法人成のメリット・デメリット②

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法律・税務・士業全般
前回のブログでは個人事業主のときと法人成後の税額の計算式について書きました。


法人成前
{(売上-経費-青色申告特別控除)-所得控除}×税率=所得税・住民税

法人成後
{(売上-経費-給与所得控除額)-所得控除}×税率=所得税・住民税
均等割=法人税等
※売上-経費=役員報酬となるように役員報酬を設定
ここに以下の条件を加えます。
・売上=1200万円
・経費=700万円
・青色申告特別控除=65万円
・事業主控除=290万円
・所得控除=100万円(所得税と住民税で異なる箇所もありますが、無視しています)
・設立した法人の資本金=1000万円未満(→均等割が7万円になる)
これらの値を当て嵌め、実際に税額を計算してみます。

法人成前
所得税:
{(売上1200万円-経費700万円-青色申告特別控除65万円)-所得控除100万円}×税率※=242,500円
※{  }=335万円のうち
195万円以下→5% 195万円×5%=97,500円
195万円~330万円→10% 135万円×10%=135,000円
330万円~695万円→20% 5万円×20%=10,000円

住民税:
{(売上1200万円-経費700万円-青色申告特別控除65万円)-所得控除100万円}×税率※=335,000円
※都道府県民税4%・市区町村民税6%の計10%で計算、均等割・調整控除は額が小さいため無視

個人事業税:
(売上1200万円-経費700万円-事業主控除290万円)×税率※=105,000円
※税率3%や4%の業種はあるものの、大半が5%なので5%で計算
なお医業、作家、タレントなど一定の業種は事業税が非課税となります。
所得税242,500円+住民税335,000円+個人事業税105,000円=682,500円
これが法人成前の税額の合計です。

法人成後
所得税:
{(売上1200万円-経費700万円-給与所得控除額※154万円)-所得控除100万円}×税率=148,500円
※給与所得控除額についてはこちら別ウインドウで開きます。
住民税:
{(売上1200万円-経費700万円-給与所得控除額※154万円)-所得控除100万円}×税率=246,000円
法人税等:
均等割のみ=70,000円
所得税148,500円+住民税246,000円+法人税等70,000円=464,500円

法人成前の税額合計:682,500円
法人成後の税額合計:464,500円
並べてみると一目瞭然、法人成後の方がはるかに税額が少なくなっています。
厳密には個人事業税は事業所得の経費になるのでその分税額の差は詰まるのですが、それでもこのケースでは20万円以上の差が生じる結果となります。

なぜこのように法人成をすると税額が下がるのか、
2つの理由を簡単にまとめます。
①給与所得控除額は必ず青色申告特別控除額以上になる
→青色申告特別控除は最大65万円ですが、給与所得控除額は最低65万円で給与額に応じて増えていきます。
そのためもともと給与所得がない方であれば、給与所得控除額は必ず青色申告特別控除額以上になります。
②法人税等の均等割が増えた分、個人事業税がなくなる
→今回のケースでは個人事業税>法人税等の均等割 でしたが、
ここまでいかなくとも①の効果が7万円以上あれば均等割7万円の増加分をカバーできるため法人成有利となります。

本日もここまで読んでいただきありがとうございます。
最後に書いた理由①について、
厳密には国民健康保険の計算においても①の効果が生じます。
しかしながら、法人を設立した場合、法律上社会保険への加入が義務付けられます。
これは法人成のデメリットになります。
しかし現実には、法人でありながら社会保険の加入をしていないところもあり、そういったところは国民健康保険に加入し続けるためこれもメリットとなります。
(立場上、社会保険に加入しないことは勧めにくいのですが……)

次回は税額面以外のメリットについて書いていこうと思います。
よろしくお願い致します。
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