ちょっとマニアックな警察コメディ小説:SとM刑事(デカ)前編ep1+【朗読動画】

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 おはようございます。こんにちは。こんばんは。ブログを閲覧いただきありがとうございます。

 youtubeにて「語り部朗読BAR」というチャンネルを運営しております。
 自身で小説を書き、声優さんに朗読していただいたものに動画編集をして公開しております。
 たまに作者自身の北条むつき朗読もございます。
 今回ご紹介の朗読動画は、ちょっとマニアックな路線のSっ毛上司とMっ毛部下が繰り広げる警察コメディのお話です。
 良かったら聴いていただけると嬉しいです。

・朗読動画もご用意しております。
・文字をお読みになりたい方は、動画の下に小説(文字)がございます。
◉SとM Servant & Me刑事(デカ)
 この変態ドM野郎! 全てはあなたの為
作 者:北条むつき
語り手:ムラサキリンコ

◉第1話 SM刑事(Servant & Me:使用人と僕)

「テメー何やってんだあ。今回の山舐めてんのか?」
「はっはい! すっすみません……」
「すみませんじゃねえ! そもそもなあ……」

 この荒っぽい怒り方は楓文香《かえでふみか》先輩。目元がクリっとした整形でもないに、整った顔立ち。
 タワワに実ったお胸に、括れたウエストから伸びるスラリとした長い足。
 スタイルが良くて、白のブラウスにスーツがよく似合う。男勝りのこの態度。
 でも一番はその黒いヒールをツカツカとさせて歩く姿が堪らなく良い。ってか踏まれたい……。
 否、基《もとい》。我、警官であることを忘れそうになるぐらいに、今怒られているこの瞬間が……。

 快感なのでーす!

「何、ニヤついてんだ! 犯人らしき輩を見つけたら、職質の前に一報入れるのがオメーの仕事だろうが」
「うっすぅ!えへへ……」
「だから何ニヤニヤしてんだってつうの! 話をちゃんと聞いてんのかい!?」
「ハッ、ハイッ!」

 そう、その怒ったキリッとした眼差し。眉を挙げて、怒り任せに指差し棒で指すその仕草。ずっと続かないかなぁ?

「何ボーッとしてんだい、ほらっ行くよ!」
「ハッハイ!」

 思わず見とれてしまったが、バディを組んでいる楓先輩とは、この窃盗事件を担当して三日。
 犯人らしき人物に辿り付けたものの、職質した男に逃げられるという失態をしてしまった僕に対し、楓先輩は先ほどから指差し棒を手にして怒鳴りつけたばかりだった。

 しかしその怒り方が堪らないのだ。僕が職質をした男は、持っていたバッグで僕を殴り逃走。叩かれたバッグの痣が顔に出来たのかと思うぐらいの衝撃だった。でもバッグビンタという行動は、Mの僕には堪らなかった。

 頬を両手で塞ぎ、逃げる男に、「もっとぉ!」と叫んだぐらいだ。その男は異様な顔つきになり逃走した。僕にとっては素晴らしいことなのに……。

 楓先輩と車に乗り込む。
 車を運転していると助手席の楓先輩がタバコを吹かす。その態度が嬢王様のような足の組み方で色っぽい。

 ああ、このままそのタバコを、ぼっ僕のこめかみに……。まあ、それは冗談だけど。その時、無線から一報が入った。

 グレーのジャンパーに黒のマンハッタンメッセンジャーバッグを持った、冬でもないのにニット帽の男が、今、河原町のネットカフェから出てきたとの通報が入った。我々の車は河原町の路地裏に進入してパーキングに停めた。

 目撃情報があった高島屋の路地裏から日本家屋が見える寺町通りへと突き抜ける。我々は男がゆっくりと寺町通りを三条方面へとゆっくりと歩く男の姿を確認した。楓先輩が一言僕に告げた。

「お前は、ゆっくりと後をつけろ、私が先回りして挟み撃ちにする」

 僕は男の後をゆっくりとつける。
 そして楓先輩が男の前方からゆっくりと近づき、男に声をかけようとした瞬間、男はその態度に違和感を感じ、後ろを振り向き、僕の方向へと向かって来る。

「多田野、そっち行ったぞ。立ちはだかれ!」

 楓先輩の声に、僕は、男の前に手を広げ、立ち止まる様に声を張り上げた。

「止まりなさい。さもないとひどい目に合います」

 丁寧な口調で僕は促した。いや、元々Mな僕にはこれが限界だった。
 すると男は、昨日と同じく僕をわかった上でか、メッセンジャーバッグを両手に持ち、僕の顔面めがけて振りかぶった。

 ガツンとした重く鈍い音がしたと共に、殴られたという欲求が爆発した。
 同時に楓先輩の「多田野、大丈夫か」という声が一瞬響いた感覚。僕は膝から、男の股間目掛けて顔面から崩れ落ちた。

 体が痺れたような快感を味わう様に気を失った。

 気がつくと楓先輩が僕の頬を叩いていた。何度も何度も。そしてそれが心地よくて、おもわず笑った。すると楓先輩が「怖えーよ馬鹿」とまた怒鳴った。

 横を向くと先ほどのメッセンジャーバッグを持ったニット帽の男が制服警官に手錠をかけられてパトカーに乗せられようとしていた。

「お手柄だぞ多田野。お前の股間アタックがなければ捕まえられてないからな!」

 楓先輩は僕を褒めながら、顔を引っ叩いた。

「ああああ!」

 そう思わず出た叫びに、楓先輩は訪ねてきた。

「怖えーよ! お前、Mか!?」

 ニッコリ笑い、頷いた僕に先輩は無言になり、黒いヒールで僕の足を踏んでいた。

 かっ、快感……。







◉第2話メタボ


 そいつのスピードを1とするならば、楓先輩と僕のスピードは10。逃走劇はあっという間に肩が付くはずだった。
 丁度昼時のオフィス街に現れた窃盗犯を追い詰めていた。オフィス街には似ても似つかないTシャツ姿に、ジーパンから豚の様に伸びる太い足。

 楓先輩と別の事件を追って、昼食を摂るために入ったラーメン屋から出た後のことだ。小さく「キャ!」という女性の悲鳴がした。

 男がドタドタと地面を揺らせる様に遅速で走る。すぐに追いついた我々だったが、体型で僕達を勝る男は、楓先輩のパンツが見えるぐらいの足を挙げたキックにも太い腕で交し、楓先輩を地面へと叩きつけた。

 僕は楓先輩が心配でその場で助けようとしたが、楓先輩は、僕に「何をやっている。お前が追え!」と痛みを堪えて腕を振るう。

 僕は、すでに遠ざかる太っちょ窃盗犯を追い駆け出した。
 ものの数秒で追いついたが、僕には喧嘩拳法みたいな楓先輩の様な手法はない。
 だから僕は、男の大きな背中に飛びかかる。そして首を後ろから持つ様におんぶ状態になった。その時、右から肘打ち、左から肘打ちと僕の体に打ち込まれる男の肘。それをまともに食らう僕は……。

 声を張り上げて歓びそうになった。繰り出される肘打ちは、僕にとっては快感への極み。必死に首元を掴んで離さないでいる僕の後ろから楓先輩の掛け声が挙がった。

「そのまま堪えてろ」

 その次の瞬間、僕の背中にヒールの衝撃が走った。その衝撃と共に、僕は「ああああ!」と、歓喜の声をあげる。
 太っちょの窃盗犯は前のめりに崩れ去り、地面に叩きつけられた。僕の腕先の男の首元から『ゴキッ!』と異様な音が鳴った。
 窃盗男の首は無残にも横によじれ、気絶をしていた。

「良くやった多田野」

 倒れた後、見上げると窃盗にあった会社員の女性と楓先輩が僕を見て声をかける。

「大丈夫ですか? ありがとうございます!」
「良くやった多田野」

 そう楓先輩が声を挙げた時、楓先輩のヒールが僕の太ももを踏んづけていた。

「ああああ!」

 声を出した時には、楓先輩は目を輝かせて笑っていた。パトカーのサイレンが鳴り響くまで踏んづけ続けていた。窃盗犯はとうに失神しているのにも関わらずにだ……。

「ほおーれー……。グリグリッ!」


◉第3話本物

「せんぱーい!」

 僕は楓先輩の名前をずっと叫んだ。先輩を乗せた黒のセダンが見えなくなるまで。
 後手に羽交い締めに合い、サングラスをかけた男二人に、腕を押さえつけられている僕は、惨めに檻から出た猿を取っ捕まえる様に地面に抑え付けられていた。

 いつもならその抑え付けられ方に歓びを露わにするはずだったが、今回はそういう感情は襲ってこなかった。

 窮地に立たされた僕は叫んだ。だが、その声は先輩に届くことはなかった。夜の繁華街から外れた港。誰もこの叫びで駆けつけてくれる人などいない。

 そして大好きな楓先輩はどこかへ連れて行かれた。僕は恐怖を感じ、泣き叫ぶ様に先輩の名を呼び続けていた。
 黒いスーツの男が、僕の後頭部に冷たい鉄の塊の様なものを当てた。

「静かにしないと、鉛が後頭部を撃ち抜くぞ」

 そう言われて、我を取り戻すと心を落ち着かせた。港には小型艇が停泊しており、それに無理やりに乗り込ませる。

 目隠しをされて、ボートは暗闇の海を滑り出した。潮風が鼻に付く。どこへ連れて行かれるのか。恐怖にチビリそうになりながらも我慢していると前から芳しい女性用の香水の匂いが潮の匂いに混じり近づいてくる。

「玉が縮み上がったか?」
 図太い女の掠《しゃが》れた声がして、僕の股間をぐっと握った。

「ヒッ!」

「仕方あるまいて……フフフフッ。これからがお楽しみの時間だ」
「どっどう言うことですか?」
「あはははははっ。我々に逆らった者への報いは受けてもらうぞよ」

 まるで香港マフィアの様な言い回しと少し辿々しい日本語に、僕は更に楓先輩のことが心配になった。そう思った瞬間だった。

 ヒュルッという音ともにボートの床を叩きつける何かの音。そしてパシンッ! と何度もボート床を鳴らす。その音を聞いていると、先程とは違う感情が沸き上り、思わず笑みがこぼれそうになったが、我を保っていると女が言う。

「無理に考えなくて良いぞよ? お前の事は良く知っている! あの偽物《にせもの》上司より、本物のドMのお前の方が絶対に気にいるぞ? もう直ぐ付く。楽しみにしておけ!」

 鞭女の言葉に、僕の動悸は何故か高鳴った。

つづく


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