資本金の意義

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コロナ禍で減資に踏み切る上場企業が増加しているようです。ほぼ確実に課税回避が目的です。資本金が1億円を超えると、繰越欠損金に欠損金の50%という上限が付され、課税所得の多寡にかかわらず資本金の0.5%の法人事業税が課される(外形標準課税と言われます)ことから、減資によってこれら税制上の「デメリット」排除を狙っています。
(日本経済新聞2021年3月7日朝刊総合5面より)

いうまでもなく資本金は課税基準のために設定されるものではなく、債権者保護を目的として設定されていて、税制はあくまでそれを参照しているに過ぎません。ところが、当初の目的がすり替わって、税制を目的として設定されてしまうようです。
コロナ禍の減資を支持する方からは、そもそも、資本金が債権者保護を目的としているという考え方が実態と乖離しており、それがいくらであろうと売上の規模や収益力は変わらず、債権者保護への影響はないとの声を聞きます。
実際、米国会社法では資本金に関して極めて柔軟な規定になっています。ところが、だからといって米国が債権者保護を軽視している訳では決してありません。分厚い融資契約には山のようにコベナンツ(義務や禁止事項を定義した条項)が盛り込まれ、債権者が守られます。コロナ禍の減資をするような状況では、コベナンツのいずれかに引っかかるので、融資は期限にかかわらず返済を求められることになるでしょう。
間接金融主体の日本では銀行の立場が強く、銀行の判断で融資返済を求めることができます。銀行と企業との密接なリレーションシップを前提として、融資返済の判断基準は極めて曖昧にされています。減資を余儀なくされる状況で、果たして銀行が融資継続を快く認めるのか甚だ疑問です。また、その後の増資において、収益回復シナリオを大きく割り引かれるリスクがあります。
資本金の目的を半ば無視した選択の代償は小さくないと思います。

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