No,102 カルガモ親子の引っ越し、“手伝い”は「平和の証し」?

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カルガモ親子の引っ越し、“手伝い”は「平和の証し」? 「人間のエゴ」? 賛否の声をまとめてみた



 動物愛護週間(9月20~同26日)を中心に、秋はペットや野生動物のことを考える行事が各地で開かれます。


そんな野生動物の一つ、カルガモの親子は毎年春から夏にかけて引っ越しをしますが、先頭に立って歩く母ガモと、その後ろを数羽の子ガモがよちよちとついて歩く様子はかわいらしく、テレビやSNSでよく取り上げられています。

 カルガモは、新たな餌場を求めて引っ越しをする習性があり、その危険に満ちた小さな冒険は、思わず応援したい気持ちにさせます。
道路を渡るカルガモ親子を警察官が誘導したり、どこかに落ちてしまった子ガモを救助するために消防隊が出動したりすることもありますが、野生動物の行動を手助けする人間の試みを好意的に捉える人が多い一方、そうした風潮に反対する声も少数ながらあるようです。
賛否両論をまとめてみました。




「日本が平和な証拠」
「カルガモ親子の引っ越しは、見ていて癒やされます。
またそれを守ろうとする警察や、それをニュースが取り上げて視聴者が喜ぶ様子…。
つまり、カルガモ親子に関する一連のこと、全てがほほ笑ましいです。胸が痛くなるようなニュースや憤慨させられるニュースが多い中、カルガモ親子の引っ越しのようなニュースは貴重だと感じます。




また、カルガモ親子の引っ越しに警察や消防が出動できて、それがニュースになるのは日本が平和な証拠です。
素晴らしいことだと思います」(50代女性)


 彼女は、「カルガモ親子の引っ越し」自体の愛らしさにとどまらず、それを多くの人が共有できることに喜びを感じているようです。
「『野生の動物に手を貸すのはよくないのではないか』という意見を耳にします。実際、サバンナで野生動物の観測を行う学者は、思い入れのある個体が危機にひんした際、心を痛めながらも手を貸さずに観測者に徹します。
サバンナにある自然のおきてを、学者が尊重しているからです。




しかしカルガモ親子はサバンナの野生動物と違い、人間の生活圏に極めて近いところにいて、引っ越しなどの際に人間の生活圏に入ってきます。
そのため、完全な野生動物かというと、そうとも言い切れない微妙な存在です。
また、親子の引っ越しで苦難となるのは、多くの場合人間が造った人工物です。
人間が造り上げた障害につまずくカルガモ親子に、人間が手を差し伸べてもいいのではないかと思います」(40代男性)



「野生動物とは」という定義を今一度考えた上で、カルガモ親子への手助けを容認する考え方です。
道路を渡るカルガモ親子の姿はいかにも「頑張れ」と応援したくなるものですが、それは、カルガモ親子が挑んでいるのが人工物だから特にそういう気にさせられる、という部分があるのかもしれません。
「カモ肉、食べるのに」


 一方、反対意見にはどのようなものがあるのでしょうか。
「ひと言でいって、違和感があります。
確かにカルガモ親子の引っ越しはかわいいですが、カルガモ親子が『かわいい』というだけで手厚くサポートをされる一方で、他の害獣がいとも簡単に駆除される現実や、カルガモ親子を『かわいい』と思った翌日にカモ肉を食べて『おいしい』と喜ぶ私たちには、人間のエゴが表れているように思えてしまいます。
カルガモ親子の引っ越しを見るたびに、『人間って自分に都合のいいようにダブルスタンダードをうまく使いこなしているのだな』という気がします」(20代女性)




 一見かわいいカルガモ親子の引っ越しも、このように突っ込んで考えていくと、まだまだ考えるべきことが残されている難しいテーマになっていきます。この人の言葉を借りるなら“人間のエゴ”を、「人間に許すか許さないか」といったテーマが次なる議論として想定されるでしょう。




「自治体やケースによって対応がさまざま、というかバラバラなのが気になります。
カルガモ親子や、それに類する動物が危ない目にあっている際に警察や自治体などに届けても、『手を貸しません』と答えられる場合があるからです。助けてもらえるカルガモ親子と、手を差し伸べてもらえないカルガモ親子が両方いる現実にやきもきしてしまいます。
いかにも『人間の気分で助けている』のが透けて見えるからです。




そうした際の対応について法律を定めて一律にしておくか、国や自治体が基本方針を明確にしておくか、あるいはいっそ『手を貸さない』と一貫してくれれば、まだスッキリすると思います」(30代男性)




 こうした反対意見がある中で、それらを踏まえた上で「手助けに賛成」と考える人もいます。
「僕自身も確かに違和感を覚えるのですが、仮にカルガモ親子が人間の生活圏で事故に遭ったとしたら、おそらくSNSを発端に各所で取り上げられ、それを見た多くの人が胸を痛めると思います。
『野生動物が勝手に事故に遭っただけ。自然のおきてだから仕方ない』と思える人はあまりいないように感じます。
ですので、手助けするケースにムラはありつつも、『手助けできる時は手助けする』という現状が妥当かと思います」(30代男性)



 賛否ある「カルガモ親子の引っ越しの手助け」ですが、ニュースを見て、今まで通り直感的に受け止めるのもいいですし、こうした賛否の議論をいったん把握した上で、改めて眺めるのもいいと思います。


 否定派の人も、決してカルガモ親子の不幸を願っているわけではありません。
かわいい存在を愛(め)でたい気持ちは、賛成・否定のどちらも関係なく、両者に共通した、人としての豊かな性質です。
カルガモ親子の引っ越しの行方を案じつつ、人としてそれにどういう姿勢で接するか…というのが、賛否の分かれ目のようです。
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