緑のピアノ １

　子どもの頃の縁日の思い出がある。私の母の田舎では、毎年八月の盆に祭りが出る。従姉がアナウンサーという洒落た職業についていて、普段は地元のＦＭ局で番組を持っていたりして、私の憧れのオネエサンなのだが、その従姉のマリちゃんが、その夏祭りの司会をするのが恒例だった。私が行くとすぐにマリちゃんは気づいて気取った声の合間ににっこりと目くばせする。私はマリちゃんがお嫁さんになった年の祭りのことを、忘れられずにいる。