相続税の基礎知識

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コラム
今回は相談が多い相続税について基本的なことをお伝えいたします。
そもそも相続税は「死亡した者(被相続人)の財産や相続または遺贈(贈与した者の死亡により効力を生じる死因贈与を含む)により取得した配偶者や子など(相続人等)に対して、その取得した財産の価格をもとに課せられる国税のことです。
相続税の計算の流れは大きく3つのステップにより進みます。
ステップ1:課税価格の計算
ステップ2:相続税の総額の計算
ステップ3:各相続人等の納付すべき税額の計算

ステップ1:課税価格の計算
【課税価格】=「本来の相続財産」+「みなし相続財産」-「非課税財産」+「相続時精算課税制度による贈与財産」-「債務・葬式費用」+「相続開始前3年以内の贈与財産」
〇相続税の課税財産・非課税財産
(1)本来の相続財産
   被相続人に帰属していた財産上の権利のうち、相続または遺贈により相続人または受遺者が取得する財産…不動産、株式、預貯金、宝石など
(2)みなし相続財産
  イ:生命保険金等…被相続人の死亡により相続人等が受け取る生命保険金等のうち、被相続人が保険料を負担している部分
  ロ:退職手当金等…被相続人の死亡により相続人等が受け取る退職手当金等のうち、被相続人の死亡後3年以内に支給額が確定したもの
  ハ:生命保険契約に関する権利…相続開始時に保険事故が発生していない生命保険契約(被保険者以外が契約者)で、被相続人が保険料を負担してい
    るもの(解約返戻金相当額)
  ニ:定期金に関する権利…定期金とは定期金給付契約により、ある期間定期的に受け取る金銭等をいいます。
  ホ:保証期間付定期金に関する権利…保証期間付定期金の受取人が保証期間中に死亡し、相続人等が保証期間に対応する定期金または一時金の給付を
    受けた場合、被相続人が負担した掛け金等の金額に対応する部分の権利をいいます。

(3)非課税財産
相続や遺贈により取得した財産でも、次のように非課税になる場合があります。
・扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で通常必要なもの
・墓所、霊びょう及び祭具など
・条例により心身障碍者扶養共済制度に基づく給付金の受給権
・相続人が取得した生命保険金等のうち「500万円×法定相続人の数」までの金額
・相続人が取得した退職手当金等のうち「500万円×法定相続人の数」までの金額
・国、地方公共団体または特定の公益を目的とする事業を行う特定の法人などに寄附した場合
・相続や遺贈によって取得した金銭を特定の公益信託の信託財産とするために支出した場合
(4)相続時精算課税制度による贈与財産
相続時精算課税とは、原則として60歳以上の父母又は祖父母などから18歳以上の子又は孫などに対し財産を贈与した場合には限度額2,500万円の特別控除を受けられる制度のことです。限度額に達するまで何回でも控除することができます。

(5)債務・葬式費用
相続税は相続又は遺贈により取得した財産に課税するものであるから、財産を取得した者が負担すべき債務や葬式費用は取得した財産の価格から差し引くことになります。
※債務・葬式費用の適用の可否
〇債務
控除できるもの…借入金、未払医療費、被相続人に係る所得税、住民税、固定資産税など
控除できないもの…保証債務、遺言執行費用、弁護士・税理士費用
〇葬式費用
控除できるもの…通夜費用、本葬費用、葬式前後に生じた出費で通常必要と認められるもの、お寺などに対してお礼をした費用
控除できないもの…香典返し費用、初七日法要や四十九日法要の法会費用
(6)相続開始前3年以内の贈与財産
相続または遺贈により財産を取得した者が、相続開始前3年以内※に被相続人から財産を贈与されている場合は、その贈与により取得した財産の価格を相続税の課税価格に加算します。
※2024年より7年以内

ステップ2:相続税の総額の計算
相続税の総額は次の順で計算します。
(1)課税価格の合計額(ステップ1で計算した額)
(2)課税遺産総額
   (1)から遺産に係る基礎控除額※を控除します。
   ※基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
(3)相続税法上の法定相続人(各人とする)の仮の取得金額
   各人が(2)をそれぞれの法定相続分に応じて取得したと仮定した場合の仮の取得金額を計算します。
(4)各人の税額
   (3)の金額に相続税の速算表※を用いて、各人のそれぞれの税額を計算します。
   ※例:遺産に係る基礎控除額控除後の法定相続人の取得金額(1,000万円超3,000万円以下)…税率15% 控除額50万円
(5)相続税の総額
   (4)の税額を合計します。
以上により、相続税の総額を計算します。

ステップ3:各相続人等の納付すべき税額の計算
(1)各相続人等の算出税額
各相続人等の算出税額は、前回計算しました相続税の総額を実際の取得割合により按分いたします。
各相続人等の算出税額=相続税の総額×各相続人等の課税価格/課税価格の合計額
(2)各相続人等の納付すべき税額
各相続人等の個別の事情により、上記(1)に次の加算や控除を行います。
1.相続税額の2割加算
相続または遺贈により財産を取得した者が次の者以外の場合には、その相続人等の算出税額の100分の20に相当する金額を加算します。
 ・被相続人の配偶者
 ・被相続人の1親等の血族(代襲相続人を含む)
2.暦年課税分の贈与税額控除
相続または遺贈により財産を取得した者の生前贈与加算が行われている場合には、その贈与に係る贈与税額をその相続人等の算出税額から控除します。
3.配偶者の税額軽減
配偶者が相続又は遺贈により取得した財産の合計額が、法定相続分または1億6000万円までであれば、相続税額はゼロになります。
配偶者の税額軽減額=相続税の総額×次の①または②のうち、いずれか少ない金額/課税価格の合計額
①課税価格の合計額に配偶者の法定相続分を乗じた金額または1億6000万円のいずれか多い金額
②配偶者の課税価格
※この軽減措置を受けられるのは、被相続人の配偶者であり、法律上の婚姻の届出をしたものに限られ、婚姻の届出をしていない方は適用がありません。

4.未成年者控除
①適用対象者
相続または遺贈により財産を取得した法定相続人で18歳未満の者
また、未成年者控除額がその者の算出税額を超える場合には、その超える金額をその者の扶養義務者の算出税額から差し引くことができます。相続放棄をした場合も適用されます。
②控除額の計算
未成年者控除=(18歳-相続開始時の年齢)×10万円
5.障害者控除
①適用対象者
相続または遺贈により財産を取得した法定相続人で85歳未満の障害者
また、障害者控除額がその者の算出税額を超える場合には、その超える金額をその者の扶養義務者の算出税額から差し引くことができます。相続放棄をした場合も適用されます。
②控除額の計算
1)一般障害者
障害者控除額=(85歳-相続開始時の年齢)×10万円
2)特別障碍者(身体障害者手帳上の障害等級が1級又は2級、精神障害者保護福祉手帳上の障害等級が1級のいずれか)
障害者控除額=(85歳-相続開始時の年齢)×20万円
6.数次相続控除
相続開始前10年以内に被相続人が相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得し相続税が課されていた場合には、その被相続人から相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した相続人の相続税額から一定の金額を控除します。
7.在外財産に対する相続税額の控除(外国税額控除)
相続または遺贈により取得した財産の中に国外財産があり、その国外財産につき、財産が所在する国の相続税に相当する税が課せられている場合には、二重課税を防止するために一定額を控除します。
8.相続時精算課税制度による贈与税額の控除
相続時精算課税による生前贈与時に課せられた贈与税額は相続税額から控除できます。相続税額から控除しきれない贈与税額は全額還付を受けることもできます。
◎税額控除等の順序は、前述1.相続税額の2割加算から8.相続時精算課税制度による贈与税額の控除の順で加算・控除をしていき、相続税額がゼロになる場合またはこれらの控除の金額が控除しきれない場合は、その者の納付すべき相続税額はないものとなります。
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