伸びる作家と伸びない作家の違いは何か――。
疑問に思う点であり、編集者としては、
なんとかその「要因」を探りたいと考えるものです。
同時期にデビューして、次々と作品を発表し、
ぐんぐん人気を伸ばしていく作家と、1冊出して鳴かず飛ばず、
その後もぽつりぽつりとしか売れない作家……。
おもしろいほどに、その違いははっきりと出てきます。
その要因は一体何なのか。
多くの作家をデビュー時期から見てきた、私が出した結論は……。
・とにかく、さっさと書く。(書くのが早い)
・周りを気にせず、自分の好きなことを貫いていける自信がある。
・やる気がある。本気で人気作家になりたいと考えている。
一番重要なのは、こういった本人の意識ではないか、
という、かなり基本的な結論に達しました。
でもこれって、作家に限らず、どの分野においても 言えることですよね。
それこそ、編集者についても、営業マンについても、
どの職業・趣味においても重要なことだと思います。
「作家になりたい」。
それも、 「読者がついてきてくれるような人気作家になりたい」。
どれだけそう強く考えられるか、です。
「私なんてダメかも……」
「こんな設定受けるわけない」
「2週間で1冊なんて、絶対書けない」
そういった意識が、地味な作家、消えていく作家を
作っていくのだと思います。
もちろん、反省は大事ですよ。
すごいヘタレな作品を書いておいて「傑作だ!」なんて、
何も考えずそう思ってる人は、伸びないのでダメですけど(笑)。
やはり、作家になるにも、ある程度の自信とやる気は必要かな、と思います。
しかも、学生やサラリーマンのように、誰かにやれと言われて
やるような義務的なものではないですからね。
人気作家になれば、「先生、締切過ぎてます!」
「まだ原稿は上がりませんか!?」など、
催促してくれるものですが、そうでなければ
そんなに厳しく取り立てはしません。
編集者から見た作家は、大別すると4種類に 分けられると思います。
(やや即物的な見方ですが……)
1:売れてて書くのが早い作家
2:売れてて書くのが遅い作家
3:売れないが書くのが早い作家
4:売れないし書くのが遅い作家
この中で、現在の出版界の大半を占めるのは、「1」の作家の作品です。
プロとして長年活躍している方の圧倒的多数がこのタイプです。
ある程度早く書けて売れないと、生き残っていくのが難しい世界ですからね。
「2」の作家も残ってはいますが、そんなに本数を出せないので、
亀のようにゆっくりとした歩みで、結果、
年間の総数はそれほど多くはありません。
「2」は編集者のほうに多大なフラストレーションがたまることがあります。
一方で、「3」は作家の側にフラストレーションがたまることでしょう。
「4」はもう、どちらにとってもどうしようもないことがわかりますよね。
「売れるようになりたい」「人気作家になりたい」という想いが、
よりおもしろい作品を生み出すでしょうし、
たくさん早く書くよう、がんばることにつながっていくと思います。
「プロ作家は、みんな売れたいに決まってるじゃない」
そんな意見が聞こえてきそうですが、それが各人によって
度合いがまったく違う、と言ったらみなさんは驚かれますか?
でも、実際はそうなんです。
「書くスタンス」といったものが、全然違うんですね。
まぁ、一人一人価値観は違うので、
「どうして小説を書いているのか」から「どうして売れたいのか」まで、
さまざまな理由があると思います。
「好きなものを書きたいだけ」の人と、「売れて人気作家になりたい」人とでは、やはり……方向性が違ってしまうのです。
この差が、どれくらい改稿(上がった原稿の直しをすること)するのかに
つながっていきます。
編集者としては、もちろん言うことを聞いてくれる作家のほうが
うれしいですけどね(笑)。
どんなやり方をしても、自分というものがしっかりあって、
力がある人は伸びていきます。
あとは「やる気」と、「自分を貫く力」だと思いますが、
正直、改稿するのをいとわない作家や、単純に書くのが早い作家は、
伸びる可能性が高いと言えます。
それだけチャンスが多くなる、ということですから……。