高校生の時、自宅から最寄り駅まで自転車を利用していました。
その日も1分だって長く寝ていたい私は、駅への道を急いでいました。
そのとき、目の前をなにかがころころと転がっていました。
「あー西部劇で観たやつだぁ」と半分寝ぼけた私は思いました。
私が子どもの頃は土曜日の午後二時過ぎからいろいろな映画が吹き替えで放映されていて、それを観るのが土曜の午後の楽しみでした。
今と違って午前中は学校へ行っていて、家に帰ってお昼を食べて映画の放送を観るという習慣です。
ジャンル問わず放映されていたので、それでずいぶんとジャンル開拓することができました。
「キャリー」「THE FOG」などのホラー映画、西部劇、ラブロマンスなどたくさん観ました。
西部劇につきものなのが、道を転がるアレです。
枯れ草などが風で絡まったものだそうですが「タンブルウィード」という名前を知るのは後のことです。
こんなところにおかしいな?と思いました。
だって商店街の道なのです。
枯れ草が絡まってタンブルウィードになるほど、草はありませんでした。
「あー?」と思ってよく見ると、目が合うではありませんか。
びっくりしてよく視るとそれは人の生首でした。
もちろん本物の生首ではありません。
そんなものがニヤニヤ笑いながら転がっていたら、目の前の警察署が大騒動になってしまいます。
中年男性の霊体がなぜか首だけで転がっていたのです。
なんだか痴漢にあってしまったあとの嫌な気分になりながら、通り過ぎました。
今となっては男の意図も理由もわかりませんが、ある種のイタズラのようなものだと思っています。
あれから30年以上たつのですが、今でもあの男はタンブルウィードのふりをしながら視える人を驚かしてニヤニヤしているかもしれません。