太平記にみる胆力

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私はNHKの大河ドラマが大好きです。大河ドラマは、戦国、幕末を交互にやって、たまに源平を挟むというのが王道だと思いますし、実際そんなパターンです(昨年は戦国、今年は幕末)。私は戦記では太平記が好きです。大河ドラマでは1991年に一度だけやっていますが、残念ながら私は見ていません。吉川英治の「私本太平記」が原作で、主役の足利尊氏を真田広之が演じています。戦いの構図が複雑な上に、天皇を中心に物語が進行するので描くのが難しそう。私は原作の「私本太平記」は全8巻を読みました。混乱の中での人間模様が面白い。ただし「私本太平記」は吉川英治最晩年の作品なので、最後は体調不良で話を急いだ感があります。

太平記の主要な登場人物は、足利尊氏・直義兄弟、新田義貞、楠木正成、そして後醍醐天皇。その中で私が好きなのが楠木正成です。時代のうねりに翻弄されつつもスタンスがぶれず、しかも戦が上手い。皇居外苑には楠木正成の銅像があります。でも太平記を題材にした歴史小説は少ないんです。司馬遼太郎も南北朝時代は書いてない。と思っていたら、最近読んだ本がとても面白かった。安部龍太郎の「婆娑羅太平記 道誉と正成」。タイトルはちょっとダサいですが。長い太平記を、道誉と正成という「人間」を中心に1冊にまとめた歴史小説です。史実と異なる部分もありますが、大筋は歴史どおり。

佐々木道誉をご存知ですか?一流の武将であり教養人。その粋でひょうひょうとした態度を「ばさら者」と呼んだりします。実際はこの小説ほど正成に近い存在ではなかったと思いますが、その辺は気にせず楽しみました。本を読んで感じたのは、大局観と胆力の大切さ。目先の利害だけに惑わされず、筋の通ったシナリオを大きく構想する。そして一旦決めたら腹をくくる。それが胆力です。この構想→胆力が鮮やかだと人間的魅力に溢れるようです。

私見ですが、幕末の例では、胆力があるけど、構想が脆弱なのは近藤勇。胆力があるけど、構想がテクニカルなのは岩倉具視。両方鮮やかな人はあまりいませんね。道誉も正成も胆力がありますが、対照的です。忠義を重んじ、ぶれない正成と、自分らしく軽やかに生きる道誉。どちらも人としてとても魅力的。私たちの仕事でも胆力が必要ですが、環境変化を無視して硬直的に当初方針にこだわると自滅します。このへんが難しい。どうやら、「どのタイミングで腹をくくるか」がまさにキモのようです。まずは大局的な構想力を鍛えたいですね。

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