配偶者居住権で、配偶者の住むところを確保する…増え続ける単身高齢者の問題

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法律・税務・士業全般
ここのところ、賃貸でも売却でも、単身高齢者の方からの仕事の相談が多くなっています。
「社会構造の変化」で、一人暮らしの高齢者は今後ますます増えていくでしょうね。
昔は結構多かった3世代家族は減り、ライフスタイルの近代化や、仕事の仕方も変化しています。
夫婦や親子だけで構成される家族がほとんどになりました。
高齢者の価値観も変わって来てまして、「老後は子供たちに頼らず自立したい」という人が増えているようです。
結果的に単身高齢者が、どんどん急増しているそうなんですね。
ただ、単身高齢者みなさんが、何も問題なく生活できるかというとケースによって色々です。
経済的に一人暮らしが可能(困っていない)であればまだしも。
頼っていた家族が他界して、残された配偶者の方の生活はどうやって守るのか?…その生活を保護する必要性が高まっています。
例えば、ご主人が先に亡くなって、奥様とそのお子さんが遺産分割の話がまとまらなかったら…
奥様=妻は長く生活してきた自分の家から引っ越さなければいけなくなるかもしれません。
こうした事態を避けるために、残された配偶者の「居住権」を確保しようという制度が、民法で定められています。

夫が亡くなっても、この家に住み続けられるの!?

「配偶者居住権」って、みなさんご存知ですか?
これは、亡くなった夫婦の片方が所有する建物に、相続が開始する前から住んでいた配偶者は、その後もその家に「無償」で住み続けることができる権利です。
存続期間は原則として終身で、遺産分割協議で決めた場合や、遺言で決めた場合は、その決めた期間になります。
この権利は他人に譲ることはできず、建物の共有持分を配偶者が持っていた場合は、適用されません。
またこの配偶者居住権とは別に、似たような権利があります。
それは、相続が発生してから6ヶ月間はその建物に「無償」で住み続けられるという「配偶者短期居住権」です。
相続発生直後の配偶者には、とにかく一定期間の居住権をあげましょう…というのが目的なんですね。

配偶者居住権があっても、人の家は勝手にいじれない??

配偶者には建物の使用と管理に関しては、「善良な管理者の注意義務」があると民法で定められています。
いわゆる「善管注意義務」ですね。
取引上において一般的・客観的に要求される程度の注意をしなければならない…という注意義務のことです。
もちろん、改築や増築をしよう…なんて場合は、建物所有者の承諾をもらわなければいけません。
他の人に貸したり、収益を得るような場合も承諾が必要です。
これに違反して建物所有者が直すように注意勧告しても応じなかったらどうなるのか?
配偶者居住権は建物所有者の「意思表示」で消滅してしまいます。

対抗するには登記が必要

この配偶者居住権ですが、ただの口約束では他の人に対抗できないんですね。
よく言われる「登記」です。
配偶者は、配偶者居住権の登記をしなければいけません。
建物所有者が代わって別な人になった時とか、勝手に利用されたりとか…
そうした場合に、登記することで他の人に対して対抗できるんです。
そうしないと、占有を妨害しようとしてくる第三者に、妨害停止や返還を請求することができにくくなっちゃうんですね。
配偶者居住権設定する登記簿には、存続期間とか第三者に使用収益させるのか…などが登記されます。
6か月間の配偶者短期居住権は登記できませんので、注意してください。
また内縁の配偶者は、配偶者居住権の権利を持つことはできません。
そもそもが相続権がありませんので、当然といえば当然ですよね。
配偶者居住権が登記された物件は譲渡、売却することはできません。
売却するには所有者の同意を得て、なおかつ配偶者がその権利を放棄する必要があります。
放棄するということは、放棄したからと言って、売却と違ってその権利と引き換えにお金が入るなんてことはないということです。
将来的に認知症や療養のために施設に入居したいと考えた場合には、当然、家とは別にその資金を準備しておかなくてはいけません。


このように、いろんなケースを慎重に考えて配偶者居住権を設定する必要がありそうです。
ぜひ利用する前には相続の専門家に相談されることをお勧めします。
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