採用面接で聞かれることが多い質問の1つである「自己PR」。あらためてPRしたいこと、と問われて、即答できる方は少ないのではないでしょうか。
私は現在企業の採用支援、求職者の就業支援を行っています。ご支援する求職者に「自己PR」を伺うと、「コミュニケーション能力」と答えられる場合が、特に若手に多いと感じています。採用する企業側も、「コミュニケーション能力」を重視する傾向はここ数十年続いているので、PRすることとしては間違ってはいません。
出典元:『一般社団法人 日本経済団体連合会』2018 年度 新卒採用に関するアンケート調査結果
しかし「私はコミュニケーション能力に優れています」といったところで、具体的になにがどう優れているのかは、採用担当者は理解できません。コミュニケーションとは具体的に何を指していて、それがどうして優れているのか、を具体的に話ができないと、逆に「コミュニケーション能力不足」という判定をされてしまうこともあります。(抽象的なことを相手にわかるように伝えられない、という判断。または自分としっかり向き合っておらず内省ができない、という判断に至るケースもあります。)採用面接では、「コミュニケーション能力に秀でています」といった抽象的な表現ではなく、「傾聴力が優れています。」、「顧客の課題に対しての提案をしていくことが得意です。」と等、具体的な「強み」として伝えていく必要があります。
「コミュニケーション能力」が社会人として、また採用面接で重要であることは様々なところで論じられています。その中でも「聞く」というところに重きをおいた指南は大変多いです。そこで今回は、コミュニケーションの中でも「伝える」という点について考えていきたいと思います。
仕事において「伝え方」を誤ると、うまく伝わらなかったり、場合によっては場の雰囲気、相手との信頼関係を崩してしまうことにもなりかねません。採用面接も同様です。そこで役に立つことの1つが、「アサーション」というコミュニケーション方法、考え方です。
「アサーション」とはなにか、また「アサーション」を身につけるためにどうしていくか、についてまとめていきます。
アサーションとは
一般的に「コミュニケーション」は、「意見を聞く」「意見を伝える」「双方の意見を検討し、アクションを起こす」という3段階に分けることができると言われています。
その3つのステップにおける「意見を伝える」という段階で重要になることの1つが「アサーション」です。傾聴を前提としながら、適切な自己主張ができるスキルのことを指します。
自分の意見を話すことは大切ですが、相手の意見を聞かなかったり、独りよがりになってしまうと、話を進めることは難しくなってしまいます。採用面接でも、面接官の質問の意図を意識せず、PRしたいことばかり話してしまうと、どれだけ優れたスキルがあっても「コミュニケーション能力が不足している」との判断に至ってしまいます。
特にビジネスの場で重要なのは、「相手の意見や考えを尊重しながら、具体的なアクションを決め、実際に仕事を動かしていくこと」です。自分が言いたいことを言えたかどうか、は重要なことではありません。相手を尊重したコミュニケーションがあるからこそ、様々な意見を戦わせることができ、結果、双方が腹落ちできる具体策を出していくことができます。
アサーションのタイプ
アサーションとは適切な自己主張である、との説明を致しました。まずは自己主張にはどんなタイプがあるのかを整理していきたいと思います。
・アグレッシブ(攻撃型)
自分の思ったことをはっきり主張でき、力強いリーダーシップが特徴です。 逆を言えば押し付けがましく、他者に高圧的な態度をとる傾向があります。
・ノン・アサーティブ(非主張型)
自分の意見よりも他者の意見を優先させることで物事を前に進めます。
物事は前に進みやすいですが、自分の意見を出さないからこそ
責任回避を優先し、他責思考が強くなってしまうこともしばしばです。
・アサーティブ
アグレッシブ、ノン・アサーティブの中庸、バランス型です。主張すべき
ところは主張し、相手を優先すべきタイミングは相手を優先させることが
できる、こと「アサーション」においては理想形と言われます。
アサーションを身につけるために
アサーションスキルを身につければ、面接でうまく自身のことをPRしたり、入社後の業務でも、周囲をうまく味方につけながら、大きな仕事に取り掛かっていくこともできます。「アサーティブ」なタイプになっていくために、指針となることを以下にまとめました。日常生活から意識していけることなので、「自分の考えをうまく相手に伝えたい」とお考えの方は、ぜひ取り組んでみてください。
1、自分の考えを言語化し、しっかりと伝えていく
「なんとなくいやだ」「なんとなくこうしたい」では相手に伝わりません。
自身の考えを普段から言語化し、しっかりと発信することが大切です。
2、感謝の気持ちを持つ
コミュニケーション、アサーションは、他者がいてはじめて成立します。
自身の考えや意見を聞き、議論できる他者がいることに感謝しましょう。
それが相手の意見や考えを尊重することに繋がっていきます。
面接官は敵ではありません。
3、自分の言葉に責任を持つ
率直な意見や考えも尊重されなければなりませんが、同時に責任を伴わなけ
れば、ビジネスの場では他者との信頼関係を築くことはできません。
自身が発言することに責任がついてくることを自覚して、発言していくこと
が重要です。
まとめ
若手人材が対象の採用面接では、コミュニケーションスキルが評価項目として設定されているケースがほとんどです。コミュニケーションスキルを採用担当者にアピールしたい場合は、まず「ビジネスで求められるコミュニケーションスキル」をきちんと理解しておくことが重要です。「人と仲良くできる」「笑顔で対応できる」ことは、ビジネスにおけるコミュニケーションスキルではありません。
コミュニケーションスキルをアピールする場合は、自身の場合、コミュニケーションスキルは具体的には何を指していて、それがどう優れているか、を言語化する必要があります。
普段から仕事で経験する事象に対して、「いい」「悪い」といった「反応」をするだけに留まらず、事象を受け止め、考え、自分の言葉で意見を言語化するクセをつけておくことが、本当の意味でのコミュニケーション能力を伸ばすことに繋がっていくと言えるでしょう。
自身の強みを言語化していく第一歩目を相談の相談や、しっかり考える間もなく面接の予定がある場合等のご相談も可能です。
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