幸せを呼ぶお祭り屋台の小説:お祭り屋台のピンキーリング+【朗読動画】

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 おはようございます。こんにちは。こんばんは。ブログを閲覧いただきありがとうございます。

 youtubeにて「語り部朗読BAR」というチャンネルを運営しております。
 自身で小説を書き、声優さんに朗読していただいたものに動画編集をして公開しております。
 たまに作者自身の北条むつき朗読もございます。

 今回ご紹介の朗読動画は、幸せを呼ぶお祭り屋台のお話です。
 良かったら聴いていただけると嬉しいです。

・朗読動画もご用意しております。
・文字をお読みになりたい方は、動画の下に小説(文字)がございます。
◉屋台のピンキーリング
 作者:佐伯歌夜
 朗読:悠奈ゆかり

 私は、今まで彼氏ができたことがない。
 まわりのクラスメイト達は、彼氏ができた、彼女ができたとよく恋バナをしているが、私にとっては無縁の話題だ。

 いつも私は聞き手に回って、友達の恋バナに対し、まるで赤べこのようにウンウンと相槌を打つだけ。
 そんな、モテない歴イコール年齢の私は、せっかくの夏祭りだというのに、なぜか父親とお祭り会場を歩いていた。

「ねぇ、なんでお父さんがついてくるわけ?お父さんと一緒に夏祭りに来る女子高生なんて、誰かにバレたら恥ずかしすぎるんだけど」

「友達が、夏風邪ひいて来れなくなっちゃったんだろ? 1人で回るよりはいいじゃないか」

「1人よりは寂しくないけど……」

「それなら文句を言わない! お父さんと来るのが嫌なら、彼氏でも作りなさい」

「それができるなら苦労しないよ」

 どうせ男の人と歩くなら、彼氏が良かった。
 どうして父親……。しかも普通のオジサンと、夏祭りを楽しまなければならないのか。
 私は深いため息をついた。

 綿あめを食べながらしばらく屋台を見て回っていると、父親がふと立ち止まった。

「ほらこの屋台、見てごらん」

 指をさされたので見てみると、そこはアクセサリーの屋台だった。
 いかにも安っぽい感じの、無駄にキラキラ光るアクセサリー。
 でも、私はアクセサリーを見るのは嫌いじゃないから、屋台に一歩近づいた。
 すると父親が、私の耳元でこんなことを言った。

「知ってるか? 幸せになれる屋台の噂」

「何それ?」

 私がきくと、父親は得意げに話し始めた。

「職場の人に聞いたんだ。お祭りに出店している不思議な屋台で、アクセサリーを買って身につけると、幸せになれるっていうんだ」

 私は思いきり顔をしかめてしまった。
 とても胡散臭い。
 でも父親は、いぶかしがる私の様子なんて気づかずに、屋台のアクセサリーに手を伸ばした。

「すみません、これ下さい」

「はいよ! まいどあり」

「え、お父さん!」

 商品を受け取った父親が、私の手にそれを押し付けてくる。

「そのピンキーリングを身に着けていれば、彼氏ができるかもしれないぞ」

ピンキーリングを、小袋から取り出してみる。
 真っ赤なハートモチーフが付いた、子供っぽいデザインだった。
 おまけにハートに矢が刺さってる。
 もしかしてキューピッドの矢? はっきり言って、センス微妙。

「よりにもよって、どうしてこれなの?」

 私が不満を漏らしても、父親は知らんぷり。
 仕方なくそれを手に持ったまま、私は帰宅した。

 部屋に戻ってから、私は一応そのピンキーリングを小指にはめてみた。

「やっぱりダサイ」

 私はピンキーリングを抜こうとした。
 でも、おかしい。ピンキーリングが抜けないのだ。

「え? どういうこと?」

 何をどうやっても抜けない。私の小指が太すぎるわけじゃない。本当に抜けない!

「幸せになるどころか、呪いのピンキーリングじゃん!」

 一晩格闘したけど、結局ピンキーリングは抜けなかった。

 翌日私は仕方なく、ピンキーリングを付けたまま登校した。
 でも、生徒指導の先生に、あっさりと見つかってしまった。

「おい、何だその小指のリングは?早く外せ」

「外せないんです」

「意味不明なことを言うな!」

 生徒指導の先生は、とても厳しいし、しつこい。
 私の言うことを信じてくれるわけもなく、私は廊下で、20分くらいずっと叱られていた。

「先生やめてください、この指輪は本当に外せないんです!」

「そんなにオシャレがしたいのか? そんなことをするヒマがあるなら勉強しろ」

 他の生徒達が、私を遠巻きにに見ている。恥ずかしい。
 私だって、外せるものなら外したい。
 私が泣きそうになりながら訴えていると、後ろから足音がした。

「おい先公。そこまで注意する必要あんの?」

 そう言ってきたのは、ピアスをチャラチャラと沢山つけ、鋭い目つき、目元に喧嘩のあとなのか傷がつき、ペッタンこの鞄を持ちダボダボのズボンを履いた、不良系の男子生徒。
 確か彼は、1つ上の先輩だったはず。
 校則の厳しいこの学校で、唯一、ド金髪にしている。悪い意味での有名人だ。

「お前、またピアスなんか付けて!」

「今はその子の話してんだよ。指輪くらい、しててもいいだろ」

「よくない! 校則で決まってるんだ」

「校則校則って、うるせーなぁ。たかがアクセサリーだろ」

 先生の意識が彼に向いて、私は逃げられる状態になった。
 もしかしたら、彼はわざと、自らオトリになってくれたのかもしれない。
 もしそうだとしたら、なんて良い人なんだろう。
 私は彼に感謝しつつ、その場から走って逃げた。

 何とか無事に放課後がやってきて、私は校門前で待ち伏せをしていた。
 廊下で私を助けてくれた先輩に、お礼を言うためだ。

(彼、ちょっと不良っぽそうだけど、カッコよかった。うう、まだドキドキしてる……)

 そんなこんなで待ち続けていると、彼が玄関から1人で出てきた。
 私は勇気を出して、校門の陰から飛び出した。

「あの! 昼間はありがとうございました」

「ん? ああ、あの時の……」

 彼は私の顔を覚えていた。それだけでも少し嬉しい。
 やはり少し不良っぽいけど、話していて嫌な感じではない。

「すごく助かりました。私の気のせいでなければ、私を助けてくれたんですよね?」

「ば、バカ言ってんじゃねーよ。あの先公が気にくわなかっただけだ」

 彼は少し気恥ずかしそうに、私から目を背けていった。
 不良で怖そうな見た目だけど、照れている姿はちょっと可愛い。
 私、今まで意識したことなかったけど、意外とこういうタイプの男の人が好きみたい。
 そう気づいたら、私の口は勝手に動いていた。

「一緒に帰ってもいいですか?」

 突然の誘い……というかお願いに、彼は一瞬驚いたようだった。
 でも、少し考えたあとに頷いてくれた。

「ほかに用事もねーし。一緒に帰るくらいなら別にいいけど」

 そして私は、彼と一緒に帰った。
 彼の家が私の家の近所なことを知り、また少し嬉しくなってから、お互いのメアドを交換してから別れた。

 その日から、私は彼ととても仲良くなった。
 私は、相変わらず小指にはまったままのピンキーリングを見て、「幸せになれるっていう屋台の噂は本当だったのかも」と思うようになっていった。

 そしてとうとう、2人きりでデートをする日がやってきた。
 人生初の、男の人とのお出かけ。
 待ち合わせ場所に行ってみると、なんと彼はもう来ていた。

「来るの早いですね」

「遅刻なんてしたらカッコ悪いだろ。よし、行くぞ」

 その時彼は、さりげなく手を繋いできた。
 男の人と手を繋ぐなんて、もちろん初めての体験。
 ドキドキが止まらなくなった。

(どうしよう、これじゃあ本当に恋人同士って感じ……!)

 彼がさらにギュッと手を握ってきた時。
 彼の指に、何かがはまっていることに気がついた。

「え?」

 気になって彼の手を見る。
 彼の小指には……。ピンキーリングがあった。
 彼は私の視線に気が付いた。

「どうした? 男がピンキーリングなんてしてたら変か? 俺は意外とおまじないとか信じるタチだからよ、噂の屋台でピンキーリングを買ったんだ。幸せになれる屋台の噂、お前も知ってるか? 半信半疑だったけど、俺はお前とデートできて幸せだから、本当だったのかもなぁ」

「あれ? このピンキーリング、私のと同じ!?」

「ん? もしかしてお前のも?」

なんとビックリ。
彼が小指にしていたのは、赤いハートに矢が刺さったデザインの、私のと全く同じピンキーリングだった。

「私も屋台の噂を聞いて、その屋台でピンキーリングを買ったんです」

「マジかよ。信じられねぇ。偶然だな。いや、あの屋台が本物だったなら、偶然じゃなくて必然だったのかもな」

 2つのまったく同じピンキーリング。
 私はこのピンキーリングのせいで先生に叱られていたから、この指輪のお陰で私は彼と知り合いになれたんだ。

「っていうことは、あの先生が恋のキューピッド?」

「よせよ、あんな先公がキューピッドとか。キューピッドはもっと可愛いだろ」

 先生がキューピッドかどうかはさておき、私と彼がピンキーリングのお陰で幸せになれたのは確かだ。
 あの屋台は、また来年もお祭りに現れるのだろうか?
 来年は、彼と一緒に、夏祭りでその屋台を探したい。


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 今回の小説は北条むつきが書いたのではなく、ココナラで活動している佐伯かやさんと言う方です。この方は小説の販売も行なっている方です。皆様よかったら、購入してみてはいかがでしょうか?




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