大丈夫

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一休さんが87歳で亡くなる直前に、弟子たちに言いました。「この先、どうしても困ったことがあったら、この手紙を開けなさい」。で数年後、実際に困ったことになり、手紙を開けてみました。そこに書かれていたのは、「心配するな、大丈夫、なんとかなる」。みんなつい笑ってしまい、心配の気持ちが緩んだそうです。不思議に「なんとかなる」ような気がしてくるし、実際なるようにしかならない。そう考えると楽になりますね。

私は、この「大丈夫」という言葉、コンセプトが昔から好きでした。なんか、器の大きさ、安心感、暖かさを感じるんです。商品のネーミングに使えないかと夢想したこともあります。「大丈夫」、「DAIJOBU」。英語だと「All right」、「Fine」、「OK」? なんかしっくりこない。周囲も「コンセプトはわかるけど、ネーミングはねぇ・・・」と相手にされませんでした。

「大丈夫」は今の時代に求められるコンセプトのような気がします。「大丈夫」の名詞の意味は、「立派な男性」。似た言葉に「偉丈夫」というのがあって、三国志なんかによく出てきますね(中国では一丈=180cmだった)。一般的に使われる形容動詞は、「しっかりしている、心配ない、間違いなく確か」といった意味です。しかし最近の会話の中では意味が少し変容しているらしい。「手伝いましょうか?」→「いえ、大丈夫です(不要)」。「試着できますか?」→「はい、大丈夫です(可能)」など。これらは本来誤用なのですが、現在では国語的に認められつつあるようです。でも元々は、「立派な男に任せておけば、心配ない」というのが語源で、力強くて安心感のある言葉なんです。

さて自分の身の回りで、本来の意味(誤用ではなく)で、「大丈夫」と声掛けしてくれる人はいるでしょうか? 逆に皆さんから、気休めではなく、本気で「大丈夫」と誰かに言えますか? この言葉、結局「心配」と対になっている気がします。「〇〇〇が心配だよね」→「大丈夫」。人は誰でも心配性だから、まだ起こってもいないのにあれこれ不安になる。だから自分以外の誰かに「大丈夫だ」と言ってほしい。ほっとします。AIに「75%の確率で問題は発生しません」って言われてもね・・・。こんな時代だからこそ、一休さんのように、理屈抜きに「大丈夫」と大きく言い切ってほしい。そんな気がします。

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