「情報化社会と監視社会」岡山大学法学部後期(夜間)2018年
(1)問題
問題1次の文章を読んで,以下の問いに答えなさい。
(1)著者は,フーコーの監視社会の概念には,下線部「いろいろ手直しが必要」であると述べている。著者によると,近年の議論ではどのように変更されているか,説明しなさい。(300字以内)
(2)現代の情報化社会は,パノプティコンがいっそう拡張・浸透した監視社会であるのだろうか。情報化社会がもたらす安心・安全や利便性にも留意しながら,あなたの考えを述べなさい。(600字以内)
① …ここであらためて「監視社会」の問題を考えてみたいと思います。「監視社会」という言葉を,小説の世界ではなく,哲学において鮮明に打ち出したのは,フランスの哲学者ミシェル・フーコー『監獄の誕生-監視と処罰』(1974年)です。フーコーはこの書で,イギリスの功利主義哲学者ジェレミー・ベンサムが考案した監獄・パノプティコン(一望監視施設)にもとづいて,近代社会のあり方をパノプティコン社会と見なしたのです。このパノプティコンを,フーコーは次のように説明しています。
(パノプティコンは)塔のてっぺんからそれを囲んで円形に配置された囚人用監房を監視するといった建築プランで,逆光になっているので相手に見られることなく。中央から一切の状況や動きを監視できるというものです。権力は姿を消し,二度と姿を現さないが,存在はしている。たった一つの視線が無数の複眼になったも同然で,そこに権力が拡散してしまっているわけです――現代の,それも「モデル」と称されている最新の刑務所でさえ,多くはこの原理の上に成り立っています。
② フーコーによれば,刑務所だけでなく,近代社会全体が
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