双極性障害について〜鬱転〜

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皆さんは「双極性障害」についてご存じですか? 「双極性障害」とは、気分の上下が異常に激しくなってしまう脳の病気のことです。それは、何をする気にもならないほど落ち込んでしまう「鬱期」と、休憩することなくハイテンションで動き続けてしまう「躁期」に分かれていて、この二つが繰り返されていきます。また、「双極性障害」は「I型」と「II型」の二つに分類されるのですが、私の診断は「双極性障害II型」でした。「II型」の方が「I型」と比べて、躁状態の気分の波は比較的小さいようです。

※私は精神病の専門家ではありません。あくまでも、一人の患者としての体験や見解を、ここでお伝えしたいと思っております。

私にとって、ある年の丸一年間は「躁状態」が続いた年でした。常にハイテンションで、どんな取り組みに対しても前向きで、睡眠時間を多く削っても平気な一年でした。そのような状態が一生続いてくれるなら、それはそれで良いのですが、徐々に体には異変が生じていきました。

まず、他者との円滑なコミュニケーションが困難になっていきました。自分としては真っ当な見解を述べたつもりだったのですが、当時の自分は高圧的、もしくは盲信的に受け取られるような振る舞いをしていたのかも知れません。

また、思考回路が混乱し出したことも覚えています。体は衝動的に動くのに対して、思考は一つにまとまってくれません。「〇〇をしよう!」と決めた次の瞬間に、「やっぱり△△をしよう!」と考えを変えるなんてことは日常茶飯事でした。その結果、単純な作業すらもおぼつかなくなっていきました。

かつて、双極性障害を扱った書籍で双極性障害を患った人の奇行が書かれていました。その人は、髪が伸びたからといって、会社の洗面台を使い自分で髪を切り始めた、というのです。周りの人からすると、これは非常に不可解な行動です。
「床屋や美容室に行けばいいじゃない?」
と、誰もが思うはずです。しかし、双極性障害を患った私の立場からすると、その人の気持ちがなんとなく分かります。双極性障害を患った人というのは、当たり前の考えがすっぽり抜け落ちて、極端な思考に走ってしまい、かつ衝動的に行動してしまうものなのです。

さて、そんな躁状態が鬱状態に転換したのは突然のことでした。
「疲れが溜まっているような気がするから、長期休暇を取って体を休ませよう」
と思い、実際に1週間の休暇を取った結果、躁状態から鬱状態に転じてしまいました。休暇が明けても体は全く動いてくれません。頭の中もまるで濃い霧がかかったような感じで、考えが働くことはありませんでした。

仕方がないので、休暇の期間を延ばすことにしました。幸い、当時の私は大学院生の身分で、1年生の時点で卒業に必要な単位も取り終えていたので、休みを取りやすい環境にいました。その結果、1か月があっという間に過ぎてしまいました。生きるために必要最低限のこと以外、ほぼ何もできないまま1か月という長い期間が過ぎてしまったことに驚きを隠すことができませんでした。しかし、だからといって何をすれば良いのかも分かりませんでした。

翌月からは無理をして通学を再開しようと試みました。しかし、その1か月間で心の中はかなり変わってしまったようで、今まで当たり前に通えていた大学院の研究室に足を踏み入れることが全くできなくなってしまいました。理由は分からないのですが、人と会ったり喋ったりすることが怖くて怖くて仕方なくなってしまいました、

この時期の心の中は複雑でした。実体がわからない何かに迫られるような恐怖が続いていて、ある日突然に深い悲しみに襲われたり、テレビを見ているだけなのに激しい自責の念に襲われたりしていました。というか、テレビを見ることすら、苦しくてできなかったことを覚えています。テレビをボーッと見て、時に笑ったり、時に感動したりできるのは、心が健康な証だということを、この時初めて理解しました。

この頃から医療機関に頼ろうと思い、カウンセリングを受けるようになりました。カウンセラーに「消えてしまいたい…」と、その時の正直な気持ちを伝えたら、驚いた顔をされたことを覚えています。そのカウンセリングの初回では、全く話をまとめることができていなかったような気がします。しかし、こうしてカウンセリングに通い続けることで、心の状態は少しずつ向上していったのでした。
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