就活や転職で「自分を言語化してください」と言われて、こう思ったことはありませんか。
「そんなこと急に言われても……自分はそんなに考えて生きてきていないから」
この感覚、すごくよくわかります。面接に向けて志望動機を書こうとする。ガクチカを考えようとする。転職の軸を整理しようとする。
でも何も出てこない。「特に深く考えずに選んできた」「なんとなく続けてきただけ」という感覚があって、言語化しようにも材料がない気がする。
でも、企業人事として10年間・国家資格キャリアコンサルタントとして、私はこう思っています。
それは材料がないのではなく、材料のある場所を間違えて探しているだけです。
■ 「考えてきた量」が言語化の材料だという勘違い
「言語化できない」と感じる人のほとんどが、こう思っています。
言語化=これまでの思考や内省の蓄積を言葉にすること
だから「普段あまり考えて生きてこなかった自分には材料がない」という結論になる。
でも、これが根本的な勘違いです。
面接官が志望動機やガクチカで聞きたいのは「あなたがどれだけ深く考えてきたか」ではありません。「あなたがなぜその行動を選んできたのか」です。
この二つは、まったく別のことです。
■ 言語化の材料は「思考」ではなく「行動」の中にある
人が日常でとっている行動の多くは、意識より深いところから来ています。
・なぜそのバイトを選んだのか
・なぜその部活を3年続けたのか
・なぜそのとき自分から動いたのか
・なぜその会社に入ろうと思ったのか
・なぜその仕事を続けてきたのか
こうした「なぜ」の部分は、多くの場合、自分では意識していません。「なんとなく」「なんかそっちの方がよかった」「気づいたらそうなっていた」──それが正直な感覚だと思います。
でもその「なんとなく」の中に、その人が無意識に大切にしてきたものが詰まっています。
「普段考えて生きてきていない」は、言葉になっていないだけで、材料は行動の中にすでにある。言語化できている人と同じくらいの果実がそこに宿っていることが多いです。
言語化とは、思い出す作業でも、考えてきた記録を引き出す作業でもありません。自分でも気づいていなかった動機を、初めて言葉にする作業です。
■ 面接官が10年見てきてわかったこと
採用面接で非常に多くの方の話を聞いてきました。そこで気づいたことがあります。
話が刺さる人と、刺さらない人の違いは「経験の派手さ」でも「どれだけ深く考えてきたか」でもありません。
「なぜその行動を選んだのか」が言葉になっているかどうか、それだけです。
留学経験があっても「成長したかったから」で止まる人の話は記憶に残りません。
近所のスーパーでのバイトでも「なぜそこで働き続けたのか」「何かが変わった瞬間があったとすれば何だったのか」が言葉になっている人の話は、面接官の頭に残ります。
きらびやかな経歴は必要ない。深く考えてきた記録も必要ない。「なぜ」が一段でも深く言葉になっていれば、それが言語化です。
■ 「なんとなく」を言語化に変える問い
材料は行動の中にある、とわかっても「じゃあどうやって掘るのか」がわからないと動けません。
シンプルな問いを一つ渡します。
「なぜ、他の選択肢ではなくそれを選んだのか」
続けていたこと、自分から動いたこと、気づいたら時間をかけていたこと──何でも構いません。それに対してこの問いをまずは一度だけ入れてみてください。
「楽しかったから」で止まったら「なぜ楽しかったのか」。
「役に立てた気がしたから」なら「なぜ役に立てると感じたのか」「役にたてることを続けたのはなぜか」。もう一段だけ。
多くの場合、そこに「その人らしさ」が眠っています。普段考えて生きてきたかどうかは、まったく関係ありません。
■ まとめ
・「普段考えて生きてきていないから言語化できない」は勘違い
・言語化の材料は「思考の蓄積」ではなく「行動の中にある動機」
・面接官が見ているのは経験の派手さでも内省の深さでもなく、「なぜその行動を選んだのか」
・「なぜ、他の選択肢ではなくそれを選んだのか」を一段だけ掘ることが出発点
・一人で「なぜ?」を繰り返していると、思考がループして出口が見えなくなることがあります。問いの立て方が合っていないことも多いです。
個別相談では、あなたの行動の話を聞きながら「なぜ」を一緒に掘っていきます。「語れる経験がない気がする」「なんとなくしか言えない」という状態でいらしてください。そこからが出発点です。