中小企業経営のための情報発信ブログ405:本の紹介 スマホ脳

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今日もブログをご覧いただきありがとうございます。
今日は三が日の最終日、本の紹介をします。若干古くなりましたが、世界的ベストセラー、アンデシュ・ハンセン著「スマホ脳」(新潮新書)です。著者のハンセン氏はスウェーデンの精神科医で、前作「一流の頭脳」もベストセラーになっています。
平均で1日4時間、若者の2割は1日に7時間もスマホを触っています。この10年の人類の行動変容、コミュニケーションやお互いを比べ合う手段が大きく変化し、心の不調で精神科を受診する人も増えています。
著者は、「人間の脳はデジタル社会に適応していない」と言っています。本書は、この10年で起きた人類史上最速の行動様式の変化が、人間の脳にどのような影響を与えるのかを突き詰めた内容の本です。
睡眠障害・うつ・記憶力や集中力の低下・学力の低下・スマホ依存など、最新研究が明らかにするのはスマホの便利さに溺れているうちに脳が確実に蝕まれていく現実なのです。スティーブ・ジョブズほど、この10年に人類の行動様式を大きく変えた人物はいません。いくつもの製品を市場に投入し、映画や音楽、新聞記事を消費する方法を激変させ、コミュニケーションの手段についても大きく変容させました。しかし、ジョブズは、スマホやiPadの危険性を熟知していました。ジョブズは自分の子供にはスマホやipadを与えることをしなかったのです。ビル・ゲイツも自分の子供が14歳になるまではスマホを触らせなかったのです。このようにIT企業のトップは自らが生み出した文明の利器が人類、特に幼い子供たちの脳と心を蝕むことに気づいていたのです。
新型コロナの感染拡大で巣篭もり生活で外出が控えられるようになると、以前よりも孤独感を感じ、更にスマホへの依存度が高まり、行動制限が解除されてもその傾向は続いています。
歴史的な視野で見ると、人間の命を奪ってきたのは癌や心臓発作ではなく、飢餓や殺人、干ばつや感染症なのです。だから人間の身体や脳は、飢餓や干ばつ、感染症から命を守るように進化してきました。素晴らしい免疫システムを発達させたのもその一つです。感染を回避する行動も身につけました。相手を見ただけで病気だと察知する能力や、感染した人の情報を欲する衝動も、誰とどの程度距離を置けばいいのかという情報は重要なのです。だから、ニュース速報を見るのを辞められない、コロナ禍でテレビやパソコン、スマホからの情報が手放せないのです。だがその結果、多くの人がストレスを感じるようにもなっています。更に、噂やニセ情報がSNSを通じてウイルスよりも速いスピードで拡散されています。以前には噂の拡散は少人数の間で広まるだけでしたが、今や数時間で数百万人にも拡散します。WHOは「私たちはウイルスの感染拡大(パンデミック)に付随してインフォデミックにも襲われている」と注意を呼びかけました。
著者は、「新しいテクノロジーに適応すればいいと考える人もいるが、私は違うと思う。人間がテクノロジーに順応するのではなく、テクノロジーが私たちに順応すべきなのだ。フェイスブック他のSNSを、現実に会うためのツールとして開発することもできたはずだ。睡眠を妨げないようにも、身体を動かすためのツールにも、ニセ情報を拡散しないようにもできたはずなのだ」と言います。では、なぜ、これらの生みの親たちはそうしなかったのでしょうか?著者は「お金だ。企業にとって黄金の価値を持つ。彼らの目的は、私たちからできるだけたくさんの時間を奪うこと」と辛らつに言い、「テクノロジーはさまざまな形で人間を助けてくれるし、もちろんこれからも存在し続けるべきだ。だが一長一短だということを覚えておかなくれはいけない。そこで初めて、心身共に健康でいられるような製品を求めることができるのだ。金儲けのために人間の特質を利用するのではなく、もっと人間に寄り添ってくれるような製品を」と言っています。
コロナ禍で、スマホを触る時間が増えた今こそ、人間の身体や脳・心にどのような影響を与えるのかを認識しておくべきだと思います。その意味で本書は役に立つ本ですし、内容的にも面白い本です。
第1章 人類はスマホなしで歴史を作ってきた
 大海のごとく果てしない時間をかけて、脳は人間が暮らす世界に適合してきました。ここで言う「世界」は、今の私たちが慣れ切っている世界とは根本的に違った世界です。今の世界はここ数十年で作られてきたものです。人間は現代社会に適応するようには進化していないのです。
第2章 ストレス、恐怖、うつに役目がある
・決断を下すときに私たちを支配するのは感情です。感情が湧くことで、身体と脳に連鎖反応が起こり、それが各器官の動きに影響するだけでなく、思考プロセスや周囲をどう解釈するかにも影響します。ネガティブな感情はポジティブな感情に優り、負の感情は脅威に結びつき即座の対応が求められました。この負の感情がストレスです。
・不安というのは起きるかもしれないという脅威です。不安があるからこそ、大事な計画を立て、集中するのを助けてくれます。その意味で不合理と思える不安も合理的なのです。不安というのは人間特有のものです。
・うつは長期のストレスが原因の一つです。うつ症状は危険な世界から身を守るための脳の戦略だともいわれます。一番強いとか賢いという人が必ずしも生き残れるのではありません。危険や争いを避け、感染症にかからず、餓死しないことも同じくらい重要で、うつや不安に悩まされている原因もそこにあり、その特性が人間を生き延びさせてきたのです。
第3章 スマホは私たちの最新のドラッグである
・ストレスのシステムと同じように脳内の報酬系システムも何百万年もかけて発達してきました。報酬システムではドーパミンが重要な役割を果たし、生き延びる遺伝子を残せるように人間を突き動かしてきました。脳は、常に新しいもの、新しい知識を渇望するものです。脳は、確かのものよりも不確かなもの、つまり「もしかしたら」というものに、多くのドーパミン報酬を与えるのです。人間に組み込まれた不確かな結果への偏愛が現代では大きな問題を引き起こしています。それがギャンブル依存症です。ゲームに嵌るというのも同じです。
・SNS、つまりフェイスブックやインスタグラムやスナップチャットも不確かな結果への偏愛を巧みに利用しています。何か大事な更新がないか、「いいね」がついていないか確かめたいという欲求を起こさせます。フェイスブックやインスタグラムでは、誰かが「いいね」を押した瞬間に親指マークやハートマークがつくのではありません。フェイスブックやインスタグラムはそれを保留し、私たちの報酬系が最高潮にあおられる瞬間まで待ち、又刺激を少しずつ分散することでデジタルな報酬への期待値を最大限に持っていくように研究されています。これらの企業では行動科学や脳科学の専門家を雇い、私たち利用者の脳が最大限の依存性を発揮するように操っているのです。こうしてスマホが脳をハッキングするシステムを作り上げているのです。
第4章 集中力こそ現代社会の貴重品
・脳には膨大な数の手順を同時処理するという凄い能力がありますが、知能の処理能力には著しく限定された領域があります。それが集中です。複数の作業を同時にこなしていると思っていても、実際にやっていることは、作業の間を行ったり来たりしているだけです。2つの作業の間で集中の対象をパッパッと変えているだけなのです。問題は脳がさっきまでの作業の方に残っているということです。脳には切り替え時間が必要なのです。
・複数の作業を同時にしようとすると、集中力も作業記憶でも悪影響を受けます。サイレントモードにしてポケットにしまっても、スマホには人間の注意を引き付ける凄い威力があります。一つのことに集中しているつもりでもポケット内のスマホに意識が移り集中力を阻害するのです。「スマホの存在がわずかでもあると脳は弱る、認知能力の容量が減る」のです。
・長期記憶を作るためにも集中は重要です。長期記憶を作ろうとすれば、脳細胞間の新しいつながりを作らなければなりません。記憶の繋がりを強化するためにはそこを通る信号を何度も出さなければなりません。新しい長期記憶を作ることは脳が最もエネルギーを必要とする作業なのです。
第5章 スクリーンがメンタルヘルスや睡眠に与える影響
・極端なスマホの使用がストレスや不安を引き起こしますが、何より影響を受けるのは睡眠です。人間が眠る最も重要な理由は短期記憶から長期記憶への移動が夜に行われるからです。眠っている間に、脳はその日の出来事からどれを保存して長期記憶を作るかを選別しているのです。入眠は周囲の存在を徐々にスイッチオフしていくことで、段階的に進行します。ベッドに入る前にストレスを受けると寝つきが悪くなります。スマホがストレスを生み、ストレスが睡眠を妨げます。更にドーパミンと関係するあらゆる刺激によって脳が目覚めてしまいます。寝る前にスマホを使うと寝つきが悪くなるのは当然で、メンタルヘルスや睡眠に大きな影響を与えます。
第6章 SNS-現代最強の「インフルエンサー」
・人間の脳は悪い噂を偏愛します。それは、誰が信用でき誰と距離を取った方がいいかなど、悪い情報が重要だったからです。一方で、人間は社交的な生き物です。SNSで自分のことを話し称賛され、報酬中枢が活性化するほど、SNSで積極的になります。しかし、SNSを使うほど孤独になっているのです。孤独というものは、友達やチャット、着信数で数値化できるものではありません。孤独というのは体感するものです。現実に人と会うほど幸福感は増し、フェイスブックなどSNSに時間を使うほど幸福感が減り孤独感が増しています。「フェイスブックは表面的には人間のソーシャルコンタクトへの本質的な欲求を満たしてくれる貴重な場である。しかし、心の健康を増進するどころか悪化させる」という調査結果があります。
・SNS以外の場(現実に人と会う)で他の人からしっかり支えられている人は、SNSを社交生活をさらに引き立てる手段として利用しているために良い影響を受けています。一方で、社交生活の代わりにSNSを利用する人は、精神状態を悪くします。SNSを使いすぎることで、精神状態が悪化したり自信を失ったりする危険性があるのです。
第7章 バカになっていく子供たち
・人間の脳内には、甘いものを我慢させるだけでなくスマホを手に取りたいという欲求も我慢させてくれる領域があります。この領域が子供や若者のうちは未発達で、デジタルなテクノロジーをさらに魅惑的なものにしてしまっています。
・タブレット端末を幼児に持たせるのは、子供の発達を遅らせるという研究結果があります。本物のパズルをすることで指の運動能力を鍛え形や材質の感覚を身に着けることができます。書く能力についても然りです。確かに、ワープロやパソコンを使うようになって漢字を思い出せなくなりバカになったようの思います(笑い)。
・スマホをよく使う人は衝動的になりやすく、報酬を先延ばしにするのが下手になります。我慢することができなくなるのです。報酬を先延ばしにできなければ、上達に時間がかかるようなことを学べなくなります。今の子供は即座に手に入るご褒美になれているから、すぐに上達できないと辞めてしまいますし、就職してもちょっとしたことがきっかけですぐに嫌になって仕事を辞める若者が増えています。
・若者の精神不調や依存症も増えています。
第8章 運動というスマートな対抗策
・多くの人がストレスを受け、集中できず、デジタルな情報の洪水に溺れそうになっている今、運動はスマートな対抗策です。最善の方法です。定期的な運動によって集中力も増し、ストレスを予防します。身体を動かすとストレスへの耐性がつくし、集中力を与えてくれます。研究の結果、あらゆる種類の運動が知能に酔い効果を与えてくれることが分かっています。運動によって一番改善されたのは知能的な処理速度です。週に2時間程度(数に3日、1日45分)の運動で十分です。脳だけでなく身体のコンディションも良くなります。
第9章 脳はスマホに適応するのか?
・よりよい教育を受け、より難しい仕事をこなし、複雑さを増し続ける世界に私たちは住んでいます。それにあわせて、私たちは知能を発展させ、思考を訓練し、IQを上昇させてきました。しかし、90年代の終わりころからIQの低下が見られています。学校が昔より緩くなり、読書量が減り、更に身体を動かす時間が減ったことが原因です。
・スマホやパソコンに多くのことを任せ、それを操作する以外の能力が次第に失われつつあるのではないかと恐ろしくなります。自動化や人工知能の普及により、消えてしまう職業は多いのです。人間に残される仕事はおそらく集中力を要するものです。皮肉なことにデジタル社会で最も必要とされる集中力が、デジタル社会によって奪われています。
・私たちは進化を続けています。進化の終着点にいるのではありません。私たちは新しいデジタル社会にも適応するのでしょうか。著者は「私はそうは思わない。進化の基本は、生存や繁殖にメリットになる特質が一般的になることだ。その特質を持たない人は生き延びることも、子孫を残すこともできないのだから」と言っています。
・デジタルで退化しないために、デジタルな道具を賢く使わなければなりませんし、それにはデメリットがあるということも理解しておく必要があります。
最後に本書で、デジタル時代のアドバイスが載っています。一部載せておきますので、参考にしてみてください
1.自分のスマホ時間を知ろう
2.目覚まし時計と腕時計を買おう。
3.毎日1~2時間、スマホをオフに
4.ブッシュ通知もすべてオフにしよう
5.スマホの表示をモノクロに
6.運転中はサイレントモードに
職場で
 1.集中力が必要な作業をするときはスマホを手元に置かず、隣の部屋に置こう
 2.チャットやメールをチェックする時間を決めよう
人と会っているとき
   1.友人と会っているときはスマホをマナーモードにして少し遠ざけておき、 一緒にいる相手に集中しよう
  2.あなたがスマホを取り出せば、周りにも伝染する
寝るとき
  1.スマホやタブレットの端末、電子書籍リーダーの電源を切ろう
  2.スマホを寝室に置かない
  3.どうしてもスマホを寝室に置くなら、着信音を消しマナーモードに
寝る直前に仕事のメールを開かない
SNS
  1.積極的に交流したいと思う人だけをフォローしよう
  2.SNSは交流の道具と考えて
  3.スマホからはSNSをアンインストールして、パソコンだけで使おう 
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