「絆の証―自動車整備工が見た、命と優しさの絶妙な融合 パート11」

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義男は今日も目一杯働いた。
午前中に二台の車検を受け午後からはエンジンオーバーホールの作業をこなした。
今日は残業無しだ。
着替えて足早に会社を出た。
いつものように、美容室の前を通って駐車場に向かうのだが、美容室の入り口の大きな一枚ガラスのドアが半開きになっている。
其処から経営者だろう年配の女性が半身を出して、猫のように手首をくるっと内側に曲げてクイクイと義男を招いている。

義男:はっ!?
女性経営者愛子:こんにちは。
義男:あ!はい、こんにちは。
愛子:ちょっと中に入らない?
義男:えっ!?
愛子:貴方、隣の工場の人でしょう⤴。
義男:はいそうですが。
愛子:良かったら中に入って呉れないかな。
と半強制的な迫力で迫るから勢いに押されて義男は中に入った。
室内に入るとエアコンの冷たい風が全身を包んだ。
化粧品やリンス、コロン等のとても良い匂いがする。
別世界に来たような心地よさだ。

工場のオイル臭い職場とは全然違う。
目の前に、かずちゃんが立っていた。

仕事用のエプロンを首から掛けている。
下地の濃いグリーンにピンクの曲線ラインが左肩から右ひざの方へ幅を変えながら川の流れの様に優雅に入っているデザインだ。

義男の心臓がドキンと脈を打った。
愛子:貴方もし彼女が居なかったら、このかずちゃんと遊んでやってくれないかと思ってね。突然声を掛けて御免なさいね。
かずちゃんは田舎の美容学校を出てこの都会へ来てから仕事ばっかりでさ、誰も友達も居ないから楽しくないのよ、今21歳よ。

義男は、かずちゃんの顔を見た。かずちゃんは、はにかむように少し上目使いに、にっこりとほほ笑んでいた。
愛子:そうだ貴方の名まえは何と言うの?
義男;僕 義男です、田端義男と言います 23歳です。
愛子はかずちゃんに自分で名前を言いなさいよと言った。
かずちゃん:私、山野和と言います。
義男は苗字だけに見えると思ったが黙っていた。
義男:僕は彼女は居ないので良かったら是非一緒に遊びたいです。
かずちゃん:美容室は月曜日が休みですけど今月は日曜休みが11日に在るのでその時に義男さんと休みが合うと思います。
義男:11日の日曜日は三日後ですね。多分天気が良いと思うからドライブはどうですか朝10頃に迎えに来ます。
かずちゃん:嬉しいです。待っています。

義男は美容室を後にした。もう天にも昇る気持ちだった。
あの憧れのかずちゃん、毎日ガラスの入り口ドア越しにしか見る事ができなかった、かずちゃんと三日後にデートのドライブができる。
しかも新車のカローラスポーツハイブリッド車でだ。助手席のシートをまじまじと見た。ここに三日後にかずちゃんが座るのだ、そう思うと胸が熱くなった。
この急転直下の出来事は、やっぱりナミちゃんが関わっているなと思った。
ナミちゃん有難うと思うのだった。

翌日いつものように仕事が終わって美容室の前を通ると、本日臨時休業の札がドアに掛かって店は閉まっていた。
義男は訝りながら見ていると、いきなりドアが開いて中から、かずちゃんが出て来た。
義男:臨時休業ってどうしたの?
かずちゃん:ママが手首を捻挫してしまって酷いから今日は臨時休業にしたの。
義男:そうなんだ。そうだ、もし良かったら今から俺の家に遊びに来ませんか?
かずちゃんは少し戸惑ったが、意を決したように言った。
ちょっとだけならいいわよ。
と言う事で二人は義男のカローラスポーツハイブリッド車に乗って義男の家に向かったのでした。

義男とかずちゃんから一言
最後まで読んでくれて有難う。
  パート1から読んでね(^^♪

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