生活環境向上を目指して思い切って田舎に移住してみた一人のエンジニアのお話

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コラム
東京都心で長年バリバリとエンジニアとして様々な仕事をしてきた私もいつの間にか人生の折り返し地点である40代半ばに。
近年の世界情勢や社会機運の変化により、否応にも自分のライフスタイルや人生観を見つめなおすこととなる。

自分が変わらなくても「世の中は変わっていく」

フリーランスとして業務を請け負っている間は、個人的には日々の大きな変化は少なく、ただ依頼された案件をしっかりとこなしていくことだけに集中すること。どちらかと言えば、変わらないことが日常でクレバーに淡々とこなすことが求められているわけだ。

しかし近年の世界を騒がせているCOVID-19の広がりによる社会の混乱は、個人の事情などお構いなしに広がりを見せ、あっという間に周りの環境を一変させていくこととなる。
今まで当たり前のように行われていた客先での顔合わせや会議などの打ち合わせが全てオンライン会議にとって代わっていく。業務委託として活動していても客先での打ち合わせや会議などの機会が私にとっては数少ない人とのつながりをしっかりと感じられた時間であった。それが全てオンラインの画面上に切り替わってしまったとたんに人とのかかわり方も大きく変わってしまった。
普段は気さくに話して、たまに一緒に食事をしたりしていた仲の良い会社の社長さんとも会う機会がまったくなくなり、画面越しに仕事の話をするだけに。

「自分や相手が変わっていなくても
社会の状況は環境を変えていってしまう」

今までの主な取引先の企業様は都心部、特に港区に集中していたため
いつでも打ち合わせや相談に顔を出せるようにと私も都心部にて住んでいたが
急に会うことが必要なくなると、思いのほか部屋にこもることが多いことに気が付き一人で考える時間も増えていくこととなった。

「これからのことを考えて」

昨年初めて東京で緊急事態宣言が発令し、人の行動が制限されて社会でも大きな混乱がおき、ニュースでもずっとその話題ばかり。
東京都心に住んでいて一番のメリットと言えば、仕事終わりにちょっとおいしいお店に食べに行って、気分転換に映画館に行ったりと遊ぶ場所が豊富にあることなのだが、緊急事態宣言後、急に出かけるな、集まるな、早く帰れと言われてしまうと自分はフリーランストして社会のサイクルからはあまり関係ないところにいると思っていたが、取引先の状況が一変してしまったことで自分も大きく社会のサイクルの一部の中で生活していたことに改めて気が付かされることに。

「仕事は家で出来る、出るなと言われれば出ないで居られるが」

開発などの仕事に没頭していると深夜まで集中していることはよくあることで、ふと食事していなかったことに後で気が付く。そんなことはしょっちゅうなのだが、都心部に住んでいればそんな時間でも沢山の飲食店がやっているので、いつでも自分の好きな食事が取れるのが都心に住んでいる最大のメリットだった。しかし緊急事態宣言後、お店がまったくやっていない。懇意にしていた飲食店が軒並み夜間閉店していて、そんな中でも開いているお店は一部のチェーン店とコンビニだけになってしまった。
こりゃ参ったということで、食事の時間はきっちりと考えながら仕事をするようになる。

そんな時に、GoToトラベルを政府が発表。

こんな時世に旅行だなんて何を考えているんだと最初は思っていたのだが、
そういえば仕事ばかりに囚われてしまっていて息抜きをしていなかったと思い久しぶりに温泉旅行に行ってノンビリしようと決断。

偶々仕事の切れ目ということもあり、必要な打ち合わせは全てZoomなどのオンラインで済ませられる。そもそもノートパソコンがあれば仕事はどこでも出来るので、ひと時の旅行の計画をすることとなった。

「夏の温泉地に一か月」

最初はそんなに長く居るつもりもなく、一週間程度の滞在を考えていたのだが気が付けば長期滞在に。東京在住の私はGoToトラベルの対象時期では無かったのだが、都心にいてもリスクのほうが高いようだったので積極的な自主疎開ということであまり人が来なそうな少しさびれた温泉地を選択。
一週間程度、温泉でゆっくりして美味しい食事でも食べたてリフレッシュ出来たらすぐ戻る予定でいたが気が付けば一か月も滞在することに。

選んだ場所が本当に自然以外何もない温泉地だったため、普段の時でさえあまり宿泊客が少なく昼間でも人がまばら。しかも今回の件で余計に人が居ないせいかどの旅館も閑散としていた。

「貸し切り状態のホテルに興奮」

最初に宿泊予定のホテルに到着し、チェックインを済ませると
ホテルの人が今日の宿泊者はお客様だけなのでゆっくりして行ってくださいと。30部屋以上もある結構大きめのホテルだったのだが、本当にまったく客がいないくてビックリ。大きい露天風呂を独り占めし、とにかく静かに過ごすことができた。
気分転換にいくつかのホテルを泊まろうと考えていたのだが、本当にお客さんが居ないようだ。
次の日も携帯で料理がおいしそうな旅館を見つけ当日予約ができるかの電話をするとあっさり予約完了。
15時に旅館にチェックインすると、旅館の女将さんが
「今日のお客様だけなのでゆっくりしてください」とのこと。
またまたほかの客が居ないらしく、こちらでも岩風呂を独占状態で、いつでも貸し切りで何度も堪能させてもらった。
豪華料理もこれでもかというほどの量が出てきて、しかも美味しい。
こんないいことが続くならしばらくいてもいいかもという気分になってしまった。

「静かな湖畔でのんびり過ごす」

湖くらいしかない場所で、コンビニすらない。食事ができるお店は限られていて、それも17時には閉まってしまう。よく考えれば地域によっては緊急事態宣言とか、時短営業とか関係ないということを改めて痛感する。
東京で20時にお店が閉まって困ったぞと思っていたが、田舎に来ればなんてことはない夕方にはお店が閉まってしまう。むしろこっちが当たり前で、東京に長く住んでいたことで感覚が色々とマヒしてしまっていたことに気が付く。

「気持ちのゆとりが出来たことで新しい発見が」

お店が早く閉まるのと、そもそもお店などが存在しない場所だったので殆どを旅館やホテルの中で過ごす。朝は早起きして朝風呂に入り、昼間は気分転換に湖畔をフラフラし喫茶店でノンビリ過ごす。
おかげで頭の中はスッキリして、仕事をする時の集中力は都心の時とは比べ物にならない。より短い時間で集中力が高まっているのは、ちゃんと適度なリフレッシュが出来ているからだと。

そしてこれからの生活のこととかを考える時間も自然と増えていく。

20代、30代とガムシャラに仕事をしてきて、気が付けば人生の折り返し地点の40代半ばになってしまったのだが。
改めて考えるとこれと言って何がしたいかとか目標とかもあまりない。気持ちと時間にゆとりが出来るといつの間にか仕事以外のことを考えることが増える。そう言えば趣味もろくになく、むしろ仕事が趣味みたいな生活をしていたのだが、せっかくなのでこれを機に何か趣味でも始めようかと考え始める。

なんだかんだ仕事以外のことを考えたり、ノンビリ温泉につかったり、美味しい食事を堪能したりしているうちに気が付けば滞在一ケ月経ち、まさに毒気が抜けていくのを実感した。
このまま東京に帰ることを考えたときに思ったことが、また高い家賃を払って無理して都心に住むことが恐怖を通り越して絶望を感じてしまった。

なぜなら田舎の温泉地に一ケ月泊まった滞在費と
東京で払っている家賃や生活費が対して変わらないのだ。
やっている仕事は同じでコストは同じ。
なのに前者と後者では全然気持ちも身体も全然違うのだ。
今までは、仕事が中心でお客様が中心であったが、ちょっと少し自分本位にしただけで得られる充足感は天と地の開きがある。
これは参った。
帰りの新幹線の中でずっと思っていたのは帰りたくないの感情だけ。

「田舎に住んでいる親族に相談」

すっかりスローライフの魅力にとらわれてしまった私は、思い切って田舎暮らしを実行することに。
長年田舎で不動産屋を営んでいるに親族に相談し、良さそうな物件を紹介して貰い活動拠点を移すことに。
今までは都心でワンルーム14万の家賃から、現在は2Dk一軒家駐車場付きで家賃4万円。もうこれだけでもビックリである。
一時20万以上の家賃を払っていたこともあるのだが、こっちだったらそんな家賃払ったら大豪邸に住めるよと親族に笑われた。

「思いのほか自分の生活スタイルはシンプル」

よく考えなくてもだが、自分の生活はとてもシンプルだと改めて思う。
仕事以外趣味もなく、自宅で仕事ができるのであれば、特に出かけることもなく。寝ると食事以外、あまり考えることもない。
今までであれば時間がもったいないということで、食事=外食という選択肢しかなかったのだが。こちらに移ってきてからは、寧ろ時間のゆとりをどれだけ取れるか。ゆったりと過ごせる無駄な時間をどれだけ作れるかに焦点を置くようになった。

「仕事の選択の幅が大きく変わる」

今までであれば、効率重視の高単価な仕事ばかりを選んで受注してきた。それは当然都内に住んでいたお陰で生活費が思っていた以上にかかっていたからである。最低限稼がなくてはいけない金額が大きく、そのせいで仕事に没頭することになっていたのだが。現在田舎に引っ越したおかげで、今までであれば選ばなかったような仕事を選ぶように。

無理に高単価の仕事を選ばなくて済み、より仕事の質を考えるようになった。

選ぶ仕事が大きく変わる。
今までは高単価で、高度で難しい仕事にやりがいを感じていたのだが、少し自分本位になってくると。
いかにシンプルで面白いか、新しい分野の挑戦などを考えるように。
お陰でお付き合いさせていただく方が大手企業ではなく地方の中小事業者様や個人事業主様中心にシフトしていきました。

逆に事業規模がシンプルにまとまった企業様との取引が増えたことで、より相手に寄り添った形で提案や仕事を請け負うことを実感する。
そして一番大きいのが自分の好きな時間を優先してとることが出来たことで、いまでは農作業を手伝ったり、気が向いたら近くの温泉に入りに行ったり、ちょっと足を運んで観光地巡りしたりと充実した生活を送っている。最近は自炊もしっかりとするようになり、料理を作る楽しみも覚えてきた所、あとはその料理をふるまうことのできる家族が増えれば完璧なのだが、それはゆっくり探していくことにしよう。







【文字数】
約4300文字
【テーマ】
田舎暮らし
【キーワード】
緊急事態宣言
【ターゲット】
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