財閥倉庫の海外勤務経験者の特徴3選
「どんな人が海外勤務をするのだろう」、「自分は海外勤務できるのかな?」、「海外勤務したくないけど行かされるのかな?」といった疑問にお答えしていきます。
結論から申し上げると、以下の特徴に当てはまる方が多い傾向です。
①海外勤務を希望していること
②海外で働くことに適応できること
③駐在先の荷主・業務・語学と繋がりがあること
特徴①:海外勤務を希望していること
予め断っておきますが、総合職であれば、どなたでも海外勤務の可能性があります。
ただ、海外勤務を希望することで、確率が高まります。
特に、若年層の研修制度では、希望者であることが条件であると言っても過言ではありません。
実際に、三井倉庫や安田倉庫では、HP上で希望者が対象であることを明記しております。
そのため、海外勤務を希望される方は、入社後の上司や人事とキャリアについて面談する際に、「海外で働きたい」という意思を伝えて下さい。
この際、「なぜ国内ではなく海外で働きたいのか」、「海外ではどのように働きたいのか」といったありがちな質問に対する答えを用意しておくと、意志が強いと評価されます。
「海外が好きだから」という旅行感覚の理由ではなく、建前でも良いので、以下のような会社にとって魅力のある理由が望ましいです。
✓語学力・業務経験を活かして、海外物流を強化したい
✓日系企業だけでなく、現地顧客も獲得して、シェアを高めたい
特徴②:海外で働くことに適応できること
上司や人事に、以下をアピールできていた方が多かったです。
✓環境への適応力
✓業務への適応力
環境への適応力に関しては、職場に馴染み、心身を病むことなく勤務できていればクリアできていると言えます。
なぜならば、言語や文化の異なる国では、建設的な人間関係を築くことが難しくなります。「言葉が通じないから」、「考え方が異なるから」という理由で、コミュニケーションを取れない方では、務まりません。
例えば、言葉が通じないのであれば、ボディランゲージ、図や絵、Google翻訳等を利用して、コミュニケーションを図る必要があります。
だからこそ、国内での勤務において、職場の皆さんと建設的な人間関係を築き、しっかりとコミュニケーションが取れていることで、海外勤務となっても活躍できるだろうと評価されることが大切です。
また、業務への適応力に関しては、任された仕事は、上司の力を借りても良いので、やりきることができればクリアできていると言えます。
なぜならば、研修制度で勤務する若年層であれば、限られた期間の中で、今後会社の役に立つような能力や経験を身に付けることを求められているからです。
実際に、三井倉庫のHPでも、「海外言語」、「異文化理解・組織マネジメントスキル」、「グローバルレベルの視野」を身に付けて帰ってくることが求めていると記載があります。
例えば、国内で倉庫業のイロハは理解した上で赴任し、現地では、特有の物流事情への理解、ローカルスタッフを指揮官としてまとめ上げる経験をすることが求められています。
そのため、早くに業務を1人前にこなすことができるという、海外勤務をする上でのスタートラインに立つことが大切です。
また、30代以上の中堅層で海外勤務される方は、現地法人での役職は、国内での役職よりも大きくアップし、さらには、幅広い業務を担う必要も生じます。
例えば、国内では、平社員であった人が海外では管理職、部長であった人が海外では社長になります。また、倉庫管理だけでなく、営業、経理、システムメンテナンス等を任されることもあります。
なぜならば、海外勤務には大きなコストが掛かるため、上層部には財閥倉庫社員を据えますが、国内では若年層が担うような業務は現地人スタッフにお任せするからです。
そのため、国内で自身の業務を理解することにとどまらず、関係部署の業務等にも理解の幅を広げておくことが望ましいです。
なお、英語や現地の公用語が堪能でなければ難しいのかと疑問を持たれる方もいらっしゃいますが、必ずしも堪能である必要はありません。
実際に、TOEICスコア400~600程度で海外勤務される方は多数いらっしゃいます。
社会人になり、数年英語から離れれば、大卒の方であっても、中学生・高校生レベルの英語しか使えないというのが実態です
特徴③:駐在先の荷主・業務・語学と繋がりがあること
若年層であれば、繋がりよりも海外志向の方が比重が高いですが、中堅層以上で選抜される方は、以下の繋がりを持っている方の比重が高くなります。
✓荷主繋がり
→日本でA社を担当していた。A社と取引のある海外拠点で勤務する。
✓業務繋がり
→日本で通関業務を行っていた。海外でも通関業務を担当する。
✓語学繋がり
→ベトナム語が堪能である。ベトナムで駐在する。
なぜならば、海外勤務に対しては、会社のコストが高いため、中堅層以上で海外勤務される方は即戦力が求められ、そのような方が少数で運営することになるからです。
やはり、荷主の物流事情を理解している、業務が経験のある内容である、現地の公用語が堪能であるというのは、大きなアドバンテージになります。
なお、中堅層以上になると、国内の異動先も、上記3点の繋がりによって決まることが多くなります。
海外勤務ができる確率とは?
各社多少の差はありますが、凡そ以下の通りです。
✓若年層の研修制度
→各世代で10%程度
✓駐在経験者数
→全総合職の20%程度
安田倉庫を例にすると、海外研修を経験することができる人は、毎年1~2名とHPに記載があります。毎年総合職の採用人数は、10~20名程度のため、凡そ10%程度は、海外研修を経験することができると言えます。
また、全総合職の中で、海外駐在を経験したことのある割合は、20%程度です。
三菱倉庫では、2030年度の目標として、駐在経験者比率を25%迄高めようとしており、今後は門戸が開かれるでしょう。
海外勤務を希望されている読者の方にとっては、少し心もとない確率と感じたのではないでしょうか。
確かに、商社や海外売上比率の高い製造業と比べると、確率は低いです。
しかしながら、倉庫会社では、入社数年後に海外勤務を希望している方は、それほど多くありません。
入社時は、海外勤務を希望されている方も、若年層の海外研修の候補者選びの段階では、結婚されていたり、親の介護が必要になっていたり、気が変わっていたりで、私の前後の世代では、希望者の大半は海外研修に行くことができていました。
現在、「海外で勤務したい」と強い気持ちを持っていても、次第にその気持ちが薄れていくこともあります。
そのため、倉庫会社の海外勤務者の割合は、希望する方にも、希望しない方にも丁度良い確率だと感じます。
さらに、海外勤務は、一部の総合職に偏って経験する傾向があります。
実際に、三井倉庫のHPに記載がある通り、海外研修制度参加者は、その後も海外駐在員候補となります。
本当に海外志向の強い方にとっては、何度も海外駐在できるということです。
【2022年最新】財閥倉庫業界の海外勤務実情5項目の調査結果
以下の5項目についての調査結果を、ご紹介致します。
①海外勤務期間
②勤務先
③仕事内容
④求められるもの
⑤待遇
①海外勤務期間
海外勤務の期間は、以下の通りです。
✓若年層の研修制度:半年から2年
✓中堅層以上の駐在:3~10年程
入社数年の若年層の海外勤務は、研修制度の一環であり、会社ごとに期間が決まっております。
一方で、入社10年程度が過ぎた中堅以上の海外勤務には、駐在期間は定められていません。
目安は、3~10年程度で、国内部門のジョブローテーションよりも期間が長くなっております。
なぜならば、海外駐在には会社は多額のコストを負担するので、業務に慣れた少数の社員で営業したいと考えるためです。
②勤務先
勤務先は、以下の通りとなっております。
✓若年層の研修制度:研修生の受け入れを行う拠点
✓中堅層以上の駐在:全海外拠点
若年層の研修制度では、赴任することができない拠点もあります。
例えば、安田倉庫では、英語・中国語の語学力向上も大きな目的のため、海外の研修先は、英語圏・中国語圏に限定されます。
また、一般に治安が懸念される国は、会社の費用もかさむため、避けられます。
中堅層以上の駐在では、全海外拠点が勤務先の候補となります。
財閥倉庫各社の海外拠点の詳細に関しては、各社HPをご参照下さい。
③仕事内容
仕事内容は、以下の通りです。
✓倉庫事業
✓国際輸送事業
「港湾運送事業」や「不動産事業」は、業務展開しておりません。
実際に、三菱倉庫の物流拠点を見てみると、アメリカ、中国等拠点数が多い国でも、倉庫事業や国際輸送事業を行うための倉庫や事務所はあります。
一方で、船関係の現場や不動産はありません。
なぜならば、倉庫会社の海外進出は「国内でお付き合いのある荷主ありき」だからです。
現地企業の顧客を獲得することが主な目的という訳ではありません。
詳しくご説明すると、国内で取引のある荷主が海外に拠点を持つ際に、荷主から必要とされる業務に手を広げていきます。
そのため、「在庫の保管や出し入れを担う倉庫事業」や、「荷物の輸出入の手続きや船便・航空便・陸上運送便の手配を担う国際輸送事業」に限られます。
倉庫事業や国際輸送事業の詳細は、下記の記事でご紹介しております。ご興味がありましたら、ご覧下さい。
「港湾運送事業」や「不動産事業」の海外展開がされていない原因としては、国内荷主からの需要が乏しいことに加えて、それぞれ下記の要因があります。
✓港湾運送事業の参入障壁が高い
✓高収益な不動産用地確保が困難
「港湾運送事業」は国内でも、財閥倉庫等の老舗の倉庫会社のみが業務展開しております。
逆また然りで、日系企業が海外で業務展開することは難しいでしょう。
「不動産事業」は国内では、物流用地であった土地の周りに人が集まるようになり、そこにマンション・商業施設・オフィスビルを建設するようになりました。
ただ、海外で不動産を取得している財閥倉庫は、現状では1社もありません。
今後、海外でも同様の現象が起これば、不動産事業にも手を広げる可能性はあります。
④求められるもの
海外勤務では、国内で培った能力に加え、以下が求められます。
✓現地人スタッフとのコミュニケーション能力
✓現地の物流事情や商習慣への適応力
現地人スタッフとのコミュニケーションは、英語、又は、現地の公用語で行われます。
言葉だけで意思疎通が難しい場合は、ジェスチャー、イラスト、Google翻訳を使ったりしながらコミュニケーションを取ることもあります。
また、現地の物流事情や商習慣は、国内と大きく異なることもあります。
例えば、渋滞が頻繁に発生したり、道路が整備されていなかったりすると予定通り荷物が届かないなんてことは日常茶飯事です。
また、契約に含まれていない仕事は些細なことであっても対応して頂けなかったり、締め切りが迫った仕事が残っていても、定時になれば退社してしまうスタッフがいたりします。
⑤待遇
各社規定、駐在国によって異なりますが、以下の特徴があります。
✓居住費・渡航費は会社持ち
✓現地の物価水準に合わせて変動
✓国内のお給料水準よりも高い
いずれも、皆さんの想像通りではないでしょうか。
海外で仕事をするというのは、苦労も多くなります。その分、国内での待遇を上回ります。
帰国後のキャリア
「海外勤務をした人と国内勤務の人とその後にキャリアに違いはあるのか?」、「転職が有利になるのか?」といった疑問にお答えしていきます。
帰国後は、以下の業務に携わる方が多いです。
✓国際輸送
✓海外営業
✓海外駐在
前述の通り、「荷主」、「業務」、「語学」の繋がりによって、異動先が決まることが多いです。そのため、上記の業務を担当する可能性が高くなります。
三井倉庫のHPでは、海外研修制度参加者は、「将来の駐在員候補」として考えられていると明記されています。
勿論、従前のキャリアとは無関係の部署に配属になることもあります。
なお、海外勤務を経験したからといって、入社同期と比較して、給料が高くなったり、出世したりといったことには影響しません。
あくまでも、海外拠点も会社の全拠点の1つで、会社から海外勤務をして欲しいと考えられた以上でもなく以下でもありません。
勿論、海外勤務期間は、入社同期と比較して給料や役職は高くなりますが、国内に戻って来れば、給料も役職も横一線です。
将来的な出世を目指すのであれば、国内勤務でも同様ですが、海外勤務を経験できたことに満足せず、自身を成長させることが近道です。
財閥倉庫での海外勤務は転職では有利になるか
海外勤務を経験した後、退職される方も一定数いらっしゃいます。
転職のしやすさに関しては、転職市況、個々の能力や適性によって、異なるので一概に答えを出すことは難しいです。
最後に
財閥倉庫の海外勤務について解説しましたがいかがでしたでしょうか。
ブログでは書けないような踏み込んだ内容に関しては、以下のサービスにてご質問頂ければ何でもお答え致します。
特に、就活生や転職希望者の皆さんが人事には聞きづらいと感じるような内容を聞いて頂ければお力になれるのではと存じます。
まずはお気軽にご相談ください。