子どもの逆境後の成長に必要なものってなに?<レジリエンスとの違い>

記事
コラム
2014年のアメリカの学術誌「American Journal of Orthopsychiatry」より子どもと青少年の心的外傷後の成長についての研究(1)が勉強になったのでメモ。
▼こんなことを知りたい人向け
・逆境後の成長に必要なものを知りたい
・レジリエンスと何か関係があるの?
・逆境後の成長にはどのようなアプローチがあるの?
※心的外傷を受けるような状況を逆境として文章書いてますのでご承知おきください。
▼逆境後の成長に必要なものってなに?
結論からいうと
「意図的で建設的な熟考的プロセス」
だそうです。
研究者はいいます。
こ成長はトラウマとその余波との闘いの結果として発展すると考えられており、トラウマそのものの経験だけではない。人は自分の新しい現実を理解し、何が起こったのか、そしてそれが今後の人生に与える影響を理解しようと努力することで成長すると考えられている。
つまり
・どんな状態に本人が置かれていたのか
・今本人が置かれている状況はどんなものなのか
・今後の人生にどんな影響があるのか
過去と現在と未来の状況を建設的に解釈する工程が逆境後の成長には重要ですよってことですね。
特に幼い子どものトラウマへの反応、起こったことへの理解、対処のレパートリーは、養育者によって大きく影響されるそうなので、周りの大人がどのように関わるかも重要そうです。
▼逆境後の成長(PTG)とレジリエンスの違い
逆境後の反応としてポジティブな影響がある点では似てるようにも感じますが、概念的には全く違うものになります。
それぞれどのような概念かというと、
▼PTGとは
「トラウマの余波の中での葛藤の結果として、ポジティブな変化を経験するという変容的な過程」
▼レジリエンスとは
「人生の重大な逆境にもかかわらず、積極的な適応を元にした能動的な発達過程」
僕はこの概念をめちゃくちゃ噛み砕いて、PTGは「マイナスなこともあったけどプラスもあるな〜」という認識的な変化。レジリエンスは「よっしゃ!マイナスをプラスにしたろ!」という行動的な変化と解釈しました。
PTGについては苦悩が成長過程の触媒になるとも考えられていて、成長と苦悩が共存している可能性もあるそうです。
なのでPTGは苦悩から解放されるというよりも、苦悩を受け入れながら建設的なものの解釈を取り入れてポジティブな変化を経験しましょうって感じですね。
▼現在有用とされているアプローチ
子供のトラウマに対しては認知行動学的なアプローチが支持されています。特にトラウマに焦点を当てた認知行動療法(TF-CBT)は社会的能力の向上とPTSS、うつ病、不安、行動問題の減少と関連しているそうです。
ただし、子供に対して認知的なアプローチをする場合は、いくつかの認知的な能力を使うのでだいたい7歳以降から効果が現れるのではないかと言われています。
具体的にどんなアプローチがされていかというのを紹介します。
▼不安に対処するための行動スキルの習得
→漸進的筋弛緩や深呼吸。漸進的筋弛緩は身体にグッと力を入れて脱力する方法ですね。
▼感情の識別
→嬉しい、楽しい、悲しい、寂しいという感情の識別。感情表現のボキャブラリーを増やすのも大事。
▼感情的経験のラベリング
→これは楽しい経験、これは寂しい経験というように経験に感情のラベルをつける感じ。
▼感情を適切に表現する
→これは嬉しい。それは不安です。と伝える。アイメッセージを使うと良い感じ。
▼感情を思考と区別
→「うわー!イライラする!あれがむかつく!」ではなくて「私は今自分は怒りを感じているな」と感情と思考を区別する。認知行動療法の脱フュージョン法と呼ばれるものですね。
以上のように思考、感情、行動を結びつける基本的な認知行動療法のモデルが提示され、認知的対処法が使用されるようです。
▼まとめ
と、いろいろまとめてみましたが、根本となるトラウマになるような体験やストレスというのは文化によっても特色があるようで、研究者も以下のように説明しています。
何がストレスとして認識されているか、経験した有害な出来事の性質、そして個人がどのように反応し、それに対処するかは、国や文化によって大きく異なる可能性がある。
日本における逆境後の成長に関する研究もあるようなので、また目を通してみたいと思います。
最後に臨床的な活動をしている人たちに向けてのいい感じのメッセージがあったのでどうぞ。
臨床的に活動している人たちは、PTGを育成するための活動のステップとペースを意識しなければならないことを強調しておくことも重要である。強みに関心を持ち、子どもの資源を活用し、対処法を指導することは、セラピーの初期に行われるかもしれないが、経験の繊細さとトラウマ後の現実の重さを考えると、最初から効果の可能性について疑問を持つべきではない。時間が経っても、PTGの概念は一部の若者や介護者には歓迎されない場合があり、臨床家やその他の人々はその事実に敏感でなければならない。専門家が成長の概念を押し付けたり、「売り込む」ことや、ポジティブな変化について早すぎる時期に問い合わせたりしないことが重要である。また、成長の証拠がない場合、子どもたちに何かが欠けている、何かが間違っていると思わせないことも重要である。
<おすすめ本>
逆境と教育についてのお話はポール・タフ著「私たちは子どもになにができるか」という本が良本。逆境における子どもたちの問題ってどこにあるのか。非認知能力のお話とかもわかりやすく解説されていていい感じの本です。こちらもよろしければどうぞ。
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