2020年、YouTubeで競争戦略が変化しているのかもしれない(1)

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ビジネス・マーケティング
はじめに
私は、これからYouTubeマーケティングとその基になる競争戦略について書こうと思います。ここで、かんたんに言うと、マーケティングとは、告知する仕組み、競争戦略とは、文字通り、その告知をすすめる作戦みたいなものです。ここでは、広くYouTube動画で、商品を広める戦略という意味で使います。

ほんらい競争戦略は、冷徹なものです。戦略をバラバラにすれば、最後のパーツは、数式で表される、とも言われています。これは、古代中国の孫子の時代から、その時代、時代に渡って引き継がれています。もともとは、孫子の時代に国の盛衰を決定した戦争を勝利に導く作戦考察に基づいています。そして、数式とは、具体的にはまさに死者数を表します。太古の昔から、大きくは、国家戦略から、小さくは家族関係に至るまで、人間あるところに戦略は存在します。

孫子画像.jpg

YouTubeは、現在世界60億人の視聴者がそれぞれの目的と意図を持って動画をアップしたり、視聴したりしています。まさに冷酷なテロリストから愛情溢れるお母さんまで、YouTubeを視聴したり、動画で何かを表現しようとしているのです。

私が、孫子の画像と、これから人気が爆発的に広がる"NiziU"のYouTube共有動画を上げたか、みなさんわかるでしょうか?

それは、古くから続く戦略を、最新の優れたマーケティング事例で考察しようと思っているからです。NiziUを選抜したNiziプロジェクトは、現代のマーケティング戦略としてみても、最新かつ最高のマーケティング戦略だと私は、考えています。

その考察から、戦略コア(戦略の基になる価値とい意味で使います)が変わってきているかもしれない、と主張しているのです。

新しい戦略価値とは
私は、Niziプロジェクトをつぶさに観察して、一つの仮説を発見しました。

それは、”女性性のマーケティング”です。言い換えれば、それは、競争から協調や共有、独立した女性美を通じた個性の尊重、というマーケティングの戦略価値への変換です

実は、孫子の兵法でも「最上の策は、戦わず(戦争)して、勝つ(謀略)ことだ」と2,000年以上前にも、すでに述べられているのです。しかし、その根本と対象は、国家と戦争、そして基本的には、男の価値観の衝突でしかありません。

しかし、現代の先進国では、社会が安定し、平和が実現され、女性が歴史上最も社会参画できるようになりました。その女性がこれからの時代の戦略に主要な影響を及ぼすのは、当然です。

そうした社会では、相手を負かす、殺すといったゼロサムな男の発想では、限界が来ているのではないか、私はそう思うのです。これからのマーケティングには、女性性の価値尊重が欠かせません。

もちろん、今までも女性で活躍する人たちはいました。しかし、そうした女性たちも、基本は男性の価値の中で上手くやる、もしくは同様の発想で相手を打ち負かしてきた女性達です。例えば、東京都知事は女性ですが、女性らしい発想や行動というよりは、発想や行動自体は、男のそれと変わりません。

そもそも今までのマーケティング戦略は、相手を出し抜く、打ち負かす、という男の発想に重点が置かれていました。特にこの20~30年くらいは、そうです。相手の弱みを突き、自分の強い点を強調するという戦略です。

比較広告というのが、あります。

古くは、アップルの1984年のTVコマーシャルです。オーソン・ウエルズの1984になぞらえて、人々を支配する、悪の枢軸、IBMコンピューターから、人々解放する自由の戦士にAppleを見立てたのです。もっと直接的に商品を比較して、例えばペプシコーラと無印コーラ(明らかにコカコーラ)を飲み比べ、競合商品をこき下ろす、コマーシャルもあります。

そして、今世界がどうなっているか?実際は、悲しいことに分断が深まっています。そしてなぜ私は、Niziプロジェクトに感銘を受けて、戦略の価値の変化が起きているのではないか、とまで言うのか。このプロジェクトを少し説明しましょう。

競争下の協調と共栄による価値創造
Niziプロジェクトは、韓国JYPのアイドル・オーディション番組です。K-Popの歌手兼名プロデューサーである、パク・ジニョン(JYパーク)氏が外国籍アイドルを発掘・選抜し、ガールズ・グループをグローバル・デビューさせるという企画です。しかし、選抜メンバーは、すべて日本(系)の少女です。こう書くだけで、嫌な感情をいだく方も大勢いらっしゃる、と思います。これは韓国でも同様か、それ以上でしょう。なぜなら日本と韓国は、この10年、厳しい状況にあるからです。

しかし、Niziプロジェクトをご覧になってみてください。本当にすばらしいコンテンツだと私は思います。この番組で、パク・ジニョン氏(JY パーク)氏は、どれだけ多くの人(特に若い女の子)を励ましたでしょう。このオーディション(競争)番組を通じて、悩み苦しむ、多くの少女に、勇気と元気と希望を伝え、励ましている、と私は思うのです。

私自身も、このプロジェクトに励まされ、学び、元気にしてもらえました。ちなみに私は音楽は好きですが、アイドルに興味はまったくありませんでした。AKB48メンバーの名前すら言えません。K-Popなどは、避けてきました。それでも、あっという間にNiziUメンバーに、というかパク・ジニョン氏(J.Yパーク)に心を奪われました。今では、TWICEをはじめとするK-Popの恐るべきプロフェショナリズムに感銘すら覚えます。まさにJYPは、韓国のアップル・コンピューターだと私は思います。

そのNiziプロジェクトが、上に示した"Make you Happy"というプレ・デビュー曲で結実しています。すでに本デビュー前から、爆発的な人気が見えています。一見して、ただ明るく楽しく、かわいく少女たちが歌って踊る楽曲のように見えますが、彼女たちがこのデビュー曲にたどり着くまで、厳しい選抜の中で、どれだけ努力と涙したか、課題を克服し、励まし合って、ここにたどり着いたかが、Niziプロジェクトで描かれているからです。その物語性がこの曲にすでに付与されています。1年前まで、彼女たちの多くは、Kpopに憧れるダンス好きの中高生でした。それがアイドルになりたい、という一心で参加したオーディションをくぐりぬ抜け、デビューを果たします。その彼女たちが、このデビュー曲を通じて、”何か”を表現しているのです。

マーケティング的に言うと、すでに商品であるNiziUというアイドル・コンテンツのブランド・ストーリー(物語)が語られているのです。その物語は、七色の虹のように多彩で、必ず誰かに当てはまる普遍性をもっています。誰かを蹴落としたり、優秀さを誇張したり、欺いたり、男や権威に媚びる、今までのアイドル商品ではありません。ここに私が感じる”新しさ”があります。

彼女たちも、単にダンスが好き、歌が好き、アイドルになって注目されたい、そんな思いからオーディションに参加し、プロジェクトを通じて、やがてNiziUが何を目指そうとしているのか、を理解していきます。そう、この日本の少女達は、男に媚びる日本のアイドルではなく、鍛え抜かれたプロフェショナルなダンスと歌で表現する、K-Popグループに成長していくのです。

まとめ
番組の最初に、パク・ジニョン氏が、「私は、あなたたち(アイドル)を通じて、今厳しい状況にある世の中に、良い影響を与えたい」と語っていました。何よりも彼の人柄がすばらしい。そして驚くべき知性を持ち合わせている韓国人プロデューサーです。成功していても、私は絶対好きになれない日本のプロデューサーとはまったく異なります。なぜならば彼らに、アイドルが伝えるべき誠実さを感じないからです。

本当に過酷で厳しい、審査と選抜(競争)の中で、少女たちは、お互いを高め、健気に助け合い、そして驚くべき成長を遂げていきます。それが偽りではなくて、仲間の成長に拍手し、選抜から漏れる仲間に、自分のこととのように涙します。その結果、競争だけでは得られない、何よりもすばらしい物語(コンテンツ)が生み出されていく。

これが今までの競争優位の時代であれば、心から感動するシーンは撮れなかったはずです。そもそも競争のみからは、誠実さや愛は育ちません。けれども、オーでションを通じて、共有と協調と愛情が、日本の少女たちの中に見られたこと、そのことに私は素直に感動したのです。そして何よりも、リードするパク・ジニョン氏のフェアで、愛ある対応が感動を高めていました。これでは、応援しないわけにはいきません。心からコンテンツを楽しむことができました。

こうした一連の映像が、単なる作り物か、単なる台詞か、本当の思いなのかは、番組を観れば、少しづつわかります。少女たちもプロジェクトを通じて、驚くべき成長を遂げ、変貌していきます。アイドルに無縁な私ですら、Niziプロジェクトに影響を受け、この文章を書いています。



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