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風に揺れるカーテンの教室で

夕暮れの光が差し込む教室で、翔太はため息をついていた。明日の文化祭、クラスでやる出し物の準備はまだ終わっていない。けれども、みんな疲れ切っていて、誰も進んで動こうとしなかった。「もういいじゃん、先生に怒られたってさ」友人の健太が投げやりに言う。その言葉に、教室の空気はさらに重くなった。翔太は胸の奥で「なんとかしたい」と思った。でも、強く命令したら反発される。「お願いだからやってよ」と必死に頼んでも、きっと誰も動かない。どうしたらいいのか分からなかった。そのとき、ふと彼はみんなの顔を見回した。「みんな、本当はどんな文化祭にしたいんだろう?」そう自分に問いかけると、答えが浮かんできた。――楽しい思い出をつくりたい。――みんなで笑って過ごしたい。――自分たちのクラスを誇りに思いたい。翔太は立ち上がり、窓辺に寄りかかって話し始めた。「さっき健太が言ったみたいに、怒られて終わる文化祭でもいいかもしれない。でもさ、それって後で思い出したときに、ちょっと寂しくない?」数人が顔を上げた。「もし、今ちょっと頑張って、この教室をみんなで飾りつけたらさ。明日ここに来たお客さんが『すごい!』って笑顔になってくれる。それって、めっちゃいい思い出にならない?」言葉を聞いた瞬間、みんなの中で何かが変わった。「……たしかに。せっかくなら楽しい思い出にしたいよな」「オレ、黒板の絵描くわ」「じゃあ、紙花もう少し作ろっか」空気が一気に温かくなり、みんなの手が動き始めた。翔太は胸の奥で、静かに安堵した。「相手が本当に大事にしていることに寄り添う」その大切さを、夕暮れの教室で身をもって知ったのだった。――そして文化祭当
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