中小企業経営に役立つ情報発信ブログ5:45歳定年制

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この夏、サントリーの新浪剛史社長が「45歳定年制にして、個人は会社に頼らない仕組みが必要だ」と発言し、SNSでこの発言が炎上しました。「45歳で定年してどうしろというのか!」「単にリストラではないか!」という声が上がるのももっともです。新浪社長は、こうした批判に対し、記者会見を開き「45歳は節目であり、自分の人生を見つめなおすことは重要だ」「クビを斬るものではない」と弁明に追われました。
今日は、この45歳定年制について思うところを書いてみようと思います。
新浪社長の発言は、決して的外れなものではなく、雇用環境を活性化するうえで、一石を投じたものとも評価できます。コロナ禍で激変する雇用環境の中で、キャリアの見直しは不可欠で、新浪発言は、必ずしも時代の流れに反したものではありません。
確かに、人生100年時代が到来し、定年年齢が引き上げられ、令和3年4月1日施行の高齢者雇用安定法では、65歳までの雇用確保(義務)に加え、65歳から70歳までの就業機会を確保するために、高齢者就業確保措置として70歳までの定年引上げ、定年制の廃止などの努力義務を課しています。
新浪発言はこうした時代の流れに反するようにも見えますが、新浪発言の真意は、必ずしも、定年延長による高齢者就業確保に水を差すものではないと思います。
これまでの人生80年時代では、高校・大学を卒業し、60歳の定年までの約40年間が仕事に携わる期間であり、年功序列、終身雇用が基本的な雇用スタイルでした。
しかし、人生100年時代になると、高校・大学卒業から約60年間働かざるを得なくなります。コロナ禍で、日本型のメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用への動きが加速しつつあります(メンバーシップ型とジョブ型については今度書くことにします)。日本でも欧米型のジョブ型雇用が多く取り入れられるようになると、80歳まで一度も転職することなく一社で勤め上げることは現実的でなくなります。そういう中で、60歳になってから、残り40年の人生設計を考えるというのでは遅すぎます。自分のキャリアを見直すのは、45歳位がちょうどよいというのが、新浪発言の真意でしょう。
45歳定年制」は「世代交代リストラ」です。リストラという言葉は、解雇を意味するようにとらえられがちですが、リストラクチャリング(Restructuring)の略で再構築を意味します。人生の再構築の時期としてふさわしい年代は40歳代ではないでしょうか。
ピーターF・ドラッカーは「自己探求の時代」という論文の中で、自己をマネジメントすることの必要性を指摘し、自己の強み、仕事の仕方、価値観を知ることの重要性を述べています。労働者は、かつてのように企業や組織に固定されたものではなく、移動可能な存在になっているのです。自己の強みや得意とする仕事の仕方を活かして、自分の価値観に合致する企業へ移動することで、更に自己を成長させることができるのです。
そうは言っても、いまだに多くの人はできるだけ一つの企業で働き続けたいと思っています。しかし変化が激しく先が見通せず何が正解かわからないVUCAの時代に対応できる企業も限られています。かつてのように企業は事業再構築を行わずして持続的に成長できるものではありません。
どんな成長企業・主要企業も衰退するものです。何十年か先に、自分が働いている企業がどうなっているかわかりません。要は自分の強み、仕事の仕方を磨いて自分の価値観に合った企業へと移動していく、移動できる準備をしておくというのが最も良いのです。
コロナ前にNECが45歳以上の希望退職者を募り、近いところではホンダが2000人の希望退職者を募集しました。長年勤めた企業を突然辞めるには覚悟が必要です。
企業は、長年勤めた従業員が次の仕事へとスムーズに移行できるようにする責務があります。そのためには、「啓蒙」「仕組みづくり」「リスク―リング」の3つが必要です。
突然の発表ではだれもが驚き不信感を抱きます。そのために丁寧な説明による「啓蒙」活動が必要です。副業や兼業を承認・推奨する制度を設け、スムーズにキャリアの道を歩める「仕組みづくり」も必要です。また、従業員が自分のキャリアをアップできる「リスクーリング(学びなおし)」を準備すること、特にデジタル化時代に対応できない中高年の「リスク―リング」の機会を作ることは急務です。
ドラッカーは、本業を持ちながら第二のキャリアを築くことの重要性を指摘しています。
自己の強みや得意とする仕事の仕方、価値観を知り、それらを磨きながら、第二のキャリアを積むことが必要ですし、企業も「企業間リストラ」を意識しつつ、従業員がマルチキャリアを積める仕組みを作り、積極的に従業員のキャリア構築、人生の再構築を支援していかなければなりません。
新浪発言を契機に、ビジネスパーソンも自分の人生設計を考える必要はありますし、企業も従業員の人生設計を後押しすることに心を配るべきです。


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