言語聴覚士がADHDと診断された日

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言語聴覚士(+公認心理師資格あり)としていろいろ発信している身ですが、僕自身がAD/HD当事者でもあります。

もっとも、診断基準の中に「日常生活に困難が起こっている状態」という文言があるので今は厳密には診断から外れるのかもしれませんが。
ともかくADHDの特性をもっていることは確かです。

僕がADHDの診断を受けたのは30代前半のときでした。
日本全国がコロナ禍に入って数か月経った頃です。当時、急性期病院に勤めていた僕は張り詰めた日々のストレスから不眠に悩まされるようになっていました。
職場の心理師さんに相談したところ、メンタルクリニックを紹介して頂き受診するに至ったのです。

精神的に張り詰めた状態を緩和するためデパケンという薬を処方して頂きました。
これは本来、抗てんかん薬として使われることが一般的ですが、僕の脳の過活動状態を抑えるために先生は出してくださったようです。
先生の治療のおかげもあり、内服をしながら仕事は休まず継続し睡眠も確保できるようになっていきました。

そして通院開始から数か月が経ったころ。経緯は覚えていませんが先生から提案がありました。「ADHDの検査をうちで受けられるけど、受けてみる?」と。

僕は記憶の限りでは自分がADHDっぽいと主治医の先生に相談したことはありませんでしたので…言動から感じ取られたのでしょう。
僕自身、発達障害のお子さんの臨床をしている立場ですので自分がADHDだろうという自覚はありました。
でもそれはあくまで自己診断です。客観的に診断されたことはなく、支援者の立場としても自己理解を深める意味でも本当に診断基準に当てはまるのか知りたいと思いました。

検査結果はタイトルにもある通り、AD/HDと診断される基準を満たすものでした。
その後コンサータを処方して頂き、飲んでみてその効果に驚いたものです。コンサータについてはまた別の機会に詳しく書こうと思います。

今回記事を書いてみて驚いたのは、これがたかだか数年前の話なのだなということです。この当時と今で、僕の自身に対する考え方や価値観はずいぶん変わったのだなと思いました。

診断を受けたこととは関係なく、この当時ぐらいまで僕は自分の欠点を改善しようと必死でした
もちろん努力したことは努力したことで大切です。
20代の頃までは待ち合わせの時間にいつも遅れる遅刻常習犯でしたが、今ではほとんど無くなりました。
これは自分の見通しの甘さに気づき、自分が想定したスケジュールにプラスどれぐらい上乗せして家を出たら良いかに気づけるようになったためです。20何年付き合った癖でしたが変えられることもあったということです。
ちなみに中学校3年間で200回遅刻しました。今のところ、僕よりたくさん中学生のときに遅刻したという人は聞いたことがありません(しかもこれ、通知表か何かに書いていたから数字を覚えているんですが。
実際はもっと遅刻してた気がするんですよね。先生の温情で少なめに書いてくれたんじゃないかと思っています)。

一方で、現在もどうしても変わらないことがいくつかあります。
一番は…本気で机が片づけられないです(笑)
これも周りから指摘されて、何度も直そうとして片づけテクニック本やらノウハウやら何冊も読み倒しましたが全く活かせない。ADHDの人向けのもろもろのテクニックも試すわけですが、やっぱりうまくいかない。
そのたびに落ち込んで、なんで世の中の人が簡単にできることが自分にはできないんだろう…と悩んでいました。

でもいつからか、いたずらに自分を責めることをしなくなりました。確かに机は汚いかもしれないけど、他に自分の長けているところはあるし、なんでも完璧にできる人なんて存在しない、ということを心から思えるようになったんです。

努力は大事だけど、努力だけではどうにもならないこともある。開き直るというか…受け入れるという感じでしょうか。
まさしく自己受容ですね。変えられないことをずっと努力不足のせいにしていると、本当に延々苦しむわけです。

これは多分、自分自身が歳を重ねるなかで起きた変化というのもあるかもしれませんが、それ以上に。発達障害のお子さんたちのリハビリをしている中で気づかされたんでしょうね…。
口では「この子の長所に目を向けましょう」とか言っているのに、僕自身が自分を許容していないんじゃないかと。

今では当たり前のように、人に対して「それは努力が足りないわけじゃないですよ」と声をかけているけども、ほんの数年前までは自分自身を努力が足りないと責めていた。

いかに自己受容や他者受容が難しいものなのか。いかに発達障害などの、目に見えない障害を理解することが難しいものなのか。人間って悩ましいものだとつくづく感じます。
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