天狗のうちわ

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コラム
小さい頃は、この葉っぱをよく見たものだ。
お散歩に行っても、近所の家の庭に、この葉は植えられていて
魔除けの意味もあると聞いたことがある。
「やつで」と知ったのは小学校に入ってから。
青々と茂り艶っとした葉は、子供にとって最高のおもちゃ
出来るだけ大きくて、形の良いものを2枚選び
誰にも見られないように、そっと葉を摘む
天狗のうちわを両手に持ち、友達が集まる森の中へ
両手をバタバタさせながら、「いつか空を飛べるかも」
と子供心に夢は膨らむばかり。
みんなが集まると、どの葉が一番かっこいいか見せ合いっこする。

「お前のは、虫が食ってるからダメだな」
リーダー的な男の子がそういうと
「なんでだよ!お前のも葉の先が曲がってるじゃん」
くすくす笑いながら、男の子たちのやり取りを見る
一番かっこいい葉っぱを持ってきた子には
シロツメグサで作った腕章を与えられる。
腕章を貰った子は、その日の王様なのだ。

みんなの気持ちとは裏腹に、私は本当に空が飛べないものかと
バタバタと両手であおぐ
少し高い所からも飛んでみる

そのうち、かくれんぼが始まった。
「もういいかい。」
「ま~だだよ。」
私は急いで、古い切り株の穴に潜り込み膝を抱えて座る。
私は空を飛んでいた、天狗のうちわを両手に持って
ひゅっと一振りすれば、天高く
ゆっくりと振れば、旋回しながらみんなが遊んでいるのが見える
なんだ、やっぱり飛べるんだ。
ワクワクしながら、みんなが気付かないか呼びかけてみる
「ここにいるよ」
必死に探している鬼役の子
「ふふふ、まさか空の上だなんて思わないんだろうね」
日が陰るころ、みんなはそわそわして帰っていった。
「ちょっとまってよー!私はここだよ?」
そう言っても聞こえないみたいだ。
降りなきゃ・・・
そう思った途端、ふわっと抱き上げられた
お父さんだ。。
「まったく・・心配ばかりかけて。こんな所で寝てはいけないよ。」
夢だったんだ・・
「ごめんなさい」そう言った私に、お父さんは笑顔で応えてくれた。
少女とヤツデ.jpg






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