『シャープさん フラットさん』

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コラム
 2023年は、テレビ放送開始から70年の節目の年に当たります。

 突然ですが、皆さんは『シャープさん フラットさん』というクイズ番組があったことをご存じでしょうか?

 『シャープさん フラットさん』とは?

 『シャープさん フラットさん』は、1962年4月から1970年3月までNHK総合テレビで放送されていた、視聴者参加型の音楽クイズ番組のことです。
 この番組は、2人(ペア大会の場合は2組)の出場者が「シャープさん」「フラットさん」となって、流れてくる曲のタイトルを当てるものです。
 正解するごとに、5×5のマス目を五目並べのように埋めて行って、先に自分の符号(♯または♭)を縦・横・斜めに5つ並べた方が勝ちとなります。
 問題は『クイズ ドレミファドン』のような、早押し形式ではないため、曲をじっくり聴いてから答えることができます。

 なぜ、昔のクイズ番組を引っ張り出してきたのか?

 これを読んでいる方の中には、「なぜ、このような昔のクイズ番組を突然引っ張り出してきたのか?」と思った方もいるかも知れません。
 そのきっかけは、両親や、伯父から面白いスマホアプリが全然無いと、愚痴をこぼされたことにあります。
 この記事を書いた時点で、私の父親は64歳、母親は61歳でした。
 私の両親には、どちらも兄が1人います。
 父親の兄は1953年の、母親の兄は1959年の生まれで、どちらもスマホを早くから使いこなしていますが、両親と、2人の伯父の両方とも、中高年向けのスマホ・PCコンテンツが少ないことを不満に思っていました。
 それで、私は専門学校(東京電子専門学校)時代の2003年に、校外学習先のNHK放送博物館で購入していた、『テレビ50年 あの日あの時、そして未来へ』というテレビ放送史を引っ張り出して、何か手軽に再現できそうなコンテンツはないか、探すことにしました。

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 図1.私が保管しているテレビ50年史

 そんな中で浮上してきたのが、『シャープさん フラットさん』というクイズ番組だったのです。

 なぜ、『シャープさん フラットさん』を推すのか?

 私が『シャープさん フラットさん』を推す理由は、①この番組が30分番組であったことと、②番組自体が長く続いていたことと、③番組自体の完成度が高かったことの、3つを全て兼ね備えていたからです。

 ①:考えてみれば、昭和時代のクイズ番組は、ほとんど30分番組でした。
 現在のような1時間のバラエティー番組に慣れると、30分は短く感じるかも知れません。
 しかし、30分なら電車の中でも、手軽に視聴・プレイすることができます。

 ②:『シャープさん フラットさん』は1962年4月から、1970年3月までの8年間放送されていましたが、これほどの長寿番組であれば、本放送を視聴していた人はたくさんいるはずです。
 それ以前に、人気のない番組が8年も続くはずがありません。
 そう考えると、高齢者の知名度が非常に高い(ニーズが見込める)のは明らかと言えます。

 ③:『シャープさん フラットさん』の場合は、基本ルールが放送開始当初から終了時まで一貫していました。
 これは民放ではなく、NHKの番組であったからだと思われますが、NHKの場合、番組の内容や、ルールがテコ入れによって大きく変質してしまうことはほとんど考えられません。
 しかも、『シャープさん フラットさん』の場合は出題される問題のジャンルが、クラシックや、洋楽や、演歌や、ポピュラー(現在でいうJ-POP)など、非常に多岐にわたっていました。
 視聴者参加型のクイズ番組であったせいか、問題の難度も適度に調整されていました。
 これに五目並べの要素を加えるのは、今考えても画期的だったと言えます。

 なお、①から③の条件に当てはまるクイズ番組は、他にも『100万円クイズハンター』や、地上波時代の『パネルクイズ アタック25』などがありますが、これらは実際に、PlayStation版ソフトなどといった形でゲーム化されています。
 『100万円クイズハンター』は1981年から1993年までの12年間、テレビ朝日系列で放送されていました。
 『パネルクイズ アタック25』に至っては1975年の放送開始から、現在まで(BS Japanext時代も含む)の48年にわたって続く長寿番組となっているため、高齢者向けとは言えない面もあります。
 しかも、『100万円クイズハンター』や、『パネルクイズ アタック25』の場合は早押し問題が主体であるため、瞬発力の衰えた高齢者にとっては不利と言えます。
 そう考えると、『シャープさん フラットさん』が高齢者にも適したコンテンツであるのは明らかと言えます。

 どのような形でゲーム化する?

 『シャープさん フラットさん』をスマホゲームや、パソコンのオンラインゲーム等にする場合は原則として、ルールも、番組の流れも、背景(セット)も全て、本放送当時と同じ形で再現します。
 YouTubeには、『シャープさん フラットさん』のテーマ曲を再現した動画が実際にアップされていますが、当然ながらこの音楽も、そのままの形で使用します。

 実際の動画はこちら
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 しかも、『シャープさん フラットさん』には5連勝(5人抜き)すると「ミュージック賞」を獲得できる制度があったため、仮にスマホゲームという形で再現するのであれば、本放送当時と同じで、「5連勝(5人抜き)すれば、ミュージック賞として●●獲得」という特典を付けるのもありだと思います。

 ただ、現在では『シャープさん フラットさん』の本放送当時と違って、音楽のジャンルが非常に多様化・細分化しています。
 その影響で、国民的なポピュラー音楽が生まれにくくなっています。
 しかし、この問題はオプション機能を付けることで、比較的容易に解決することができます。
 オプション機能を付けて、出題する問題のジャンルをJ-POP限定にすれば、J-POPばかりが出題されるようになります。
 年代を指定すれば、昭和歌謡のオンパレードとすることもできます。
 上記のような機能を付ければ、高齢者だけでなく、『シャープさん フラットさん』の本放送を知らない世代にも、コンテンツを受け入れてもらえるのではないかと、私は考えます。
 問題も定期的に更新して、比較的最近の曲が出題されるようにします。
 そうすれば、コアな音楽ファンも取り込むことができるのではないでしょうか。 

 昔のコンテンツを「そのまま再現」することの意義

 ここまで、『シャープさん フラットさん』について書いてきましたが、皆さんの中には、昔のコンテンツを「そのまま再現」しようという発想が、安直に思えてしまう方もいるかも知れません。
 だが、現代の日本ではごく少数の当たる作品と、圧倒的多数の当たらない作品との二極分化が激しくなっています。
 しかも、リキッド消費が主流となった現代の日本では、何がヒットするのかを、事前に予想するのが非常に難しくなっています。
 それならば、「若者に人気のあるコンテンツの続編を・・・」と考えてしまうのも、ある意味で当然かもしれません。

 ただ、『シャープさん フラットさん』のような、テンプレートが確立されているコンテンツの場合は、RPG(ロールプレイングゲーム)と違って、ストーリーや、背景などをあれこれと試行錯誤しながら作り上げていく必要がありません。
 その代わりに、『シャープさん フラットさん』の本放送を知る高齢者への徹底的なヒアリングが必要となりますが、ヒアリングの手間を考慮しても、製作コストを大幅に抑えられる可能性は非常に高いと言えます。
 それで外れても、ダメージが抑えられる(赤字が少なくなる)だけ、ゲーム会社にとってはマシと言えます。

 また、パソコンや、スマホの普及した現代では、「あの企画は●●のパクリではないか?」などといった疑惑が、あっという間にネット上で拡散するリスクが非常に高くなっています。
 しかし、昔のコンテンツを「そのまま再現」するのであれば、パクリの問題はまず生じないと言えます。
 上記のような炎上リスクを回避できる点でも、昔のコンテンツを「そのまま再現」するメリットは大きいと言えます。
 むしろ、2021年9月に地上波での放送が終了していた『パネルクイズ アタック25』を、BS Japanextのレギュラー番組という形でそのまま復活させた、ジャパネットホールディングスと同じで視聴者などから歓迎される可能性が高いと、私は思います。

 おわりに

 最後に言いますが、なぜゲーム会社は日本に約3600万人もいる(日本の総人口の3割にも達している)、65歳以上の高齢者をターゲットとした、スマホ・オンラインゲームを作ろうとしないのでしょうか?

 『シャープさん フラットさん』のような、完成度の高くて、多くの高齢者が知っているようなコンテンツを活用しないのは、余りにも勿体なさすぎる気がします・・・。
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