新入社員の退職が増加
少し前になりますが、「ゴールデンウィーク明けに新入社員の退職が増加している」というニュースを目にしました。
昔から“5月病”という言葉があるように、この時期は特に心身のバランスを崩しやすい季節でもあります。
さらに最近では「退職代行サービス」を使って会社を辞めるケースも増えており、働き方や職場との関係性が大きく変化していることを感じます。
かつては「辞めるなら自分の口で伝える」ことが当たり前でした。しかし今は、何事も“代行”が可能な時代。合理的な反面、本人が直接伝えられない背景にこそ、職場環境の問題が隠れているのかもしれません。
そこで今回は、「退職が増える時期」や「辞める理由の傾向」について、統計や調査データをもとに掘り下げてみたいと思います。
企業にとっても、個人にとっても、退職は大きなターニングポイント。だからこそ、その「兆し」や「背景」を正しく理解することが大切です。
最後までお読み頂ければ幸いです。
退職が増えるのはいつ?
退職には実は「多い時期」があります。年間を通じて退職者が増える傾向があるのは、以下のようなタイミングです。
◆ 3月末と9月末:異動・区切りの時期
・3月末(年度末):新卒入社前、決算期、組織変更のタイミング。
・9月末(中間期):業務の一時整理、転職市場の活性化に合わせた時期。
◆ ボーナス支給後:現実的な選択
・6月・12月の賞与支給後に退職する人も多く、実際の退職時期は7月・1月に集中します。
企業側からすると「せっかくボーナスを支給したのに…」という思いもあるかもしれませんが、働く側としては一つの区切りであり、生活を考えた判断とも言えるでしょう。
年代別にみる退職理由の傾向
年齢によって、退職の理由や背景は大きく変わってきます。
年代主な退職理由傾向
【20代】
・キャリア形成、人間関係、ミスマッチ
・初職離職が多く、転職が前向きな選択に
【30代】
・スキルアップ、給与、家庭との両立
・転職市場で“売れる”年代。慎重かつ戦略的な退職が増える
【40代】
・管理職ストレス、会社の将来性
・組織の壁や中間管理職のプレッシャーが背景に
【50代〜】
・早期退職制度、健康、定年準備
・人生後半の選択。再雇用や起業に進むケースも
性別による傾向の違い
退職理由には、性別による違いも存在します。
◎ 男性の場合
・20〜30代:キャリアや待遇に対する不満が中心。
・40代以降:管理職ストレスや将来性に不安を感じた退職。
◎ 女性の場合
・30代前後:出産・育児による退職が多い。
(制度があっても、現場の理解が乏しく退職するケースも)
・40代以降:介護や家族都合による離職が増加。
企業にとっては、こうしたライフステージへの対応が重要なテーマとなっています。
参考データと社会的背景
以下のデータをもとに、退職の傾向を整理しました。
厚生労働省「雇用動向調査」
リクルートワークス研究所「就業実態パネル調査」
マイナビ/doda/エン・ジャパンなどの転職市場レポート
これらの調査から見えてくるのは、「退職」は個々の事情の積み重ねであると同時に、明確な“時期的傾向”や“社会背景”に影響を受けているという事実です。
退職は“個人の選択”と“組織の課題”の交差点
「会社を辞める」という決断は、個人の人生にとっても大きな転機です。
一方で、企業や社会の構造、制度、文化とも密接に関わっているのが現実です。
もし、あなたの周りで退職者が続いていたら――
その背景には「時期的な要因」や「年齢・性別による傾向」があるかもしれません。
こういった統計は以前からあります。それにも関わらず活かさない会社も存在しています。
私が以前関わった物流企業では、退職希望者に対して“辞められたら困る”とだけ訴える管理職がいました。面談でも一方的に引き止めるだけで、退職理由には耳を傾けようとしませんでした。
つまり、それは会社側の都合ばかりを優先し、退職を決断した個人の立場や背景に目を向けていないということです。
個人にしてみれば、「年代別にみる退職理由の傾向」に記載したように、その会社に魅力が無い結果、他社に惹かれたり、希望を持つようになっても当然なのです。
ましてやストレスなど健康を害する退職となったものは悲惨としか言いようがありません。
個人の考えを尊重するとか、甘やかすとかではなく、その会社に魅力や将来性、働く意義があるだけで違うのです。
組織という中で、人材を生かすも殺すも会社次第であり、管理職のマネジメント次第でもあります。
決して全て会社や管理職が悪いわけではありません。働く個人の中にも問題はあります。
「長く働ける会社=何もしなくても、何も言われない居心地の良い会社」という人もいます。※身近にいました。
組織という中には、いろいろな人材がいます。
辞めるのは個人の自由と言うのはありますが、「辞めない説得」ではなく、それ以前にその会社で「働く魅力・意義」などを考え作り上げると少し違いが出てくるのかもしれません。
◆ 組織におけるコミュニケーションの重要性
職場は“個人の選択”と“社会の動き”が交差する場所です。
しかし、「コミュニケーション=飲み会」としか考えられない人たちも、いまだに存在しています。
それは本質的な信頼関係や業務の効率性が築かれていない証拠です。
飲み会を悪と決めつける必要はありませんが、それを主な手段とするのは時代遅れです。
「会社でのコミュニケーション」とは、組織内の人々が情報を共有し、業務を進めるための意思疎通を意味します。
これは単なる「会話」ではなく、目的を持った情報のやり取りであり、会社の業績や職場環境に大きな影響を与えるものです。
これが職務中での「仕事中の何気ない会話」や「丁寧な報連相」、「意見が言いやすい空気づくり」などとなるのです。
指示・命令はコミュニケーションではありません。
コミュニケーションの取りづらい世の中ですが、それは業務中に仕事の一環としてあることが必要なのですが、それを人と関わることをリスクと考えて、本来、仕事として必要な接点まで絶っているのです。
そして、会社組織内での人と人の関係性が築かれなくなる。
関係性が無ければ、相談などありませんよね。
結果、退職という考えしか選択肢が無くなるのではないでしょうか?
最後に
会社で働くということは、入社もあれば退職もあります。
これは当たり前の事です。
しかし、人材不足の時代、人材の採用も困難なのです。ここに目を向けなければ流出は防げないのです。
「退職は個人の考えだから!」ではなく、「働く職場の魅力・意義」を考えられると良いと思うのですが…。
あなたの会社では“働く意味”を伝えられていますか?
退職を防ぐのは制度だけではなく、日々の関係性の積み重ねかもしれません。
最後まで、お読み頂きありがとうございました。
※この記事は、各種調査データをもとに執筆しています。