その日、出来事

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小説

※(40) 過去に掲載したものを、改正して再投稿。【短編集より】


[本文]


その日、職場の母からの連絡…。

震える声で、
『お父さんが…、お父さんが倒れちゃったよ…。どうしたらいい…!?』と…。
母の目の前で吐血して倒れた父…。
動転する母…。
駆け付けた私の目の前に飛び込んできたのは、おびただしい血の海に横たわる 父の姿…。

凍りついた…。
声の限りに叫び出してしまいたかった…。
『なっちゃん!!』
母の声にハッと我に返った。
救急車を呼ぶ
『お父さん!』
声に反応する父。
顔を横に向け、脈を確認する。
救急隊に病態の説明をし、搬送する。
わずか30分程のこの時間が、ひどく長く感じられた…。
即座の対応と処置で、とりあえず一命を取り留めた。
数日後。
子供達を連れてお見舞い。
輸血をし、少し状態の安定した父と、子供達との会話をぼんやり聞いていた。
『みー(私の娘)の花嫁姿見るまで、じっちゃん 頑張るからな』
そう言って笑った父…。
そうね …。
私、結婚式もしなかったし、ドレスも着なかったならなぁ…。
とりとめのない会話をし、寝室を後にする私と子供達を、おぼつかない足どりで見送ってくれた父。

それからしばらくして …
容態が急変し、静かに他界した…。

寂しそうな父の姿
力強くてゴツゴツした父の手
おびただしい量の血の海
モニターが水平になる瞬間
早春の夜の桜吹雪
様々な想いが、
痛みとして脳裏に焼きついている…。

 親孝行
 したい時には親はなし…

 ゴメン…。
  たくさん、親不孝したね、
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