「禁酒番屋」の思い出

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落語の演目に「禁酒番屋」と言うのがある。

ある藩で酒に酔った勢いで、口論となり、ひとりの侍が同僚を斬り殺してしまった。自責の念でその侍も自刃。

藩主は藩内での一切の飲酒の飲酒を禁じた。屋敷の中に酒を持ち込まない様に番所を設けて、出入り商人の持ち物を調べた。

ある日、大酒飲みの近藤と言う男が、酒屋に屋敷まで一升瓶を届けてくれと依頼する。

これは何じゃ?
油でごさいます。
では中をあらためる。この「盃」に注いでみよ。なんだ、酒ではないか!没収する。

仕方なしに今度は一升瓶を木箱に詰めて、風呂敷に包む。

これは何じゃ?
カステラでございます。
カステラ?箱を開けてみよ!なんだ、酒ではないか!
いいえ、水カステラでございます。
水カステラ?聞いたことがない。この「湯呑み茶碗」に注いでみよ。

こうして、二升の酒を没収され、まんまと飲まれてしまった。復讐に燃える近藤。

一升瓶に目一杯の小便を詰め込んで、酒屋に番屋まで、持ち込ませた。

これは小便でございます。
小便?
ハハハ、何をバカな!
いえ、庭の木の松の木のこやしにするそうです。
酒屋にそんなバカな注文をする奴がどこに居る。この「どんぶり鉢」に注いでみよ!

うっ、この正直者め!

...

昔は、最低月2回、池袋、浅草、上野、新宿の寄席に足を運ぶ落語ファンだった。

ある師匠が楽屋から出てきた時、カステラの箱を差し入れた。ファンレターを添えて。

後日、何と師匠から絵葉書の礼状が届いた。その夜の演目が「禁酒番屋」だった偶然に驚いたと、書かれていた。

すっかり師匠に惚れてしまって、池袋演芸場で、師匠が主任(トリ)の池袋演芸場に連続10日間通ったこともある。

都内でちょっと大きな地震があった翌日、師匠は「マクラ」でこんな事を話をした。

昨日は随分と揺れましたね。棚の上から、大きな箱が落ちて来て、すぐに避けました。

あやうく「小三治」どころか「大惨事」になるところでした。

あの頃は若くて純粋で熱烈な落語ファンだった。

柳家小三治師匠の御冥福をお祈りします。
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