【法の意義を校則から考える】小論文の書き方・考え方⑦

記事
学び

●前説




今回も前回に引き続き、法学部小論文の考え方を解説してゆきます。



OK小露文では学部ごとにオリジナルテキストを作成しています。



文章の書き方や段落構成などに留まらず、テーマの背景を深掘りし、関連する知識の解説も行っています。



法学部小論文の基礎編は全8回(1週間1回で合計2か月で完成)を予定しています。



今回はテキストの見本として第2回の「『法』とは何か~校則から考える」の前半をお届けします。



 最近、AO入試や推薦入試で書類提出時にレポートを課す大学も増えてきました。



今回取り上げる「校則の是非」については、成蹊大学経済学部2023年推薦入試のレポートで出題されました。



これからも小論文やレポートに取り上げられるテーマとしてこの問題を考えることは大切です。



法学部に限らず、AO入試や推薦入試の受験を考えている生徒さんは、参考にしてください。



(1) はじめに



 法学部小論文を勉強するうえで、第一に考えなければならないのは、「法」とは何かという問題になります。



 このテーマのついては、政治経済や現代社会、公共の授業で「「法の支配」」と「法治主義」について習ったことがある人もい



るでしょう。今回は、その解説は後ほど触れることにして、まず高校生にとって身近な校則の問題から「法」について考えてみる



ことにしましょう。


(2) 問題「学校の校則の是非」新潟大学法学部前期2021年(改作)



多くの学校では、各学校の責任と判断のもとに定められている決まりとして校則が存在する。校則が必要かどうかについて,肯定・



否定のそれぞれの立場の論拠と予想される反論を示しつつ、あなたの意見を1000字以内で述べなさい。



引用者の注.この場合の校則は高等学校の校則とする。


(3)段落構成



 まず段落構成を初めに示すことで、この問題を考える際の道筋について解説してゆきましょう。


第1段落:校則が必要な理由


①  学校の意義~集団生活



・秩序が必要



②  学校の意義~学びの場



・校則による生徒への生活指導が学習指導や進路指導につながる。



③  学校の意義~社会に出る前の準備期間



・社会性や協調性(協働)の涵養



・社会人としてのモラルやマナーを身に着けさせる


第2段落:校則が問題である理由


①  「法の支配」の原則に反する



「法の支配」の理念では、本来校則は生徒の人権重視ためのものであるが、実際は学校や教師が生徒を支配するために使われている。



②   いわゆる「ブラック校則」の問題


第3段落:現実的な解決策


①   校則を全廃することは第1段落の視点から非現実的。



②  校則の再検討



・検討手順



 校則の目的はあくまでも生徒の安全や人権を守ることにある。



 こうした目的から外れた校則は廃止する。



 罰則の必要性を議論し、罰則を設ける場合の妥当性も検討する。



・手続き



  改廃の柔軟性と透明性の確保




 校則制定・改正・廃止にあたって生徒が参加し、生徒や父兄の賛成を必要とする


第4段落:積極的な校則の活用~これからの時代に合った校則


① グローバリズム



外国人の生徒に対する配慮



②環境問題



地域の環境との調和



③生徒の安全・安心



新型コロナウイルスなどの感染症対策



まとめと展望:未来の校則の新しい姿~校則からアドミッションポリシーへ






(4)校則が必要な理由



①  学校の意義~集団生活



第1段落では、校則に対して賛成の立場から校則が必要な理由を論じます。



まず学校の意義についての考察から始めます。



学校は集団生活を営む場であることを初めに確認すること。



集団生活をするうえで他者への配慮が必要になります。



さらに学校はタイトな時程ごとに時間割が設定されているので、生徒が各個人、好き勝手なことをやっていてはスムースに授業や行事を運ぶことができません。



このような理由で生徒には秩序正しい行動規範が要請されます。



時間を守って行動し、授業や行事ごとに生徒のするべき行動やマナーが細かく定められています。



これを生徒にわかりやすく明文化したものが校則になります。



遅刻の禁止、私語の制限、持ち物の規定などの校則がこれに当たります。



③  学校の意義~学びの場



学校は教育を授ける場であり、この教育の内容は次の3点から構成されています。



1)生活指導、2)学習指導、3)進路指導。それぞれについて考えてみます。



1) 生活指導



生徒は一日の大半を学校で過ごします。生徒は学校で安全・安心で快適な学校生活を営む権利を持っています。



また、生徒にとっては教科学習だけではなく、学校生活自体がさまざまな学習の場であり、自身や級友・校友との関わりを通して健全に成長してゆくことができます。



このような生徒の学びや健全な成長を阻む危険な行為、周囲への配慮を欠いた行動等については厳しく注意や指導することが教師の重要な責務にあたります。



このような生活指導は教師の恣意的なものであってはならないために、学校ごとの指導方針を明文化した校則は必要となります。



さらに、校則という社会規範を守らせることも教師の生活指導において重要な要素と考えられます。





2)学習指導



生徒の生活が乱れると学習の進捗にも影響が及びます。



生徒が教科学習に集中して取り組めるように教師は生活指導に注力を傾けます。

生活指導は学習指導とも密接な関係性を持つのです。



3)進路指導



早い生徒は高校卒業後に就職します。

大学等の高等教育機関に進む生徒も多くはいずれ就職して社会人となります。



企業等に就職した場合、スーツや制服着用というドレスコードがあります。



こうした規範に高校時代から慣れさせておく、ということが制服着用の校則の目的として考えられます。



また、企業では多くの社員との協働によって職務がなり立っています。



就職の際の面接でも清潔で社会人としてふさわしい服装や髪型、協調性の有無などを見られる。



生徒が希望の職種や企業に就職できるようにするためにも、高校生活の日ごろから校則を設けてうるさく服装や髪型を指導することは理に適っています。



企業に就職しなくても様々な法律やルール、マナーを守ることは社会人としての常識です。



高校はこうした社会人になるための準備期間と考えるならば、順法精神を養い、社会性や協調性を涵養し、社会人としてのモラルやマナーを身に着けさせる進路指導の一環として生徒に校則を守らせることの意義は合理的に導かれてくるはずです。


(5)校則が問題である理由



第2段落は校則に反対の立場から、そのどこに問題点があるかの論拠を示します。大きな論点は2点です。



①  「法の支配」の原則に反する



「法の支配」について以下、解説します。



中世のヨーロッパでは絶対主義の下、国王が権力者として恣意的な支配を行っていました。



君主に従わない者を逮捕・投獄し、高率の税を課し、土地を接収するといった具合に、絶対君主が法に拘束されることなく、恣意的な政治を行われていました。



これを「人の支配」と呼びます。



こうした「人の支配」に対抗してイギリスで起こってきた考え方が「法の支配」になります。



13世紀イギリスの裁判官ブラクトンは「国王といえども神と法のもとにある」という言葉を残します。



ここでいう「法」とは、権力者が従うべきもので、その目的は法によって、国民の基本的人権の尊重を保障することにあります。



17世紀,イギリスのエドワード・コークはブラクトンの言葉を引用して国王に対抗し「議会の承認なしに課税しないこと」「国民を法律によらず逮捕しないこと」という内容の権利請願を起草して、イギリスにおける「法の支配」を確立します。



この「法の支配」は近代憲法の元となり、民主主義にとって欠かせない基本原理となるのです。



学校は日本国憲法の下、民主主義や基本的人権を教える場であることを踏まえると、学校という社会の憲法や法律である校則も「法の支配」の理念に従うのは当然です。



法は主権者である生徒の人権を守るために制定されるものであるのに、その生徒が校則に従う義務があるというのでは、本末転倒になります。



仮に校則を制定するにしても、これに従うのはむしろ生徒から見れば上位の立場にある教員や学校側ではないでしょうか?



最近、表面化している教員による生徒へのパワハラ、セクハラ等のモラルに反する行為を取り締まるのが「法の支配」を理念とする校則の意義になるはずです。



このように、本来校則は生徒の人権重視のために制定されるべきものであるのに、実際は学校や教師が生徒を支配するために使われている。

このような法則は直ちに廃止されてしかるべきではないでしょうか。

続きは以下の講座を受講された方が読めます。






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