267号・建設業2024年問題

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  愈々今年4月から実施される「働き方改革関連法」が適用開始される建設業界が解決しなければならない労働環境改善問題。
  具体的には、週休2日の確保、労働時間の管理、社会保険への加入、建設キャリアアップシステムへの加入により適正な給与を支給すること、DXシステム導入による生産性の向上の取り組みなどがあげられます。
  違反すると、労基違反、社会保険に未加入の建設会社には建設業の許可・更新を認めない等の対策が明示されています。

  これらのことから、業界では就業者の減少や高齢化が進んでおり、時間外労働への規制が厳格化されれば1人当たりがこなせる仕事量が減少するため、人手不足が顕著になり、工期の長期化による売上額の減少、建築コストがさらに上昇することが考えられます。
  すでに大阪万博でも見られるように人手不足、人件費の高騰、工期の長期化などに伴い建設価格の高騰等で課題は山積しています。
  それでも大手では、工期延長の申し込み、建設工事費の増額要求や新規受注の選別化、IT化、AIロボット化などで対応する力はあります。
ただ、大手と異なり、経営体力に乏しい中小業者は24年問題にすぐに対応策を講じるのは容易ではないでしょう。また、中小業者の下請け、孫請け業者は「背に腹は代えられず」受注してしまって、赤字受注、工期の遅延が考えられます。これらの対応は容易ではなく、多くの中小業者が廃業や倒産の危機にさらされるとの指摘もあります。
  東京商工リサーチ関西支社情報部の瀧川雄一郎氏は「業界を支える中小、零細業者は社員を増やすことが困難で、仮に増員できても、それに見合う工事案件を獲得できるかは不透明。親会社に対して受注単価の値上げを交渉することも容易ではない。建設業界の中小業者は今後、倒産が増大する事態が避けられないだろう」と指摘しています。建設業界全体を取り巻く状況は、今後さらに厳しさを増すとの見通しを示しています。

住宅業界では・・・
大手ハウスメーカーでは、新設住宅の着工件数は近年、横ばい状態が続いています。それでも住宅需要が底堅い一方、建設従業者が先細れば、供給が支えられなくなるとの懸念があり、好待遇で人材を確保したい考えです。

例えば、セキスイハウスでは、直接大工の採用、建設従業者の社会保険加入、新入社員の年収11%UP、工事責任者の年収を最大1,8倍に増額、大工さんへの休業補償、作業着の提供、完全週休2日制、男性育休取得率100%などを徹底する等の対策を始めています。

ダイワハウスでは、大工、職人の直接採用はないが、下請け企業が人材を雇用しやすいように独自の補助金制度を導入しているようです。基礎工事、外装を手掛ける技能者に対して、毎月7万5千円を拠出や、オンラインでの技能教育などを、下請け会社の若手社員らに実施しているようです。

 飯田GH傘下の一建設は、工業学校への売り込みなどで人材確保を図っているようです。
  多くの建設会社で、いまから労働環境の整備や若手、女性、外人労働者などの積極的な囲い込みが必要です。また、女性技術者、労働者の確保、育成を図っています。厚生労働省でも、若者、女性建設労働者確保育成助成金(女性専用トイレや洗面設備の設置などの支援)や建設キャリアアップ助成金などの支援が行われています。

  中小の工務店さんは、まだ実感していないのではないでしょうか。
これらのことから、まず、都市部から大手では建設従業者の囲い込みが激しくなってきています。気が付けば、受注ができても工事ができないという事も考えられそうです。
1970年代のことを思い出します。受注をしても施工店不足で消化できず施工店の奪い合いの状況で工務店はもうないという状況でした。M社に入社したばかりでしたが上司に連れられて現場巡り。仕事ができそうな大工さんに名刺を渡しておいて、帰宅後にその大工さんと近くの飲み屋で仕事の安定発注と支払い保証をするから工務店を作らないかと勧誘していました。
 いい大工さんには、仕事が切れることなく良い職人さんがすぐに集まっていたようです。そうして、その上司について20数社の工務店が出来ました。その中で、今でも付き合いのある工務店は、M社の下請け会の会長を2代目が引き継いでいます。多いときには年間100戸以上こなしていました。それはともかく、そういうアプローチ、囲い込みも必要かもわかりませんね。

・80~90年には、ハウスメーカーの差別化、高額住宅展示場などの影響を受けて中小の住宅工務店はついていけなくなりハウスメーカーの下請けか、廃業を迫られました。
・バブル崩壊の90年以降は、欠陥住宅問題などで、政府は長期優良住宅、性能評価申請などがむつかしく、中小工務店は対応ができなくなり多くの工務店がFCの傘下に加盟、加盟しなかった工務店は廃業していきました。
・そして、今回の24年労働環境問題、25年の4号特例廃止などで、これらに対応できない中小業者を排除しようとしています。

 小規模だから何とかなるだろうと思っていてもなんとかならないという現実が来ます。特に特徴がなく年間10戸以下の工務店は職人さんの施工費上乗せでもしない限り、施工できなくなりそうです。結果的に利益を出せないか、上乗せすると受注できなくなります。小規模工務店さんにとっては厳しくなりそうです。
次回は、「2025年4号建築特例廃止」をまとめてみます。

ハウスビルダー販売支援研究所 代表 大出正廣

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