1. PC印刷の楽譜ってキレイですよね
私も初めてPCで楽譜を作った時は感動したものです。
ところが、実は「一見キレイに見えるけど読みにくい!」
という楽譜も多いのです。
私が作曲修行中の時、オーケストラのような大きな編成を初めて書く人は、
識者用スコアと演奏者用パート譜の両方とも、
「PC楽譜禁止令」が言い渡されました。
理由は、演奏者が読みやすい楽譜を書くためではなく、
手を抜くためにPC楽譜を使っている人が非常に多かったからです!
だから、まずは手書きの譜面を書かせることにより、
「どうしたら演奏者に読みやすく親切な楽譜ができるか」
を学ばせるためだったのでしょう。
そしてこれは学生だけの話ではなく、
実際のレコーディングなどの仕事現場でもしばしば目にします。
2.「手を抜くためにPCの譜面を使う」ってどういうこと?
答え:PCで作曲したものを自動的に楽譜にするだけの人がいる
今は作編曲において、PCを使うことがとても多いです。
音大の作曲学科でクラシックを専攻されてきた方の中には
「楽譜から書き始めた方が早い」という方もいらっしゃいますが、
そういった方でもスケッチ的にPCで簡単に音を出して、
イメージをチェックする方は多いでしょう。
するとその段階でパソコンには曲のデータが入ってることになります。
作曲ソフトには自動的にそれを楽譜にする機能が付いているのですが、
何も考えずそれをただ印刷して持ってくる人が問題なのです。
個人的には、作曲が専門でない人(プロの演奏家が自分で曲を作った場合など)にその傾向が比較的あるかなと思います。
あくまで自分の経験の範囲ですが。
もちろん自分だけで使う楽譜なら全く問題ないのです。
ただ他の方に、演奏者やレコーディングスタッフなどに見せる楽譜となると話は変わります。
3. 具体的に楽譜を見てみましょう
↓これが、楽譜を渡す相手のことを考えていない「手抜きPC譜」です。
「作曲ソフトからただ楽譜化しただけ」の譜面は大体こんな感じです。
恐ろしいことに、これに近いものをスタジオに持ってきてミュージシャンに手渡している人を見たことがあります。 (スタジオミュージシャンはその場で初見で演奏します。)そしてその曲はCDになりました。
↓これを読みやすく直したものがこちらです。
いかがでしょうか?
曲の作者が自分ですので、単純に直すだけでなく、フレーズの解釈、アクセントや強弱などの表現を加えていますが、基本的に同じ内容で読みやすくしたつもりです。
面白いもので、一見乱筆な手書き楽譜に見えても、読みやすいポイントさえ押さえていればコレがまた見やすいのです!
もちろん「最終的に仕上がった演奏が良ければ、多少楽譜が荒くても良いじゃないか。」という意見もあるのかもしれません。
実際それはあるのかもしれませんが、これだけは言えます。
「楽譜を見れば、その人の仕事に取り組む姿勢が分かります。」
4. さいごに
本来、「演奏者が見やすいPC楽譜を作るには、手書き同等かそれ以上の労力がかかることもある」のです。
例えばオーケストラのパート譜であれば、譜めくりをする箇所(右ページ下段)は可能な限り演奏が休みの箇所でないといけない...など。
まだまだお話したいこともあるのですがキリがないですので。
それを単に手抜きの手段としてPC印刷を使っては、演奏者に大変失礼...というお話でした。
最後になりますが、自分は楽譜出版の人間ではなく、
作編曲家の観点からの意見ということをお伝えしておきます。
(出版の場合、ページ数の都合で無理やり詰め込んだ楽譜を作らなくてはいけない...というケースもあり得るでしょう。)
最後までお読み頂きありがとうございました。
音のコンシェルジュ♪