転生悪役令嬢ボイスドラマ台本

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メモリアル・アワード

リリア・ファンルージュ
悪役令嬢。公爵家の娘。
前世の姿は、肝っ玉女子高生早川彩音。

ユスタス・クラウド
侯爵家の1人息子。王子の幼馴染、側近。
早川彩音の幼馴染、倉本悠真にどことなく似ている。

アーサー・マリュウス
ソレイユ公国第一王子。リリアの許嫁。マリーのことが好き。

マリー・トラヴィス
心優しい男爵家の娘。本来のヒロイン。

ルルテア・オーサード
伯爵の娘。内心リリアを疎ましく思っている。

N・・・ナレーション

悠真「あーやね!」
彩音「誰かと思えば悠真じゃない!アンタいったい何してるのよ、こんなとこで」
悠真「僕は今、学校の帰りだよ」
彩音「学校ってまた剣道部の練習?試合前だからって、土曜なのによくやるねぇ。アンタ泣き虫のクセに大丈夫なの?」
悠真「これでも将来有望だって言われてるんだぜ。それに泣き虫だったのは、幼稚園の頃の話だろ!」
彩音「悠真ったら、高校生になってもウチと口喧嘩で1回も勝ったことないクセによく言うよね!アンタったら、弱虫のクセに変に正義感が強くてすぐケンカするんだから!小学校の時に大勢のいじめっ子と取っ組み合いして、アンタの怪我を手当したこと忘れてないからね!ウチがついてないと、何するかわかんないんだから!」
悠真「はいはい、まったく彩音は母さんみたいだな!口うるさくてかなわないよ」
彩音「誰のせいだと思ってんのよ!ウチにばっか心配かけてさ、まったくしょうがないったら」
悠真「ところで彩音はどこに行ってたの?また本屋?」
彩音「そう、今日はウチの好きなライトノベル、『メモリアルアワード』の発売日だからね!この結末を見るまでは死ねないよ!ウチが読んだ後で良ければ貸してあげてもいいけど?」
悠真「いや、僕はいいや。今は剣道に夢中だから、本を読む時間は稽古に当てたいんだ。ね、彩音。この後時間あったら、駅前のカフェでお茶でもしてかない?今、仮面ライダーコラボしてるんだ」
彩音「お誘いありがたいけど、ウチはさっさと家に帰って『メモリアルアワード』読まなきゃならないんだよね。せっかくだけど、また今度ね!」
悠真「あっ、待てよ彩音ったら!そんなにこの本が大事かよ!」
SE(本を奪う音)
彩音「きゃっ!ちょっと悠真、アンタ何すんのよ!」
悠真「悔しかったら、ここまできてこの本取り返してみろよ!」
彩音「悠真!アンタ、ふざけんじゃないよ!返しなさーい!」
悠真「うわ、怒ってる!こえー!ほんとに母さんみてー!」
彩音「アンタとなんか、二度と口聞いてやんないんだからね!」
悠真「ほらほら、追っかけてきてみろよ!」
彩音「悠真!信号、赤!」
悠真「えっ?」
彩音「悠真!危ない!!!」
SE(彩音が悠真を突き飛ばす音)
SE(車の急ブレーキ音)
悠真「彩音!彩音!」
彩音N「悠真・・・何やってんのよ・・・信号無視して道路に飛び出すなんて・・・」
悠真「彩音!彩音!目を開けてくれ!」
彩音N「悠真・・・でも悠真が車に撥ねられなくて良かった・・・アンタの剣道の試合が・・・」
悠真「彩音!彩音!」
彩音N「ああ・・・ウチ・・・悠真にホントは怒ってないよって言わなきゃ・・・謝らなきゃ・・・ウチ・・・悠真のこと・・・」
悠真「彩音!!!」
彩音N「あぁ・・・ウチ・・・死んじゃうんだ・・・『メモリアルアワード』まだ読んでなかったのにな・・・」

***

BGM:王宮っぽい感じの壮大なBGM(ワンフレーズ)
アーサー「皆のものよく聞け!このソレイユ公国第一王子アーサー・マリュウスは、ファンリュージュ家公爵令嬢リリア・ファンリュージュに対し本日をもって正式に婚約破棄を宣言する!」
SE:ザワザワしている人々のざわめき
リリアN「あれ?どこよ、ここ?なんかヨーロッパの王宮みたいな感じで、おとぎ話に出てくる王子様の住んでるようなお屋敷じゃない。ウチ、悠真をかばって車に撥ねられて死んだんじゃないの?何ここ?天国?」
アーサー「どうした?言葉も出ないのか?」
リリアN「あれが王子様かな?なんかえらく怒ってるけど・・・。リリアって人がなんかしたのかしら」
アーサー「リリア!貴様、聞いているのか!?」
SE:床をダンっと踏む音
リリア「ひえっ!」
アーサー「このオレ様が聞いているのかと言っているのだ!」
リリア「えっ?もしかして、この人ウチに話しかけてんの?」
アーサー「なんだそのふざけた言葉遣いは!リリアといえば、貴様以外に誰がいるというのだ!」
リリア「リリア?ウチが?ウチは早川彩音だけど・・・」
リリアN「その時、ウチは全てを思い出した。ウチの前世はごく普通の女子高生、早川彩音。ズケズケものを言いすぎて、みんなからオカンってからかわれてるのが玉にキズ。愛読書『メモリアルアワード』の新刊を買って帰る途中に幼馴染の倉本悠真を庇って車に撥ねられて死んじゃったんだっけ・・・。そして今世は『メモリアルアワード』の悪役令嬢、リリア・ファンルージュとして第二の人生を歩んでるんだった!」
リリア「って、なんでよ!?そんなバカなことある!?」
アーサー「何を一人で騒いでいる、リリア!」
リリアN「そうだ、このいけ好かない王子はアーサー・マリュウス王子。ヒロインのマリー・トラヴィスにメロメロで許嫁のリリアをこっぴどく振る役回りだわ」
ユスタス「アーサー様、その辺になさってください。きっとリリア様も反省なさっているはずです」
リリアN「この人はアーサー王子の側近のユスタス・クラウド!どことなく悠真に似てるなって思ってたキャラだわ」
アーサー「こんな意地の悪い女に手心なんぞくわえんでいい!オレのマリーがこの女に陰でどれだけいじめられていたか、忘れたとは言わせないぞ!」
ユスタス「だからと言って、レディに対してやりすぎです!」
アーサー「こんな陰険な女、いくら罵詈雑言を言ってやったってやりすぎということはないぞ!オレは絶対にこんな女と結婚しないからな!」
リリア「えっ、別にいいけど?」
アーサー「例え貴様が土下座しようが許してやらないからな!オレは絶対にお前と結婚なんて・・・え?」
ユスタス「リ、リリア様、今なんと?」
リリア「別にいいけど、って言ったの」
アーサー「な、なに?ソレイユ公国王妃の座が惜しくないのか?」
ユスタス「リリア様、そんなアッサリ・・・!」
リリア「だって、アーサーはマリーのことが好きなんでしょ?別にいいわよ、マリーと付き合いなさいよ。ウチは王妃なんて、堅苦しいのはガラじゃなくってね」
アーサー「リ、リリア・・・?あれだけ名声と地位に執着するお前が、今日はどうしたんだ?」
ユスタス「リリア様、ヤケにならないでください!」
リリア「別にヤケになってるわけじゃないけど。はいはい、マリーとお幸せにね」
SE:バタンと扉の閉まる音

***

リリア「はー、せいせいした。アーサー王子って女子人気は高いキャラだけど、なんか偉そうでウチ的には気に食わなかったからなー。例え王妃になれたって、あんなのと結婚なんてウチはまっぴらごめんだね!それにしても、ウチ、これからどうしよっかな」
SE:溜息
リリア「悪役令嬢リリアといえば、アーサー王子の許嫁という立場を笠に着て威張ってるイヤな女なのに・・・。ウチってば、よりによってリリアに転生しちゃうなんて。まぁ、アーサー王子との婚約も破棄できたことだし、腐ってないで第二の人生楽しまないとね!」

***

SE:鳥のさえずり
マリー「あわわわわ・・・」(SE:カチャカチャとティーカップとソーサーの鳴る音)
リリア「マリーったら、いつまで震えてんのよ!」
マリー「私、私、リリア様にお呼び出しされるなんて、何か粗相がございましたでしょうか・・・?」
リリア「そ、そんなに怯えないでよ!ウチ、マリーにずいぶんひどいことしてたみたいだからさ。今日は天気もいいしお茶会に誘ってみたってワケ」
マリー「私、私、リリア様にはとても申し訳ないと思っているんです・・・」
リリア「こっちこそ!今までいじめてホントにゴメンね。せめてものお詫びに、うちで1番良い茶葉を持ってきたからさ。ケーキでも食べながら、ゆっくりマリーの話を聞かせてよ!」
SE:ガサガサ道を歩く音
アーサー「リリア、貴様、何をしている!」
リリア「あら、アーサー王子。アンタこそ何してんのよ?」
アーサー「アンタとはなんだ!お前こそ、またマリーをいじめているのか!?」
リリア「いじめてなんかないわよ!ただ一緒にお茶を飲んでただけじゃない!」
アーサー「おおかた、このお茶に毒でも入ってるんだろう!?」
リリア「アンタ何言ってるのよ!そんなことするわけないじゃないの!」
アーサー「言い逃れする気か!?女狐め!お前が考える悪事なんてお見通しだからな!」
リリア「もう、このバカ王子に誰かなんとか言ってやってよ!」
ユスタス「失礼します」
SE:ゴクゴク(お茶を飲む音)
アーサー「ユスタス!なんてことを!なんともないか!?」
ユスタス「毒味には慣れております。アーサー様、ご安心ください。このお茶には不審なものは何も入っておりません」
リリア「まったく!だから何度も言ったじゃないのよ!」
アーサー「ええい、納得いかん!この性悪女が何もしないわけがないだろう!オレをマリーに奪われた腹いせに、何か企んでいるに違いない!」
リリア「ったく・・・何言ってんのよ、この王子様は・・・。こんな威張り散らしてる男の何がいいってのよ。ウチは浮気された罪滅ぼしに慰謝料取ってやったっていいんだからね!」
アーサー「なんだと、つくづく生意気な女だな!」
マリー「い、慰謝料・・・?そ、そんな、リリア様、どうかご勘弁ください!」
リリア「やだ、マリーには何もしないわよ!だってどう考えても悪いのはアーサーでしょう?」
マリー「あ、ありがとうございます・・・!」
アーサー「マリー!大丈夫か?リリアに何かされてないか?」
リリア「アンタ、まだつべこべ言う気?これ以上ジャマする気なら、さっさとどっか行きなさいよ!」
ユスタス「さ、アーサー様。ここはおふたりに任せて僕たちはもう行きましょう」
アーサー「ユスタス!貴様、どちらの味方だ!ユスタス!やめろ!離せー!」(遠ざかる声)
リリア「いきなりやって来て、あっという間に行っちゃった。まったく、なんだったのかしら?」
BGM:シリアスなメロディ
マリー「リリア様、私今までリリア様のことを誤解していたかもしれません」
リリア「えっ?ウチのことを?」
マリー「リリア様は今までいつも私につらく当たっていて何度泣かされたことか・・・でも、最近のリリア様は変わられたような気がします。今日もこうしてお茶会に呼んでくださいました。アーサー様を追い返して下さってありがとうございます」
リリア「あれっ?マリー、アーサーのことが好きだったんじゃなかったの?」
マリー「私の母はトラヴィス男爵の愛人です。母の亡き後、子供のいないトラヴィス家に引き取られましたが、男爵家の方々からはもちろんメイドや執事からもことごとく冷たい扱いを受けてまいりました。アーサー様を誘惑するようにと、父から厳しく申し付けられていたのです」
リリア「やだ、そんなことがあったの!?だからマリーはアーサーと一緒にいたっていうの!?」
マリー「実は私、アーサー様と一緒にいてもあまり楽しくなくて・・・リリア様と婚約破棄なさってから、いつアーサー様に求婚されるのかとビクビクしてるんです・・・」
リリア「そんなのビシッと言ってやればいいじゃない!マリーはあんなやつと結婚しなくたって、いくらでもいい人いるって!マリーが言えないんなら、ウチがアーサーに言ってやったっていいわ!」
マリー「本当ですか、リリア様・・・!」
リリア「ウチに任せてよ、アーサーは確かに乱暴だけど、別に怖がることないって!」
マリー「ありがとうございます、リリア様はアーサー様と婚約破棄なさってから本当に人が変わられたようにお優しくなりました・・・!」
リリア「まーね!仲良くした方が楽しいもんね!これからもよろしくね、マリー!」
SE:キラキラ音(好感度上がる音)

***

SE:ドアの開く音
ユスタス「リリア様、失礼します」
リリア「あら、ユスタス?ウチになんか用?」
ユスタス「昼間はおふたりのお茶会を邪魔してしまい、すみませんでした」
リリア「ユスタスったらあんなこと気にしてるの?別にユスタスには怒ってないわよ!ウチが気に食わなかったのはアーサー王子だけだから!」
ユスタス「ははは、そんなにハッキリと物をおっしゃるのは、この王宮でリリア様だけですよ」
リリア「あらそうなの?みんな何怖がってるのかしら、ただ威張り散らしてるだけのイヤなやつなのにね!」
ユスタス「アーサー様と婚約破棄なさって落ち込んでないか心配だったのですが、僕の杞憂だったようですね」
リリア「やだなぁ、あんなヤツと結婚なんて願い下げよ!ウチはもっと、気の置けないお付き合いのできる男の子の方が好きなのよね」
ユスタス「どなたか、アーサー様の他にいい方がいらっしゃったのですか?」
リリア「うんまぁ、仲のいい友達はいたけど、もう会えなくなっちゃったんだよね」
ユスタス「おや、リリア様に想いを寄せられるとはその方は幸せ者ですね」
リリア「想いを寄せるなんて、そんないいもんじゃないよ!ウチをからかうと、承知しないからね!」
ユスタス「すみません、母さん」
リリア「母さん?」
ユスタス「失敬、リリア様の口調が僕の母にそっくりで」
リリア「母さんみたいってよく言われんのよね!ウチ、まだガラスの10代だってのに!・・・あぁ、この世界には光GENJIなんて無いんだったわ」
ユスタス「王宮の女性はとにかく気取っていますからね。リリア様も以前はとても高飛車でした。でも、最近のリリア様は険が取れてきて、以前よりも話しかけやすくなりました」
リリア「まぁ、昔のウチは酷かったみたいだから・・・。でも、こんなんじゃ公爵令嬢らしくないって言われちゃうかな?」
ユスタス「僕は今のリリア様の方が好きですよ」
リリア「黙んなさい!ウチみたいなおてんば、好きになんかなるわけないでしょーが!」
ユスタス「怒らせちゃったかな。これじゃあ、二度と口を聞いてもらえないかもしれませんね」
BGM:悲しそうな音楽
リリア「そ、そんなこと言わないでよ。本気で怒ってなんかないってば」
ユスタス「リリア様、どうかなさいましたか?」
リリア「私の大切な友達は、喧嘩した後に仲直りできないまま二度と会えなくなってしまったの。ユスタス、冗談でもそんなこと口にしないでちょうだい」
ユスタス「これは失礼いたしました、リリア様。涙を拭いてください」
リリア「やだ、ウチったら、アンタの前で泣く気なんかなかったのに。このこと、マリーやアーサーには絶対秘密にしといてよ?」
ユスタス「僕の母さんも、気丈に見えて心の優しい人でした。もちろんですとも。僕とリリア様だけの秘密にしましょう」
SE:いい感じのロマンチックなメロディ

***

SE:キーンコーンカーンコーン
リリア「えっと、次の授業は魔法学、魔法学・・・魔法学の教科書はっと・・・ん?何かしら、このビンは?」
ルルテラ「あーっ!リリア様の持ってらっしゃるその薬品は、国際A級指定危険薬物のダークネスポワゾンじゃない!」
SE:ザワザワと人々がざわめく音
リリア「えっ?ダークネスポワゾン?いったいぜんたいなんのこと?ウチのカバンの中に知らない間に入ってたんだけど」
ルルテラ「リリア様ってば、しらばっくれる気?それはかつて国をひとつ滅ぼしたと言われている伝説の毒薬じゃないの!所持してるだけでも死刑は間違いナシね!」
リリア「ちょっと何のこと?ウチは何もしてないってば!」
ルルテラ「王立警察!入って来てちょうだい!」
SE:指パッチン
SE:扉の開く音
SE:沢山の足音
王立警察A「王立警察だ!リリア嬢が違法薬物のダークネスポワゾンを密輸しているという通報を受けた!」
王立警察B「ファンリュージュ公爵家令嬢、リリア・ファンリュージュ嬢を逮捕する!」
リリア「えっ・・えーっ!?」
リリアN「ウ、ウチ、もしかして死刑・・・!?誰かにハメられた・・・!?確かにリリアはとんでもない悪役令嬢だから、誰かの恨みを買っててもおかしくない・・・!でも、死刑だなんて・・・!どうしよう・・・!」
ユスタス「お待ちください!」
リリア「ユスタス!?」
ユスタス「リリア様がそんなことなさるはずがございません!」
ルルテラ「あら、ユスタス様。アーサー王子の側近であるあなたが、リリア様を庇うことありませんわ。確かにリリア様はアーサー王子の許嫁、ソレイユ公国次期王妃候補でしたが、それは昔の話。今では婚約破棄されていらっしゃるただの公爵令嬢ですもの」
ユスタス「黙っていてください、ルルテラさん」
王立警察A「ユスタス様。クラウド侯爵家のご嫡男ユスタス様といえども、国際A級指定危険薬物ダークネスポワゾンを所持していたリリア嬢のことは庇いきれませんぞ」
王立警察B「そこを退いてくださいませ。さぁ、リリア嬢。神妙にお縄につきなさい」
ユスタス「いいえ、退きません。リリア様を捕らえるなら、僕を殺してからにして下さい」
SE:ザワザワと人々のざわめき
アーサー「ユスタス!貴様、何を言い出す!」
ユスタス「アーサー様のために誓ったこの命ですが、どうしてリリア様が濡れ衣を着せられる危機を見過ごせましょう」
アーサー「こんな冷血女、捨て置けばいいだろうが!」
ユスタス「お言葉ですが、アーサー様。リリア様は僕にとって大切な人です」
王立警察A「し、しかしユスタス様。万一リリア嬢を取り逃したら、ユスタス様は責任を取れませんぞ」
王立警察B「それこそクラウド家お取り潰しも有り得ますが・・・」
ユスタス「いいでしょう!」
リリア「えっ?」
アーサー「ユスタス!お前、自分が何を言っているのかわかっているのか!」
ユスタス「僕はリリア様を信じています。もしもリリア様に咎があったならば、僕とクラウド家が責任を取りましょう。それで王立警察の面子も立つでしょう」
BGM:シリアスな感じのメロディ

***

SE:波の音。カモメの鳴き声
リリア「ここがマフィアの取引場所ね。ユスタスのおかげで解放されたけど、濡れ衣を着せられたまま引き下がるウチじゃないのよね。ウチをハメようとした不届き者のシッポつかんでやるわ!」
ユスタス「リリア様!」
リリア「こ、この声は・・・」
ユスタス「リリア様!なぜあなたがこんなところに!?」
リリア「ユスタス!アンタこそ、こんなとこで何やってんのよ!?危ないじゃないの!」
ユスタス「それはこっちのセリフです!ここはいわば違法組織のアジト、レディの来るところではありません!」
リリア「えっ?レディって誰よ?そんなおしとやかな女の子がここに来てるっていうの?」
ユスタス「リリア様、あなたのことです!」
リリア「えっ、やだなぁ、ウチのことレディだなんて照れちゃうよ!」
ユスタス「笑ってる場合じゃありません!もうすぐ取引の時刻です!さぁ、こちらへ!」
SE:足音
ルルテラ「ちょっと〜、遅かったじゃないの?アタクシ、待ちくたびれちゃったわよ!」
マフィアA「すみませんね、ルルテラ様。最近は王宮の目が光ってて」
マフィアB「なかなか日取りが決められなくて。ルルテラ様の方も、例の件はうまくいかなかったとか」
ルルテラ「まったくもう、やんなっちゃう!あの意地悪令嬢のリリアがアーサー王子から婚約破棄されて、やーっと痛い目見せてやれるチャンスだったのに!1年の時にアタクシをこっぴどくいじめてくれた恨み、忘れるもんですか!」
マフィアA「ルルテラ様の完璧な計画が邪魔されるなんて、ついてないですな」
ルルテラ「ホントよね!ユスタス様ったら、あんな性悪女のこと爵位をかけて庇うなんて何考えてるのかしら!」
マフィアB「でも最近のリリア嬢は丸くなったってもっぱらの評判ですぜ」
ルルテラ「なーにリリアに騙されてんのよ!どうせ猫かぶってるに決まってるわ!今までアタクシたちと楽しくマリーをいじめてたくせに、いい子ぶっちゃって!」
マフィアA「まぁまぁ、ルルテア様」
マフィアB「落ち着いておくんなさい」
ルルテラ「まぁいいわ!アンタたち、ダークネスポワゾンは持ってきてるんでしょうね?」
マフィアA「それはもちろん、ここに持ってきてますぜ」
ルルテラ「フフン、これこれ♪闇市で売りさばくだけで、結構お金になるのよね♪ついでにまたリリアを罠に引っ掛けてやるわ!今度こそ言い逃れできないわよ、死刑間違いないわね。まったくあの頭にくるバカ女ときたら・・・」
リリア「誰が頭にくるバカ女だって?」
ルルテラ「はぁ、ちゃんと話聞いてなさいよね。バカ女といえばリリア・ファンルージュに決まってるわ!・・・って、この声は!?」
リリア「ウチがそのリリア・ファンルージュだけど!?」
ルルテラ「キャアア!アンタ、なんでここにいるのよ!?」
リリア「それはこっちのセリフよ!ははーん、オーサード家がお金に困ってるって噂はどうやら本当だったみたいね?ルルテラ、アンタも落ちぶれたもんねぇ。それで、誰を罠にハメるって?」
ルルテラ「リ、リリア様、ご、誤解よぉ!」
リリア「5階も6階もないわよ!ウチ、ぜーんぶ聞いてたんだからね!卑怯なマネするのはおよしよ!ウチのことが気に食わないなら、正々堂々かかってきなさいよ!」
ルルテラ「くっ、こんなところ見られたからには生きて帰すわけにはいかないわ!アンタたち、この女をたたっ斬っちゃいなさい!」
SE:指パッチン
SE:たくさんの足音
ユスタス「危ない、リリア様!」
SE:剣を剣で受け止める音
リリア「ユスタス!?アンタ、何出てきてるのよ!?」
ユスタス「レディが敵に立ち向かっているのに、僕が隠れているわけにはいかないでしょう!」
BGM:剣の音
リリア「アンタ、何バカ言ってるの?ウチはレディなんかじゃないって!ここはウチが食い止めとくから、アンタは怪我しないうちにさっさと逃げなさいよ!」
ユスタス「リリア様こそ!ここは僕に任せて早くお逃げください!」
リリア「ふざけないで!ウチはもう誰のことも死なせやしないんだから!」
ユスタス「僕だって、リリアさんのこと死なせませんよ!」
SE:扉の開く音
アーサー「皆のもの!静まれ!!!このソレイユ公国第一王子アーサー・マリュウスの命において、オーサード家伯爵令嬢ルルテア・オーサードを国際A級指定危険薬物ダークネスポワゾン密輸の罪で逮捕する!!!」
ユスタス「アーサー様!」
リリア「バカ王子!」
ルルテア「アーサー王子!な、なんでここがわかったの?」
アーサー「ユスタス、伝達魔法ありがとな。マリーに聞いたら、リリアもここに来ていることがわかってな。まったく、勝手なことをしやがって」
マリー「リリア様、お怪我はございませんか?」
リリア「何よ、あのバカ王子!アンタに何言ったって、ウチの濡れ衣は晴れないじゃないの!」
アーサー「王立警察軍を連れて助けに来てやったのに、バカとはなんだバカとは!第一、自ら敵地に乗り込んで暴れるなど、それが女のやることか!」
リリア「何言ってんのよーっ!言っとくけど、ウチはただただ黙って大人しくしてるなんてごめんだからね!ケンカ売られたら、自分で買うもんでしょ!」
ユスタス「リリア様、今回はやりすぎです!何事にも臆せず勇敢に戦うあなたは確かに魅力的ですが、僕がいなかったらどうなっていたことか」
リリア「ユスタスまで!もう、ウチのことを心配しすぎだよ!ウチはこれでも、男子とケンカして負けたことはないんだから!」
ユスタス「もう、少しはしおらしくしてください!そんなところまで僕の母さんに似ることないでしょう!」
リリア「母さん!?ユスタス、言っとくけどねぇ、ウチはアンタのお母さんじゃないからね!」
ユスタス「わかってますよ!ただ、面影があると言ってるだけです!」
アーサー「すっかりあいつら、仲良くなっちまいやがって・・・」
マリー「そろそろ、両思いって気づくといいですね」

END.

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