第一夜:「飛べるはずなんだ」

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小説
人間は飛べないなんて
きっとただの思い込み

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~飛べるはずなんだ~

「はあ~。いい天気だよなあー…。こーゆーとき、空飛べたら気分いだろうなあ~」
のんべんだらりの昼下がり、水枯れした川の跡をダラダラ散歩していた私は誰にともなくつぶやいた。
季節は初夏。
ごつごつと、大小様々な大きさの石が隆起する川中にかろうじて細い流れを作っている水の流れをヒョイと飛び越え、中州のようになった場所へ移動する。
かつては水中からようやく顔を川面に出していたのであろう背の高い草達も、今はその身体を浮かべるべき水を失い、心なしかうつむき加減だ。
時折強くなる風は温かく、地表をすべっては青空へと帰って行く。
ふと、なんの根拠もなく飛べるんじゃないかと思った。
何故と聞かれてもわからないが、飛べない方がオカシイような気がしたのだ。
私はキョロキョロとあたりを見まわした。
飛べなかったら恥ずかしいと思ったのではない。
飛ぶところを見られたら大変な騒ぎになるだろうなーと思ったから用心したのだ。
不思議なことに‘飛べないかも”なんて微塵も思わなかった。
正面から風が吹いてくる。
まるで見えるようだった。
たしかに、私には見えていた。
風の軌跡が。
鼓動が高鳴る。
私は両手を広げた。
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