「職場活性化」を実現するために。その3

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大手企業であっても中小企業であっても、職場活性化というキーワードは、経営トップの頭の中に常に重みをもって存在しているものです。
通常のOJTなどで職場活性化が、うまく行われているならば問題はないのですが、そうでない場合、何もしないでいれば、やがて職場に閉塞感が漂い始め業務パフォーマンスも落ちてきてしまいます。

そうなると、職場からの閉塞感が会社全体に広がり、やがて全社的な活性化対策や意識改革が求められてくることになります。その結果、会社として「意識改革をやろう」「組織改革を実施しよう」ということにつながっていくものです。

実際、私もサラリーマン時代に、幾度となく「意識改革」や「組織改革」の真っただ中を経験して参りました。今は、立ち位置が変わりましたが、いつも感じるのは「される側」も「行う側」も全社的な活動となると大変厳しい取組みになっていくことが多いということです。

もし、あなたが「経営者」や「社内推進リーダー」、「支援コンサルタント」であったとしたら、どのように対処されていくでしょうか。これは本当に重要で且つ難しい取組みであることから一緒に考えて参りたいと思います。

 最初に、このような全社的な「意識改革」や「組織改革」の、「声」そのものがどこから挙がってきたものなのかということも、その後の活動を大きく左右するものです。従業員からすれば、社長からの「指示」なのか、単なる総務人事部門からの「お願い」なのかが良くわからないからです。本気度や深刻度が見えないからです。気持ちのスタンスも変わってきます。

それが、ある日突然、会社から提示されたものであるならば、従業員は「意識改革される側」、「組織改革される側」になります。この時点で改革活動を成功させるには、かなりの困難が予想されることになってしまうものです。ではどうしたら混乱が少なくて受け入れられるのでしょうか。

それはしっかりと準備を行っておくということです。従業員に提示するまでの事前準備活動こそが、その後の活動の成り行きに大きく影響してしまうからです。社内展開前の準備期間を用意し十分な対策をすべきであると思います。

このような全社的な取組み活動が、なかなか上手くいかないことの原因としてよくあるのは、「意識改革」を全社員へ「伝達」することです。これが簡単なようで難しいのです。

当然ではありますが、コミュニケーションは人数が増えるほど会話する数も多くなり複雑になっていきます。例えば、2人であればたった1回の会話で完了できる人間関係が、3人だと4回になり、4人だと11回と膨れ上がっていきます。

職場の人数からすれば、こんなものではないでしょう。できるだけ効率よく、しかも全ての従業員に行う理由と意味を正確に理解してもらわなければなりません。この時に、いかに「伝達」していくことが容易ではないということがはっきりと分かるものです。

通常、意識改革の推進プロセスは、経営トップからの上意下達式のピラミッド方式で取り組まれることが多いものです。効率が良いからです。

ピラミッドの上部から下部に向かって「伝達」していくことで、各部署の部署長が自部門向けにどのような効果があるのかの説明を含めながら、職場毎に伝達することができるので非常に有効であり効率的です。

しかし一方で、効率的であるということは、それに対するデメリットも存在するということを意味しています。下部組織へ伝達していく階層が増えれば増えるほど、伝達したい内容や真意、場合によっては意味合いに変化が生じやすいものです。

特に、「意識改革」活動における肝心の行う理由や意味、そして目的までが下層に伝わるたびに希薄化されていくことも大いに懸念されます。もしかすると、部下に説明する上司によっては、気持ち的にこの改革に全面的に賛成していないこともあり得るでしょう。すると、経営トップからの「意志」が100%そのままの思いで末端の従業員まで伝わらなくなります。

このような具体的な社内展開に入る前に、事前対策に十分エネルギーを注ぐべきであると考えます。全従業員にとって非常に大きく影響することを、いきなり展開するのはうまいやり方とは言えません。

では、どうすればこのようなことを防ぐことができるのでしょうか。

それには、まず伝える内容が途中で変化や減衰されないように工夫することが肝要です。経営トップ自身から、「なぜ今、全社的な意識改革が必要なのか」を、トップ自身の言葉でわかりやすく簡潔にまとめ、その資料を元にしながら各部署で説明していくのです。

このような「意識改革」活動においては、当然ですが、経営トップが「本気度」を見せないかぎり、建前はともかく本音では誰もついてきません。新しいことをやり始めるのは、それだけ大変だと皆わかっているからです。社長が本気でないと気づくと活動が形骸化してしまいます。そして中途半端な社内展開に留まってしまいます。

さらに、いつしか、年度が変わったり、役員が変わったりすると、自然に誰も言い出さなくなってしまうこともよく見受けられることです。こうして企業によっては、中期経営計画が更新される度に、新しいキーワードとともに、社内における「意識改革」を何度も目にするようになってくるのです。

最も肝心な過程は、従業員全員に会社の「現状」を理解してもらうことです。なぜなら、従業員のほとんどは自分の与えられた仕事を一生懸命に行っている毎日であり、会社全体の動向についてはそれほど注視していないからです。

それは経営者の仕事だからです。とは言っても、経営者1人では何もできないのも事実です。従業員全員の力を借りなければ進めることができません。

従って、事前段階で十分に説明し納得してもらうことが大切です。仮に一部の人たちであっても意識改革とその活動に対する必要性を感じていないという中では火種を抱えてスタートすることになってしまいます。小さな火種がもしかすると大きな火災に発展するやもしれません。そうすれば、せっかくの全社的活動も意味がなくなってしまいます。

どんな会社でも必ず、賛同する人とそうでない人が出てくるものです。冷めている人もいます。会社が何か新しいことをやろうとすると、とかく推進賛成派と現状維持派に分かれてしまうこともよくあるものです。中には、お手並み拝見的なスタンスをとるような普段優秀な人もいるものです。

人はもともと慣れ親しんだ行動や現状を維持したいと思うものです。新しい行動様式に変えるには、大変な努力を必要とするからです。だから現状を維持しようという抵抗力が出てきやすいのです。中長期的には、会社や従業員にとって大きなメリットをもたらすような意識改革活動であっても、短期的にはデメリットを被る人たちも大勢発生するからです。

従って、賛同してこなさそうな層に対してこそ事前に策を講じておくことが大切になってきます。時間を取れるならば、全社的に改革活動をスタートする前に、従業員全員が会社の現状を正確に「共有」する時間を十分に取ることです。

それぞれの部署ごとに、「今どんな問題があるのか」、「このままだとどうなるのか」、「どう変わればいいのか」等を、全員参加のもとで話し合う場を持つことです。この「大変な時間」こそが、全社的な「意識改革」活動には最も重要な意味を持つからです。

もちろん、最初のうちは「愚痴」の応酬になります。それで良いのです。散々、愚痴をお互いに言い合い、腹にあることを全部吐き出しあうことが、まず一番根底に必要なプロセスです。推進リーダーは、じっと耐え一人ひとりが述べる意見を黙って最後まで徹底的に聞きとおすことが大切です。

そんな大変な活動を経て、やがて全員で正確に「共有」できたところで、「将来のために大変だけど一人ひとりが変わる努力をしよう」と進めていきます。そしてこの時、全従業員が必ず「参画する」ということが重要なポイントになります。

誰も人が決めたことをやらされるのは気が進まないものです。でも、自分も発言することがあったり、他の人のやり取りを聞いたり、その「場」に居たという事実によって、自分も決めた1人であるという「感覚」を持つことができるからです。人は自分が決めたことであれば嫌なことであっても行動を起こすようになるからです。

人はこれまで慣れ親しんだことを変えたいとは思わないものです。私も嫌です。でも「変わらないことのデメリット」のほうが、ずっと深刻な影響を及ぼすということを、共に考えていく姿勢のなかで、皆で「共有」することができれば、全社的な「意識改革」は成功に向かって走り出した、ということが言えると思います。



ご参考:最後に手前みそになって大変恐縮ですが職場活性化を成功させ低迷店舗を「トップ3」に大変身させた経緯が拙著「うなずき力」(Nana出版、鈴木誠一郎)に書いてございます。 

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