【選挙】入れたい所がない! と嘆く前に

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 近年の日本では国政選挙・地方選挙を問わず、選挙の度に投票率の低さが問題になっています。
  国政選挙の場合、昭和時代に70%台で推移していた投票率が、2010年代以降は50%台で推移するようになっています。
 4年に1度行われる統一地方選挙でも、1950年代に約90%だった投票率が、2010年代以降は40%台で推移するようになっています(投票率は、いずれも総務省のデータより)。

 投票率が低いことは、何を意味するのか?

 だが、投票率が低いことは、自民党や、公明党などといった、強固な組織票を持つ政党を利することでもあります。
 これを書いていた2024年3月時点では、自民党の各派閥による裏金問題が国会の大きなテーマとなっていましたが、自民党の場合は大企業(経団連加盟企業)の経営者などの、「社会の勝ち組」と呼ばれる人たちがバックに付いています。
 彼らはどんなに世間から批判されても、自民党への支持や、献金を100%止めないと思います。
 理由は、自民党が現在国会に議席を持つ政党の中で、最も企業・団体献金の規制や、金持ち優遇政策の是正に消極的な政党であるからです。
 つまり、自民党が政権の座から陥落することは、彼らの既得権益が奪われることでもあるのです。
 それを阻止するため、彼らは選挙の度に、自民党に票を入れている(這ってでも投票所に足を運んでいる)わけです。

 具体的な懲罰投票の手順

 だが、上記のような低投票率を背景とした「2012年体制」が半永久的に続くことは、金権政治や、金持ち優遇政治が半永久的に続くことでもあります。
 それを防ぐため、私は皆さんに、具体的な懲罰投票の手順を提示したいと思います。
 例えば、「自民党は大嫌いだが、他に入れたい所がない!」と嘆いている方がいると仮定します。
 恐らくその方は、以下のような気持ちで選挙を迎えていると思われます。
 それで結局、どの政党・候補者にも投票せず、選挙を棄権しているのだと思われます(下記の政党は、2022年参議院選挙の比例代表で議席を多く獲得した順に並べている)。

 自民党:×
 日本維新の会:△
 立憲民主党:△
 公明党:△
 共産党:△
 国民民主党:△
 れいわ新選組:△ 
 参政党:△
 社民党:△
 NHK党:△
 →投票したい政党・候補者がないから、選挙に行かない!

 しかし、ここで自民党以外の政党に票を入れれば、自民党の議席を100%確実に減らすことができます。
 つまり、大嫌いな政党・候補者があれば、それ以外をランダムに選んで投票すれば良いわけです。
 あとは、AKB48が行っていた『選抜じゃんけん大会』と同じような、ノックアウト方式のトーナメントをひとりで行って、優勝した政党・候補者に機械的に票を入れれば良いわけです。
 そうすれば、誰がセンター(投票先)となるのか、自分でも全く予想できなくなるため、政党・候補者選びが何十倍も楽しくなるはずです!

AKBじゃんけん大会.jpg

 図1.『AKB48 選抜じゃんけん大会』の模様(BSスカパーの映像より)

 もちろん、この方法は県議会議員選挙や、市議会議員選挙などの地方選挙でも使うことができます。
 特に、大都市の議会議員選挙の場合、数十人の定数に対して、50人から60人が立候補するケースもザラにあるため、候補者を1人に絞るだけでも有権者1人ひとりに大変な手間がかかります。
 その影響で、人口の少ない町村議会議員選挙よりも、投票率が低くなっています。

 だが、この問題もAKB48の『選抜じゃんけん大会』と同じ方式で、簡単に解決することができます。
 ここでは2023年に行われた、ある市の議会議員選挙の立候補者を届け出順に並べていますが、この時に要らない紙(レシートの裏など)を使って、図2のようなトーナメント表を作れば、大嫌いな政党の候補者を最初から除外することが可能になります。
 この選挙の場合、候補者64人のうちの7人が自民党の公認なので、自民党が大嫌いなら、その7人を除いた57人でトーナメントを行えば良いわけです。
 公明党が大嫌いなら、公明党の候補者8人を除いた、56人でトーナメントをすれば良いわけです。
 その上でコイントスを行って、表が出たら上に、裏が出たら下に書かれている候補者を勝ちとします。
 あとは優勝者(投票先)が決まるまで、単純にコイントスを繰り返せば良いのです。
 なお、候補者の氏名は、どこの市議会議員選挙だったのか分からなくする目的で全員伏せていますので、その点はあらかじめご了承ください。 

立候補者一覧.JPG

 図2.トーナメントの例(自民党の候補者を除外する場合)

 ここまで、「●●党は大嫌いだが、他に入れたい所がない!」場合の投票先の決め方について書いてきましたが、普段、欠かさず選挙に行っている有権者から見れば、この方法はふざけた方法に思えるかも知れません。
 しかし、この方法であれば、難しい政策の知識などは一切必要ありません。
 だから、「入れたい所がない!」と嘆いている方は、迷わずこの方法を実践して欲しいと思います!

 無風選挙でも投票に行く意味はあるのか?

 ただ、選挙の中には最初から、特定の候補の圧勝が予想されるものが数多くあります。
 特に、主要政党が相乗りした首長選挙だと、相乗り候補が他の候補に何倍もの差をつけて圧勝するケースがよくあります。
 また、「保守王国」と言われるような選挙区だと、自民党の公認候補が、ダブルスコアや、トリプルスコアで勝利するケースがよくあります。
 そのような選挙だと、最初から「投票に行ってもムダだ」と諦めてしまう有権者が多いように感じます。

 しかし、選挙には当落以外にも、重要なポイントがあります。
 それは、高額な供託金の存在です。
 特に日本の場合、立候補の際に必要な供託金の額が異常なほど高くなっています(金額はいずれも2020年以降)。

 *衆議院選挙(選挙区):300万円
 *衆議院選挙(比例区):600万円
 *参議院選挙(選挙区):300万円
 *参議院選挙(比例区):600万円
 *都道府県知事選挙:300万円
 *都道府県議会議員選挙:60万円
 *政令市長選挙:240万円
 *市区長選挙:100万円
 *町村長選挙:50万円
 *政令市議会議員選挙:50万円
 *市区議会議員選挙:30万円
 *町村議会議員選挙:15万円

 しかも、得票率が一定の割合に満たない場合、公職選挙法の規定により、支払った供託金がボッシュートされてしまいます。
 衆議院選挙の場合、選挙区で一定の票が取れないと、重複立候補した比例区で復活当選することもできません。
 供託金の没収点は、以下の通りです。

 *衆議院選挙(選挙区):有効得票総数÷10
 *衆議院選挙(比例区):比例区議席割り当て数×2-重複立候補した選挙区で当選した分
 *参議院選挙(選挙区):有効得票総数÷改選定数÷8
 *参議院選挙(比例区):比例区議席割り当て数×2
 *都道府県知事選挙:有効得票総数÷10
 *市区町村長選挙:有効得票総数÷10
 *都道府県の議会議員選挙:有効得票総数÷定数÷10
 *市区町村の議会議員選挙:有効得票総数÷定数÷10

 つまり、見方を変えると、大嫌いな政党・候補者を惨敗させれば、その分だけ多額の金銭的ダメージを与えることができるわけです。

 それは国政選挙だけでなく、地方選挙でも当てはまることです。
 例えば、2020年にある市(政令指定都市ではない)の市長選挙で、現職の無投票再選の公算が大きくなっていたところに、突然、NHK党が地縁のない公認候補を立てたケースがあります。
 その場合、多くの有権者は、「どうせ現職が圧勝するのだから、投票に行かなくても大丈夫だろう」と思ってしまうかも知れません。
 しかし、この時にNHK党が大嫌いな有権者が、現職にこぞって投票すれば、NHK党に100万円の金銭的ダメージを与えることも可能になります。
 事実、この市長選挙ではNHK党の公認候補の得票が、有効得票数の10%に満たなかったため、NHK党の支払った供託金100万円は、ボッシュートとなっています。
 逆に、現職が大嫌いな有権者が対立候補にこぞって投票すれば、対立候補の供託金のボッシュートを阻止することができるわけです。

ボッシュートです.JPG


 今回は、選挙で「入れたい所がない!」と嘆く前に皆さんがすべきこと(懲罰投票の手順)について触れてきましたが、今回提示した方法は、要らない紙と、コイン1つと、筆記用具1本があれば、すぐ実践できるものです。
 しかも、選挙は平均して、1年に1回から2回程度しか行われません。
 つまり、テレビで毎年1~2回、必ず放送されるバラエティー番組(例えば、『オールスター感謝祭』{TBS}や、『芸能人格付けチェック』{テレビ朝日}など)を視聴するのと同じ感覚で、気軽に実践すれば良いわけです。

 だから、もし大嫌いな政党・候補者が1つでもあるのなら、今すぐにでもここに書いてきたようなことを実践して欲しいと思います!

投票に行こう.jpg


 情勢調査は今すぐ止めるべきだ!

 最後に1つ付け加えますが、大手の新聞社(読売・朝日・毎日・日経・産経の5大全国紙)は大きな選挙(国政選挙)があると、「自公●●議席確保の勢い」「立民●議席程度」などといった情勢調査の結果を、1面でデカデカと発表するのが恒例となっています。
 だが、このような情勢調査には膨大な手間がかかります。
 それに、情勢調査を発表することは、有権者(特に、「Z世代」や、「さとり世代」などと呼ばれる若者たち)の投票意欲を奪うことでもあります。

 もし、情勢調査で自分の支持する候補者・政党が「優勢だ」と伝えられたら、あなたはどう思うでしょうか?
 逆に、「苦戦だ」と伝えられたら、あなたはどう思うでしょうか?

 間違いなく、投票に行く気が失せてしまうはずです。
 事実、2021年の衆議院選挙では、選挙そっちのけでコスプレを楽しんだり、コロナ禍にもかかわらず渋谷のスクランブル交差点で騒いだりする若者たちの様子が、ニュースで大々的に報じられたほどです(2021年の衆議院選挙の投開票日は、ハロウィーンと同じ10月31日だった)。
 そう考えると、大手の新聞社の行う情勢調査は「百害あって一利なし」なのは明らかと言えます。
 だから、大手の新聞社は選挙期間中の情勢調査を、今すぐにでも止めるべきです!


 *表紙のイラストの出典:『18歳選挙権で政治は変わるのか』(21世紀の政治を考える政策秘書有志の会編、ディスカヴァー携書)の186ページより



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