グッド・ラック
◉ 平日の午前十一時がこんなに穏やかだなんて知らなかった。 ぼんやりと目が覚めても、しばらくは布団の中でもぞもぞしていた。枕元のスマホをとってインスタを開き、知り合いや有名人や、知らない人たちの投稿を流し見する。なんでみんなこんなに早くから投稿してんだろう。そう思って画面の上の時計を見てみると、もう九時を三十分も過ぎていた。袋の底に残ったふりかけのように、わたしは外に出ようとしなかったけど、それでもようやく(たぶん十分くらいかけて)布団を退けて立ち上がった。 部屋の空気は少し冷えていて、瞬時にわたしは布団を名残惜しく思う。一晩中わたしを暖かくしてくれた布団。そんなことを思いながら、薄めの毛布だけを引っ張って身体をくるんだ。ふう、あったかい。 時間も時間だったので、朝ごはんはどうしようと迷ったけど、お腹のほうは正直で、「食べさせてくれ」と懇願するように大きく鳴った。すぐにお昼になるけど、簡単なものならお昼には響かないだろう。ということで、即席ツナマヨコーントーストを作った。ツナとコーンをマヨネーズで和え、食パンに乗せ、チーズをかける。最後にブラックペッパーを少量かけて、あとは焼くだけ。即席とはいえ、平日にしっかりと朝ごはんを作って食べたのはいつぶりか、思い出せなかった。 食器を片付けて、今度は溜まっていた洗濯物を済ます。平日の朝からこんなことして、なんだか主婦っぽい。 洗濯物を干そうとベランダに出た頃、時間はちょうど十一時になっていた。空は清掃業者が全力で仕事をしたあとのように澄み切っていて、少しだけ流れている雲がより空の青さを際立てている。わたしは洗濯かごを室外機
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