AI時代の泳ぎ方③The Power of Why

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「なぜ?」と問う力について


【前回のおさらい】

・システム2思考の生産性を上げる方程式は、
  「思考エンジンのパワーアップ × 思考段取りのマニュアル化
・前者は、本能的に考えたいという状態を作りだす(=モチベーション)、学びや気づきを蓄積して知識のキャパを広げること
・後者は、問題の定義から解決実行までの思考プロセスを明確にして(=マニュアル化)思考速度を速めること

今回は前者「思考エンジンのパワーアップ」の一つ「なぜ?と問う力」について述べてみたいと思います。

人間の本能の一つに好奇心がありますね。
それを体現する態度が「なぜ?」です。
私たち人類は、「なぜ?」と問う事で、その解答を見つけ、さまざまな進化を遂げてきました。

犬は鎖をほどけない

「なぜ?」がどんな場面で活躍するか見てみましょう。

例えば、最近はあまり見かけませんが、あなたは、犬小屋の前で、鎖が杭にぐるぐる巻きになり、ほどけなくなって難儀して犬がいる場面に遭遇したとします。
あなたはすぐに「バカだなぁ、反対方向に回ればいいのに」と思いますよね。

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これは私たちが、なぜ犬の鎖がほどけなくなったなのかという理屈を知っており、その解決法を知っているからです。

つまり、私たち人間には、
・「なぜこうなったのか?」と問う態度があり、
・「ああしたからこうなった」=原因究明
・「だったらこうすれば解決するのに」=解決アイデア
という思考プロセスを取っているからですね。

その冒頭にくる問いが「なぜ?」です。

システム2は「なぜ?」から始まる

私たちはいつも自然に「なぜ?」を考えています。
それはなぜでしょうか?

これは前回の思考法で言うと、明らかにシステム2の思考法です。
(犬のケースは、正確に言うと、システム2で思考した結果を何回も体験し、既にシステム1の思考回路に内包されているとも言えるかもしれません)

システム2の思考法は、「なぜ?」という人間の本能から始まっていると言ってもいいでしょう。

これはエネルギーを消費するので疲れることではあります。
でも本能なら、それを自然に習慣づけることはできますよね。

なぜ?の効用

「なぜ?」と問う力は、学習プロセスの基本であり、その重要性は広く知られている所ではありますが、改めて見直して整理すると、

1)深い理解の構築
 ・「なぜ?」と問い続けることで、その情報がどのように他の知識や概念と結びついているのかを知ることができます。
2)メタ認知の促進
 ・メタ認知とは、自分が認知していることをより客観的に把握することです。前述のシステム1では認知バイアスの弊害を正すためにシステム2が重要と述べましたが、「なぜ?」と問う態度はその出発点となります。
3)問題解決能力の向上
 ・鎖に絡まる犬の例で挙げたように、その問題の根源や原因を掘り下げ、より効果的な解決策を見つけるのに役立ちます。

など色々な効用に結び付いています。

今後「なぜ?」と問う習慣で大差がつく?

と、ここまで、わりと当たり前のことを言ってきましたが、私が、なぜ?と問う習慣がなぜ大事かと考える理由は以下です。

googleの登場で、「検索」という行為が可能になり、答えが簡単に見つかる時代になったのは、2000年
まだ25年も経っていませんが、人は、「なぜ?」の答えをすぐ得られるようになり、普段からそういう態度を持つ人は、より知性を獲得しやすくなりました。

そして昨年の生成AIの登場。私はここでも大きな段差が生まれると思います。

生成AIはなぜ?という問いに対する答えを直接に出す。しかも、会話という言語のやり取りで。

ここが大きな違いです。

なんだかんだ言って。検索は一手間二手間かかり、間接的でした。思うような回答を得られないでいる間に、興味が失せてしまうこともしばしばありますよね。
ところが生成AIは、自然な会話形式で、なぜ?という疑問をどんどん解消できる装置です。

考えてみれば、これが人間とAIの共創の原点です。今後AIとどう共創するか?という問いの答えでもあります。

AIとの会話を通じて、人が賢くなると同時に、AIも賢くなります。そして、賢くなったもの同士のやりとりは、さらに賢さを増すでしょう。

ですから、普段から「なぜ?」と問う習慣を身につけている人は、AIとの共創で指数関数的にインテリジェンスの幅と深さを増すでしょう。

今後、スーパーインテリジェンスを備えた人間が生まれると同時に、AIデバイドが拡張する予感がします。
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人への説明で「なぜなら~」を磨く

さて、なぜ?に対する回答、すなわち、「なぜなら~だから。」をひとたびAIから得ると、脳は安心します。
ここでおしまいの人は多いでしょう。

しかし、私の経験からアドバイスすると、「それを人に説明できるか?」を念頭に再度考えてみることです。

例えば、友達や同僚に何らかの説明をする時、どこがわからないと言うだろうと想定しながらプレゼンしている自分を想像すると、それに対応するもっとシンプルな答え方を見つけようというモチベーションが湧いてきます。
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AI時代に輝きを増す「なぜ?」と問う力

AIの特徴やクセから、「なぜ?」が大事になってくるかについても考えてみましょう。
AIはビッグデータを駆使して、そこから適確な答えを出してくるわけですが、問題が複雑であればあるほど、それがなぜ出てきたかについては即時には教えてくれません。
例えば、将棋AIでは、刻々と移りゆく形成判断を瞬時に1~99%間の数値で教えてくれますが、それがなぜかは教えてくれず、人間側で判断せざるを得ません。
これはビッグデータを分析するという複雑なプロセスを一気に要約し、人間にわかりやすく教えるという手段がまだないためです。
このような状況で棋士たちは、「この局面から先に行くと、これこれこういうふうになるので、こういう形成判断になるのではないか?」と、その都度類推しているわけです。

つまり、AIの判断結果の理由を常に考える癖が求められているのです。

またもう一つの理由は、巷間言われているAIがもたらすハルシネーション(=もっともらしい嘘)に対し、それを見抜いたり、疑ったりする態度がこれから重要になるということです。

これも、「なぜ?」と問う力が問われていることを意味しますね。
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今後、AIの進化により、前者(AIがなぜ?の理由を教えてくれない)は解消するかもしれません。
しかし、後者(AIのもたらすハルシネーション)は未来永劫リスクとして残るでしょう。

このように、AI時代こそ、「なぜ?」と問う力は、思考の生産性を高めるだけでなく、AIとの共存や協働にも不可欠な力となります。

ということで、今回は、思考エンジンのパワーアップの一つとして、「なぜ?」と問う力について述べてみました。

次回は、もう一つの思考エンジンのパワーアップの方法として、「因果を見極めたい情動」について考察したいと思います。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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