留学のパラドックス

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コロナ禍も終わり国際化が叫ばれる中、留学をしたい学生や所属する学生に留学を奨励したい大学が再び増えているように感じます。私自身、1年間の交換留学を義務付ける国際教養大学に所属していたため、3年次にノルウェーのオスロ大学に留学をしました。多くの留学経験者が留学の利点として「視野の広がり」を挙げており、留学について調べればすぐにこのフレーズを見つけることができるでしょう。実際、日本という海に囲まれた島国で生まれ育った人にとって、自らの常識や慣習が通用しない異国の地で一定期間生活をすることで、新しい価値観や習慣を獲得し自分自身を形作ってきた文化を相対化できる、という意味で留学は視野を広げる機会となるでしょう。しかし、留学後にその広がった視野を生かせている人はどれだけいるでしょうか。少なくない数の学生が、帰国してすぐに留学前と変わらぬ型にはまった生活に戻り、大企業からの内定を狙う就活の中で口を揃えて語学力と留学による異文化交流や視野の拡大をセールスポイントとします。「郷に入っては郷に従え」という言葉もあり、また留学経験の影響の大きさやその内容自体も嘘ではないのでしょうが、実際に多角化した視点を用いる意志と機会がない限り、留学最大のメリットも空虚なキャッチフレーズのように響きます。どうか留学経験者がその経験を生かせる社会でありますように。

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