倉庫内のピッキングを効率化する方法5選とそれを受け入れるべき倉庫の特徴
私が経験したピッキング効率をUPさせる施策の中で、汎用性があり、効果が大きい施策5選は以下の通りです。
方法①:適切なピッキング方法の選択
方法②:スケールメリットの活用
方法③:荷物の配置の適性化
方法④:抱き合わせ荷物の配置の工夫
方法⑤:名寄せ出荷の採用
ただ、必ずしも全て取り入れた方が良いという訳ではありません。そのため、読者の皆様がお勤めの倉庫で取り入れるべきか否かの判断基準も伝授致します。
それでは始めていきます。
方法①:適切なピッキング方法の選択
「タイトルを見て選択ということは複数あるの?」と疑問を持った方もいらっしゃるかもしれませんが、実はピッキングには大きく分けると2種類の方法があります。
ピッキング方法①:摘み取り方式
ピッキング方法②:種まき方式
まずは、それぞれのピッキング方法のご紹介を致します。
ピッキング方法①:摘み取り方式は、シングルピッキング、オーダーピッキングとも呼ばれます。
ピッキングの具体的な方法は、お客さんからの注文ごとに、指定された商品を指定された数だけ、荷物の置き場所から摘み取っていきます。
イメージできない方は、↓下の動画が分かりやすいかと存じます。
ピッキング方法②:種まき方式は、トータルピッキングとも呼ばれます。
ピッキングの具体的な方法は、複数のお客さんの注文をまとめてピッキングします。その後、お客さんごとに種をまくように商品を配っていきます。
下記の動画で分かりやすく解説されているので、イメージできない方はご覧下さい。0:25~0:40が種まき方式のお話です。
動画の補足ですが、トータルピッキングリストは複数のお客さんの注文がまとめられたピッキングリスト、店別仕分けリストはお客さんごとのピッキングリストです。
店別仕分けリストに基づいたピッキングの結果は、オーダーピッキングによるものと同じになります。
なお、動画の0:41~1:09で店別ピッキングという表現がありますが、摘み取り方式、シングルピッキング、オーダーピッキングと同じ意味です。
倉庫の特徴から適切なピッキング方法を選択しましょう
2つのピッキング方法をご理解頂いた上で、どちらを選択すると良いのかについて解説していきます。
結論から申し上げると、ご自身が働かれている倉庫を「注文の数」と「取り扱っている荷物の種類」から評価して下さい。
その上で、下の表↓を基に適切なピッキング方法はどちらなのか確認をして下さい。
まず、ご理解頂くことが容易だと考えられる2つのケースから、解説致します。
「荷物の種類が少ない」&「注文の数が少ない」場合は、摘み取り式が良いでしょう。
なぜならば、荷物の種類が少ないということは、歩行距離が長くなりにくいといえます。さらに、注文が少なければ、種まき式の歩行距離を減らすメリットが働きにくいです。一方で、種まき式のトータルピッキングと店別仕分けの「2回」ピッキングが発生するというデメリットが発生します。従って、種まき式のデメリットがメリットを上回るためです。
「荷物の種類が多い」&「注文の数が多い」場合は、種まき式が良いでしょう。
なぜならば、荷物の種類が多いということは、歩行距離が長くなりやすいといえます。さらに、注文が多ければ、種まき式の歩行距離を減らすメリットが大きくなります。確かに、トータルピッキングと店別仕分けの「2回」ピッキングすることによる手間の増加というデメリットはあります。しかしながら、種まき式のメリットがデメリットを上回るからです。
「荷物の種類が多い」&「注文の数が少ない」場合は、種まき式の方が良いことが多いです。
なぜならば、荷物の種類が多いということは、歩行距離が長くなりやすいです。従って、種まき式のメリットの方が大きいと考えられるからです。
ただ、荷物が大きい場合、2回ピッキングすることが大変になるので、例外的に摘み取り式を選択されるのが良いでしょう。
「荷物の種類が少ない」&「注文の数が多い」場合は、摘み取り式の方が良いことが多いです。
なぜならば、荷物の種類が少ないということは、そもそも歩行距離がそれほど長くはないでしょう。従って、種まき式のデメリットの方が大きいと考えられるからです。
ただ、タワーマンションのような縦長の倉庫で、1件で2Fと5Fに保管している荷物が一緒に出荷されるようなことが度々発生する場合は例外的に、種まき式を選択されるのが良いでしょう。
なお、荷物の種類、注文の数に関して、多い、少ないという抽象的な表現を使用していますが、明確な数値の基準はありません。実際には、どちらが効率的か試してみましょう。
方法②:スケールメリットの活用
摘み取り方式にせよ、種まき方式にせよ、一度に大量の注文をピッキングを処理した方が効率的です。
以下の2つを比較すると後者の方が効率的だと考えられませんか?
✓1件分のピッキングリストを持って、ピッキングして帰ってくる。これを3回繰り返す。
✓3件分のピッキングリストを持って、3件まとめてピッキングして帰ってくる。
下の動画↓の0:21~0:52で1件ピッキングしていますが、近くに保管されている荷物のピッキングリストを3件分を持って3件分の商品をピッキングする方が効率的です。
なお、下の動画↓はピッキングのイメージをして頂くための動画であって、効率を意識されたものではありません。
現実的には、下の動画↓のような入れ物を複数置ける台車を用意して、近くに保管されている荷物のピッキングリストを集めた上で、複数の出荷先の荷物を順番にピッキングしていくのが良いでしょう。
歩行距離が短くなることに加え、荷物を落下させるリスク、ピッキングリストと荷物がバラバラになるリスクを回避することができるからです。
以下の2つを比較すると後者の方が効率的だと考えられませんか?
✓10件の注文を3分割した上でピッキングその後、お客さんごとに配る
✓10件の注文を1回でピッキング、その後、お客さんごとに配る
なぜなら、1回でピッキングした方が歩く距離が短くなるからです。下の図↓を見れば、一目瞭然ですよね。
入れ物いっぱいに荷物を詰め込んで帰って来れるようにしましょう。
スケールメリットを活用できるようになる倉庫の特徴とは?
では、どのような倉庫であれば、スケールメリットを活用した方が良いのでしょうか。
結論から申し上げますと、以下の両方の特徴に当てはまる倉庫では、試す価値が有ります。
特徴①:注文件数が多い
特徴②:注文がこまめに入る
「特徴①:注文件数が多い」に関しては、10件/日程度の出荷しかなければ、効果は薄いです。まとまった量の注文があってこそなのです。
「特徴②:注文がこまめに入る」に関しては、逆の状態である「お客さんの注文が一括で入る」であれば、既に充分スケールメリットを活かせています。
では、 上記2つの特徴に当てはまるから、まとまった量の注文が入ってからピッキングを開始するように変更しようとすると、こんな不安が生まれます。
不安①:運送会社に荷物を渡す時間が遅くなってしまわないかな。
不安②:まとまった量の注文が入るまで、何をしようかな。
不安①に関しては、勿論早めにピッキングを終わらせて運送会社に荷物を渡さなきゃと焦る気持ちもあります。
でもその気持ちを落ち着かせて、少しづつで構いませんので、まとまった数の注文が入ってから作業に取り掛かってみましょう。上手くいけば、どんどんまとめてピッキングをしましょう。
不安①に関して、当然、朝からピッキングをしていたものを午後からにするとなれば、午前中何したら良いんだろうと思いますよね。
荷物を倉庫に入れる作業に先に取り掛かったり、思い切って出勤時間を遅らせたりするのが手だと存じます。
方法③:荷物の配置の適性化
タイトルの方法は、ピッキングする方の歩く距離を短くするために、倉庫の中心から出荷される頻度の高い荷物を配置していくことを指しています。
実は、ピッキングという作業を細分化すると、商品を数えたり、摘み取ってカゴに入れたりする時間よりも、荷物の配置されている場所まで歩いている時間の割合の方が高いからです。
先ほどもご紹介した動画↓ですが、0:21~0:52で1件のピッキングを完了させていますが、歩いている時間が意外と長いですよね。小さい倉庫であれば、さして問題ありませんが、大きな倉庫になると死活問題です。
荷物の配置を適正化する具体的な方法論に関しては、「ABC分析」と呼ばれる手法を用いることが多いので、当記事でも採用しています。
まず、「ABC分析って何?」という疑問を持たれる方もいらっしゃるかと思います。
アルファベットが入ると拒絶反応を示す方がいらっしゃいますが、とっても簡単なので、諦めずについて来て下さい。
ABC分析とは、売れ行きによって分類する方法です。
✓Aグループ:売れ行きが良い荷物
✓Bグループ:売れ行きが普通の荷物
✓Cグループ:売れ行きが悪い荷物
上記のように分類し、Aグループを倉庫の中心部に、Cグループを倉庫の隅の方に配置するようにします。
ABC分析による配置変更は、以下の手順で、実践することができます。
出荷の履歴を基に、↓下のような表を作成して下さい。
Excelで出荷の履歴を取得できる方は、ピボットテーブルという機能を使うと、簡単にこれまでの出荷回数、出荷数量が求まります。
「ピボットテーブル使ったことないです」、「ピボットテーブル苦手です」という方に向けて簡単に、作り方をご紹介致します。
①:Excelの出荷の履歴に投入されている値を全選択して下さい。
②:挿入タブの中のピボットテーブルをクリックして下さい。
③:下の選択画面が表示されたら、「OK」をクリックして下さい。
④:「商品名」を行のボックス、「出荷回数」、「出荷数量」を値のボックスにドラッグして下さい。
なお、値のボックス内で「合計/○○」となっていればOKですが、「個数/○○」、「平均/○○」となっていた場合は、その項目をクリックして下の画面の通り修正して下さい。
⑤:あくまでも目安ですが、上の表の出荷回数や出荷数量の7割を占めるラインまでをAグループ、9割を占めるラインまでをBグループ、それ以外をCグループと割り振ります。
踏み込んだ上級の話になりますが、ABCのグループ別けの基準となる指標は、「出荷回数」、「出荷数量」、「出荷容積」の3つを含めるとよいでしょう。
なぜならば、例えば、出荷回数は少なくても、大きくて一度に大量に出荷する荷物であれば、たとえ1件の出荷であっても一度に運べるような量に収まらないこともあるからです。
手順①の表を基に、ピッキングをスタートさせる位置から近い所にAグループ荷物を、遠い所にCグループの荷物をという具合に配置場所を変更します。
例えば、3件分のピッキングリストを持ってピッキングするとします。
BEFOREでは、Aグループの荷物が奥の方にあるために、長い距離の歩行がしばじば発生していました。
しかしながら、AFTERでは、長い距離の歩行はほとんどなくなり、短い距離の歩行回数が増えました。
従って、歩行距離が短くなり、効率的になったと言えます。
荷物の配置を適正化してみる価値のある倉庫の特徴とは?
では、どのような倉庫であれば、荷物の配置を見直した方が良いのでしょうか。
結論から申し上げますと、以下の特徴に当てはまる倉庫では、試す価値があります。
特徴①:同じ種類の荷物が入っては出てを繰り返す
特徴②:取り扱い荷物の種類が多い
特徴③:荷物によって売れ行きの差が激しい
「特徴①:同じ種類の荷物が入っては出てを繰り返す」に関しては、過去の実績を基にABC分析を行い、適正な配置にしていくからです。
そのため、異なる種類の荷物が代わる代わる入ってくる倉庫では、実践が難しいかもしれませんが、お客さんが販売予想等のデータをお持ちでしたら、そちらを基に配置を検討するのも1つの手です。
「特徴②:取り扱い荷物の種類が多い」に関しては、荷物の種類が多いからこそ、倉庫の中心から近い所と遠い所の差が生じるからです。
極端な例ですが、1種類しか荷物を扱っていないような倉庫では、検討する必要がありません。
「特徴③:荷物によって売れ行きの差が激しい」に関しては、どの荷物も同じくらいの出荷頻度であれば、配置場所を変更してもそれほどの効果が生まれないからです。
極端な例ですが、出荷回数も出荷数量も出荷容積も全部同じであれば、どこに置こうが効率に一切影響しません。もっとも、パレートの法則で、2割の荷物で出荷の8割を占めるとも言われており、売れ行きに差がないというのは珍しいパターンではあります。
なお、注意点として、例えば扇風機やストーブのように季節によって出荷頻度が大きくことなる商品もあります。例えば、過去数か月で扇風機がよく出荷されていたからといって、9月頃にAグループとしてピッキングを開始する場所の近くに移動させても逆効果です。
また、後続機が発売されたことにより、大きく出荷頻度を落とす商品もあります。例えば、プレイステーション5が販売されてから、プレイステーション4の売れ行きが伸びる可能性は低いでしょう。
このように、過去の出荷履歴を見ているだけでは、適切な配置に導くことができないこともあります。レベルがぐっと上がりますが、取り扱っている荷物の特性を理解することも求められます。
方法④:抱き合わせ荷物の配置の工夫
抱き合わせ荷物とは、ある荷物と一緒に購入されることが多い荷物のことです。
一緒に購入されることが多い荷物は、近くに置くことでピッキング効率が高くなります。
例えば、ゲーム機と一緒にコントローラーが購入されます。ゲーム機だけ購入しても、コントローラーがなければ皆で遊べないからですね。
ゲーム機の近くにヨーヨーやおままごとセットを、遠くにコントローラーを置いていては、ゲーム機をピッキングしてから、コントローラーを取りに行くのが大変ですよね。
だからこそ、一緒に購入されることの多い荷物は、なるべく近くに置きます。
今回の例のように出荷履歴を見なくても分かるようなレベルであれば簡単ですが、取り扱っている荷物に明るくない場合は、出荷履歴を基にリストアップすることになります。
ここで、ABC分析によって配置を変更したけれど、Aグループに所属するゲーム機の近くに、Cグループのゲームソフトを持って行って良いの?なんて疑問も生じることでしょう。
結論から申し上げますと、CグループのゲームソフトでもAグループのゲーム機の近くに持っていく方が良いこともあれば、遠くでも良いこともあります。
その差は、ゲームソフトの購入頻度や、ピッキング方法等他の要因によって左右されます。
抱き合わせ荷物の配置を工夫してみる価値のある倉庫の特徴とは?
では、どのような倉庫であれば、抱き合わせ荷物の配置を工夫した方が良いのでしょうか。
結論から申し上げますと、以下の特徴に当てはまる倉庫では、試す価値があります。
特徴①:抱き合わせで出荷される頻度が高い
特徴②:取り扱い荷物の種類が多い
「特徴①:抱き合わせで出荷される頻度が高い」に関しては、折角調べたので、それほど抱き合わせで出荷されていないにも関わらず、配置を変更しようとしてしまいます。出荷頻度による配置の適性ともバランスを取りましょう。
例えば、1回/月程度しか抱き合わせで出荷されない荷物をCグループ置き場からAグループ置き場に移動させる必要はありません。
「特徴②:取り扱い荷物の種類が多い」に関しては、荷物の種類が多いからこそ、荷物と荷物の間の歩行に時間が掛かります。
極端な例ですが、10種類程度しか荷物を扱っていないような倉庫では、検討する必要がありません。
方法⑤:名寄せ出荷の採用
名寄せとは、同じお客さんから複数の注文が別々に届いた際、それらをまとめてピッキングして出荷することです。
摘み取り(シングルピッキング、オーダーピッキングとも呼ばれる)方式、種まき(トータルピッキング)方式の店別仕分けの場面で使われることがあります。
そもそも名寄せがなぜ発生するかと言えば、以下のようなケースがあるからです。
ケース①:10個注文した後で、15個必要だと気付き、5個追加で注文する
ケース②:同じ会社の別の担当者が、同じ商品を注文する
ケース③:お客さんのシステムにおいて、売れた分注文が入るようになっている
名寄せ出荷を採用してみる価値のある倉庫とは?
では、どのような倉庫であれば、抱き合わせ荷物の配置を工夫した方が良いのでしょうか。
結論から申し上げますと、ケース①②は稀なので、ケース③のような発生頻度が高いような状態であれば、導入するか検討すると良いでしょう。
ケース③のように発生頻度が高い場合は、1日の出荷作業は大規模なものになっていて、ピッキングリストを作成するシステムも素晴らしいものを使っておられると存じます。
そのシステムで、名寄せの機能が備わっているのであれば使用してみる、備わっていないのであれば、システム担当者に相談してみるのが良いでしょう。
ご自身で名寄せすることも可能かとは存じますが、少し難易度が高いように感じます。
最後に
効率をUPするピッキング方法5選についてご紹介致しましたが、いかがでしたでしょうか。
実際にやってみようとすると壁に当たってしまうこともあるかと存じます。
例えば、「方法①:適切なピッキング方法の選択」で種まき式のピッキングリストはどうやって作るの?とか、「方法④:抱き合わせ荷物の配置の工夫」の出荷履歴を基に抱き合わせ荷物をリストアップする具体的な方法は?、抱き合わせ荷物のリストとABC分析の結果等を複合的に考えながら配置を適正化する具体的な方法は?等々。
こういったご質問に関しては、十把一絡げに回答することが難しいため、やってみたいと考えておられる方には、個別にご相談に乗ります。
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