り感満載ですが、お許しくださいませ。気まぐれ不定期更新します。
※ カードの解説は便宜上、お話の筋に寄せていますので、この小説内の解説をうのみにしないでくださいね。
※ タイトル『おるすばんにっき:くまのボンザ』から、『王子さまの恋みくじ♡ :くまのボンザ』に変更いたしました。