画素って何? 何万画素あれば十分? 画質にどうかかわっている? いまさら聞けない初歩的な写真の疑問

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少し前まで、カメラの性能の話になると必ず出る質問がありました。「そのカメラ、何万画素ありますか?」

カメラに詳しくない人にすると、比較するときにもっともわかりやすいスペックだったのでしょう。「1,600万画素よりも2,400万画素の方が優秀だ」となったのです。

しかし、そもそも、「画素」はどんなもので、どんな役割を担っているか理解されているでしょうか。今回は、そのあたりの説明をしましょう。

画素とは

かつてのフィルムの代わりがイメージセンサーです。フィルムと違い、わざわざ見ることもないので、実感のない人もいるのではないでしょうか。実は、レンズ交換式のカメラ(デジタル一眼レフ・ミラーレス)の場合、シャッター幕は開いているのが常の状態です。レンズさえ外せば、ボディーの奥に直接見えています。

また、このイメージセンサーは画素の集合体です。2,000万画素であれば、あの小さな面積の中に、それだけの画素が整然と並んでいます。

・画素のひとつひとつの構造

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画素のフィルターはR(レッド)・G(グリーン)・B(ブルー)の3色だが、同じ数が配置されているわけではない。人間の目は赤や青よりも緑に反応するために、GはR・Bの2倍ある。こうすることで見かけの解像度が上がるという。
画素を国語辞典的に定義すると、「デジタル画像を構成する色の1粒」です。
実際の構造としては、光が当たる側から順番に、レンズ・フィルター・フォトダイオードの3層になっています。

レンズ=光をより効率よくフィルターなどへ送るためのもの。

フィルター=素材を無視して早い話をしてしまうと、色ガラスのこと。一般的には、レッド(R)、グリーン(G)、ブルーの(B)の3種類を使う。たとえば、「見た目にレッドのフィルター」は、「赤色の波長の光線だけ通し、他の色はブロックする」。「これらのRGBの3種類のフィルターを使う」も「さまざまな波長が含まれる光を、3つの色に分けて通す」といえる。

フォトダイオード=光が当たると電子が発生する部品。発生する量は光の強さに応じて変わる。

つまり、レンズを通ってきた光を3つの色に分け、そのぞれぞれについて、強さを電気信号として変えるのが画素です。また、この画素を整然とひとつの長方形の中に並べたのが、イメージセンサーです。

「2,000万画素のカメラ」では、このレンズ・フィルター・フォトダイオードのセットが、イメージセンサーの中に2,000万個整然と並んでいます。

・画素とイメージセンサーと画質の関係

一般的には、画素が大きいほど画質がいいとされます。というのは、その分、受ける光の量が大きく、強弱も正確に記録できるからです。また、画素のひとつひとつのサイズが同じならば、イメージセンサー全体が大きいほど、画素数を増やすことができ、それだけ精密な画像がえられます。

また、みなさんが予想する以上に、カメラの種類ごとにイメージセンサー全体のサイズは異なります。

ニコンやキヤノンのデジイチ(デジタル一眼レフ)やミラーレスで、高級機とされる製品で使われているのは、フルサイズのイメージセンサーです。かつてのフィルムでもっとも一般的に使われていたものと同じサイズ(36ミリ×24ミリ)です。

普及機には面積でこの9分の4のAPS-Cが採用されています。コンデジのイメージセンサーにはさまざまなサイズのものが採用されていますが、もっとも一般的なものはフルサイズの約30分の1です。

つまり、「2,000万画素のコンデジは、フルサイズの2000万画素のデジイチに比べ30分の1の光の量で、RGB3色の強弱のデータを作成している」ことになります。

画質を決めるのは画素やイメージセンサーだけではない

画質を左右するのは、画素とその集合体であるイメージセンサーだけではありません。たとえば、レンズ(カメラレンズ)があります。イメージセンサーに届く光の質が悪く、色がずれていたり、像がにじんでいたりすると、画素を云々(うんぬん)するのとは別の問題です。

また、意外に見落とされがちなのが映像エンジンです。

・映像エンジンとは

千数百万個やそれ以上のフォトダイオードが集めたデータはそのままでは画像になりません。「それぞれの画素の分について、R(あるいは、G、B)の光の強さが○○」があるだけです。これらを集めて、1枚の画像として再生するのが、映像エンジン(画像処理エンジン)です。

 映像エンジンのハードはCPUなどの電子部品で作られていて、ほとんど「カメラの中に専用のパソコンを持っている」といっていいぐらいです。また、パソコンであり、データの処理をするからには、ソフトがなくてはいけません。これらのセットが、映像エンジンです。

CPUなどのハード面が劣っていると処理能力が低く、たとえ処理能力が高くてもソフトがだめならば、結果も出せないのは、やはりパソコンと同じです。
そのため、メーカー各社とも開発に激しい競争をし、アピールポイントにもしています。ニコンならば「EXPEED」、キヤノン「DIGIC」は、ソニーは「BIONZ X」が映像エンジンの名前です。

・JPGファイルとRAWファイル

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富士フイルム専用の現像ソフト「FUJIFILM X RAW STUDIO」。RAWファイルを直接扱うため、補正できる幅が広いだけではなく、ホワイトバランスやコントラストなども自然に仕上げやすい。主なカメラメーカーのRAWデータが現像できる汎用品としては、Adobeの「Lightroom」がよく知られている。
SDカードなどの記録メディアで保存する画像データで、最も一般的なファイル形式はJPGです。初心者ならばほぼ100パーセントといっていいでしょう。

「撮ったままのデータ」と思われがちですが、実はそうではありません。コントラストは強められ、その場の光源による色のズレはホワイトバランスで調整され、輪郭線もくっきりとなるように処理されています。これをやるのが、先に説明した映像エンジンです。RGBそれぞれの強弱の記録の集まりでしかなかったのを画像化するときに一緒に処理しているのです。

また、圧縮もされています。画像化したままではデータサイズが大きすぎ、記録メディアがすぐにいっぱいになってしまうためです。パソコンに保存するにもSSDやハードディスクをすぐに使い切ってしまうでしょう。

これらの処理は、必ずしも十分ではなく、満足もいくわけではありません。逆に、やりすぎてしまうことも珍しくありません。そこで登場するのが、Photoshopなどの画像加工ソフトです。

ただ、ここでいくつか問題があります。圧縮した画像データをソフトに掛ける際には、解凍しなければいけません。圧縮・解凍を繰り返す度に画質が劣化していきます。

ここでは、詳述しませんが、「JPGファイルではなく、RAWファイルで保存する」手があります。「RAW(ロー)」とは、「生(なま)の」「加工していない」の意味です。これこそ、映像エンジンが関与する前の撮ったままのデータです。

ただし、画像にもなっていませんので、専用のソフトを使って画像化しなければいけません。この作業をフィルム時代に習って「現像」、専用のソフトを「現像ソフト」といいます。

色ごとの光の強弱が、フォトダイオードがひらったまま損なわれずに記録されているため、JPGファイルからやるよりも大きく補正もできます。

あまり詳しい説明ここでは不要だと思います。大きく補正できる理由として、「コントラストをつけたり、輪郭をはっきりとさせたりといった加工では、元あったデータから一部の情報を抜くことでこれらの作用を実現している。そのため、加工を加える度に、画像データは情報が少なくなり、次の加工が難しくなっていく。RAWファイルはオリジナルのまったくの手付かずのデータ」と覚えておけばいいでしょう。

画素やイメージセンサーが大きいのはメリットばかりとは限らない

「何万画素あれば、十分か」は難しい問題でした。しかし、各メーカーの製品の出し方を見ると、2千数百万画素で一応の答えが出た気がします。

4千万画素・5千万画素の機種が出る一方で、かなり高価なカメラボディーでこの画素数の新製品が出ています。「特殊な使い方をするならば、いくらでも画素の多いものも必要だ。しかし、一般的な使い方ならば、これで合格圏」とメーカー側も判断していると思えるのです。

また、画素の話題をすると「画素のサイズが大きく、イメージセンサーも大きい方がいい」といった結論になることが珍しくありません。しかし、「イメージセンサーが大きくなると、カメラボディー・レンズのサイズも大きく重くなる。設計や製造も難しくなるので、値段が跳ね上がる」などのデメリットもあります。

そろそろ気にする人が増えてもよさそうに思えるのが、「画素がどのくらい小さくても、十分なだけのデータをひろえるか」です。なにしろ、日進月歩で進化しているのですから。

パナソニックなどがそれまでの路線を捨て、遅れてフルサイズ機に参入した一方で、フジフイルムはあえてフルサイズ機は作らず、面積が9分の4のAPS-C機を主力にしています。オリンパスは同様に4分の1のフォーサーズ機が主力です。「両社とも、ラインアップを増やさない。経営資源を浪費しない。ある種の見識を示している」と思えます。


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