「カメラを持っています」が「写真が撮れます」の意味になるって、おかしくないか?

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ここ何年か、もやもやとした気分になっていることがあります。LansersやCrowdWorksなどのクラウドソーシングサービスで、ライターの自己紹介を見ると、「カメラを持っています」と書いている人が多いのです。あるいは、「所有機材、Nikon○○、○○、○○」とカメラの機種名を並べるだけの人もいます。

もっと明確に、「一眼レフカメラを持っているので、写真が撮れます」まであります。「カメラを持っている」=「写真が撮れる」なのです。

「いや、いや、いや。持ってるだけはアカンやろ。『写真が撮れる』とは別やろ」が、もやもやの原因です。

「金ヅチ・ノコギリを持っています」だったら、どう思う?

もし、「包丁・まな板を持っています」を「料理ができます」、「金ヅチ・ノコギリを持っています」を「大工仕事ができます」の意味でいう人がいたとしたら、どうでしょうか。そのような人たちに、お金を出してまで料理を作ってもらったり、大工として雇ったりするでしょうか。

しかし、大半が記事(文字原稿)のついでの写真撮影とはいえ、「カメラを持っています」のライターが仕事として写真を撮って、お金をもらっているのです。

ちゃんとした写真が掲載されていれば、もちろん問題はありません。しかし、その「持っています」の人たちがリンクを貼っている「執筆実績」をチェックすると、大半が素人写真です。

「ここまでを読んだ人からは、『偉そうなことを言っている』『お前はどのくらいのものか』と言われそう」とは気がついています。

「素人写真」と呼ぶ理由はいくつもあるのですが、頻出するものには、「首切り写真」や「くし刺し写真」、「日の丸写真」、「関節切り写真」があります。これらを念頭に、その人たちの「執筆実績」を見てもらえないでしょうか。「ライターの撮る失敗写真・素人写真が横行している」がいくらかご理解いただけるはずです。

SNS&スマホが写真のレベルを下げた?

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こうなった原因には、次のようなことがあるではないでしょうか。

(1)メディアが新聞や雑誌など活字中心だったときは、数も限られていて、そこに掲載される写真もプロカメラマンが撮ることが多かった。ネットメディアに移行し、数も増えた。記事1本1本にかける金額も減り、写真の心得がないライターが自分で撮ることが増えた。

(2)ネットメディアでは、ライターだけではなく、編集者やディレクターも急造のことが多い。ライターを募集する企業も本業が別にあって、写真のことを全く知らない社員を、短期間だけ編集者やディレクターにすることも少なくない。当然、チェックは甘くなり、素人写真でも通してしまう。

(1)(2)について補足しておくと、ライター募集の案件にも、たまにですが、「スマホでけっこうなので、写真撮影もしてください」と書かれていることがあります。「それで間に合う」記事ではあるんでしょうが……

実はもっと影響が大きかったと思っているのが、「(3)SNSの登場」と「(4)カメラ付きスマホの普及」です。

「TwitterやInstagramなどのSNSのおかげで、メディアを通すことなく、だれでも情報発信できるようになった」は疑いようがありません。その「情報」の中には、写真もあります。ネットメディアなど微微たる存在に思えるぐらい、多くの人が、日々、写真をネット上にアップしています。

彼らがアップする写真の大半は、「写真のレベルなどお構いなし」なのですが、その「お構いなし」にスマホの内蔵カメラが拍車をかけていると思えるのです。

写真を撮る手段がカメラ(コンパクトカメラ・一眼レフカメラ)しかなかった時代には、だれしも先に写真撮影や道具としてのカメラに興味があって、カメラを購入していました。初心者向けのノウハウ本を同時に買う人も、今よりは多かったのではないでしょうか。

ところが、今はスマホが生活必需品です。写真に興味がなくても、内蔵カメラが自動的についてきます。写真を撮りたいという動機やカメラに対する興味がなくてもカメラが手元にあり、しかも、毎日持ち歩いているのです。大半の人は、なんとなく撮り始めて、その延長できているように見受けられます。

また、「デジイチやコンデジよりも、スマホの方がきれいに撮れる」と思っている人もいるでしょう。しかし、スマホでは撮り方の工夫が限られています。また、「きれいに撮れた」と思っても、高性能でかつサイズの小さいスマホの液晶の上だけであることも少なくありません。

(3)や(4)の影響を受けているのは、ライターも例外ではないでしょう。

「ライター」を名乗り、写真でもお金をもらう人は、カメラを使いこなす努力を

しっかりと検証されているかどうかはわかりません。しかし、私がそう信じている、ネット記事に素人写真を付けて出すデメリットには、次のようなものがあります。

・記事の中身まで「どうせ素人が書いたものだろう」と思われがちで、記事やサイト全体の信頼性まで失われる。

・写真をじっと見ることができないために、ページとしても滞在時間が短くなり、離脱率も高くなる。

「もっとまともな写真をアップしてほしい」がいいたいことです。しかし、あまり声高になるのも遠慮します。というのは、「適当な写真を撮って、アップする」は、「手軽に情報発信する」とほぼ同じことで、これはこれで長所といえば長所です。写真を撮る人も、その写真を見る人も全く違和感を持っておらず、わざわざそこに石を投げ込むようなことはしたくありません。

ここでは、相手をライターに限っての話です。

「ライターを名乗っているご同輩。仕事として写真を撮り、お金ももらっているならば、もうちょっとなんとかしようよ。カメラは持っているだけではなく、使い方を覚えようよ。どういった写真が失敗がぐらい知っておこうよ」

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